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『女性たちの平成不況』

樋口美雄・太田清・家計経済研究所(編) 20040423 日本経済新聞社,311p.


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■樋口美雄・太田清・家計経済研究所(編)[20040423]『女性たちの平成不況――デフレで働き方・暮らしはどう変わったか』日本経済新聞社,311p.¥1890 ISBN-10: 4532350913 ISBN-13: 978-4532350918 [amazon][kinokuniya]

■内容(「BOOK」データベースより)

パネル調査にみる「選択」の軌跡。2000人の女性の10年にわたる生活と経済を集積したパネル調査。そのデータから浮き彫りにされる結婚観・就業観・出 産と育児・家計のやりくりと消費・格差・幸福感と不安などを多角的に捉えた壮大な記録。

内容(「MARC」データベースより)
2000人の女性の10年にわたる生活と経済を集積したパネル調査。そのデータから浮き彫りにされる結婚観・就業観・出産と育児・家計のやりくりと消費・ 格差・幸福感と不安などを多角的に捉えた壮大な記録。

■著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

樋口美雄[ヒグチヨシオ]
1952年生まれ。慶応義塾大学商学部卒業、同大大学院博士課程修了(商学博士)。スタンフォード大学客員研究員などを経て現在、慶応義塾大学商学部教 授。主著に『日本経済と就業行動』(東洋経済新報社、1991年、日経経済図書文化賞)、『雇用と失業の経済学』(日本経済新聞社、2001年、エコノミ スト賞)ほか

太田清[オオタキヨシ]
1952年生まれ。京都大学経済学部卒業。経済企画庁、内閣府を経て、現在、政策研究大学院大学教授

■目次

序章 デフレが変えた女性の選択
 1 家計研パネル調査のねらい
 2 「選択」と「結果」の分析
 3 わかったことと政策的インプリケーション
第1章 パネル調査で概観したこの一〇年
 1 結婚と出産、子供
 2 女性の就業
 3 デフレ下の所得の推移
 4 求められる育児・仕事の両立支援
 補論 パネルデータを利用することの利点
第2章 均等法世代とバブル崩壊後世代の就業比較
 1 世代別にみる女性の就業行動
 2 一般労働者の男女間賃金格差の推移
 3 未婚女性の雇用形態別就業率の推移
 4 有配偶女性の就業率の推移と結婚・出産による就業継続可能性の変化
 5 フリーター経験者のその後の生活状況
 6 急増する非正社員の処遇改善を
第3章 優雅な「パラサイトシングル」像が変容
 1 結婚問題を親子関係から考える
 2 わが国の非婚化・晩婚化の現状
 3 同居・別居別にみた結婚選択者と未婚継続者
 4 結婚の選択にとって家族関係が重要
第4章 バブル崩壊前後の出産・子育ての世代間差異
 1 出生の経済学
 2 出産行動の変容
 3 子育ての費用
 4 出産することと子供の数への影響
 5 子育て環境の整備が急務
第5章 結婚、出産、離婚と所得変化
 1 結婚は「貧乏」を招いているか
 2 出産で所得や消費はどう変わるか
 3 離婚で所得や消費はどう変わるか
 4 再就職が困難で所得減に
第6章 デフレ下の経済生活、家計、借入
 1 有配偶女性のライフコースと家計・個計の変化
 2 未婚女性の就業状況・親との居住関係による個計の変化
 3 借入行動と家計・個計
 4 借入行動と生活満足
 5 有配偶・未婚ともに厳しいのは若い世代
第7章 所得格差と階層の固定化
 1 アメリカ元大統領も強い関心
 2 所得階層は固定化しているか
 3 日本は欧米に比べて所得階層が固定的か
 4 実質的に拡大している所得格差
第8章 デフレ不況下の「貧困の経験」
 1 貧困を計測する基準
 2 貧困ダイナミックスと女性の生活
 3 「標準的生活様式」からの脱落と、貧困と結びつきやすい要素
 4 一時貧困の慢性化防止対策を
第9章 デフレ時代におけるリスク対処法
 1 どういったリスク? どういった対処法? 誰に頼る?
 2 日本人のリスク対処法
 3 非効率な自己保険頼み
第10章 女性の幸福感はどう変化しているか
 1 ライフコースと生活満足
 2 生活変動、学歴と生活満足
 3 幸福感を侵食するデフレ不況
第11章 不安を糧に生きる女性たち
 1 現代女性の気分
 2 学歴の圧力は今も続いている
 3 生活変化とうつ気分
 4 社会変化による不安とうつ気分
 5 将来を悲観して子育てできない
参考文献
あとがき

■引用
「パネル調査の一〇年間、女性の就業環境は改善したのだろうか。より働きやすくなったのだろうか。この問題を取り上げた第2章でわかったことは、「正規雇 用」と「非正規雇用」との間で賃金などの処遇の格差が拡大した中で、次第に正規雇用が減り、非正規雇用が増えていることである。」(p.15)

「いま二五歳時点で、非正規社員として働いている未婚女性、あるいは無業の未婚女性をフリーターとみなし、そのダミー変数をゼロとし、正社員として働いて いる未婚女性を1として分析を行った。推定結果をみると、現在居住している地域が四国、北海道、近畿である人は、関東居住の人に比べ二.九%から五.〇% フリーターになる確率が高くなっている。また大都市居住者は、それ以外の地域居住者に比べ、フリーターになる確率が三.二%高く、統計的にも有意な差と なっている。
 他方、学歴についてはどうか。まず、本人の学歴についてみると、短大・高専卒の女性がフリーターになる確率は、中高卒の女性とそれほど大差ないが、四年 制大卒の割合は有意に低くなっている。さらに両親の学歴の影響をみると、父親、母親ともに統計的に有意な差とはなっていないが、父親については高学歴の方 が、娘がフリーターになる割合は低く、母親については逆に高学歴の母親の方が、娘がフリーターになる確率は高くなっている。他方、母親が就業経験を持って いるかどうかの影響はほとんどみられないという結果になっている。」(p.67-68)

「(5)一九九〇年代に入りフリーターが急増しているが、その後の就業状態や婚姻、さらには有配偶者について夫の年収を追跡調査してみると、正社員であっ た人に比べ、フリーター経験者の有配偶率は相対的に低く、結婚した人についても、夫の平均年収は低い傾向が見られる。とくにこうした傾向は九〇年代後半か ら強まっている。フリーター経験者は無配偶者が多いことや夫の年収が低いことの影響を受け、三〇代後半になると、二五歳のとき正社員であった人よりも就業 率が高くなる傾向がある。しかしその多くはパート労働者としての就業者である。」(p.82)


UP:20070722
1990年代 ◇「若 年者雇用問題」文献表
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