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権丈 善一 20040325 慶應義塾大学出版会,282p. ■権丈 善一 20040325 『年金改革と積極的社会保障政策――再分配政策の政治経済学 II 』,慶應義塾大学出版会,282p. 3200+税 ISBN-10: 4766410610 ISBN-13: 978-4766410617 [amazon] 内容(「MARC」データベースより) 2004年年金改革に向けた議論、社会経済政策としての社会保障論、社会保障の財源調達問題を考察した論文集。百家争鳴の年金改革論議の中、最新の研究成果を世に問う。 図表一覧 はじめに 勿凝学問1 思想と酩酊体質 I 年金改革論 第1章 年金改革論議の政治経済学――厚生労働省『年金改革の骨格に関する方向性と論点』を読んで 序論 1 年金制度と年金経済学の方法論 1.1 将来予測に関する人知の限界と公的年金論議のパラドックス 1.2 従来の年金改定方式『財政再計算』の仕組みとマクロ経済調整 1.3 財政再計算の意義と限界 2 年金理論編 2.1 生産物の視点からみた世代間の再分配方法 2.2 2期間世代重複モデル 2.3 財政方式と目標の達成可能性―― Max-Min 原理と保険料率調整のタイミング 2.4 積立方式と賦課方式では、いずれが保険料率が安くなるか?という愚問 2.5 給付立て賦課方式から拠出立て賦課方式への流れ 2.6 拠出立て賦課方式の機能 2.7 擬似市場としての<みなし運用利回り> 3 政策技術編 3.1 日本独自の方式――スライド調整率 3.2 年金改定率と所得代替率 4 政策評価編 4.1 年金制度と評価基準 4.2 政策実行世代の改革インセンティブと年金給付水準――改革の先送りと社会的弱者としての若者 4.3 給付水準の調整と世代 4.4 『方向性と論点』におけるスライド調整率の仮定 4.5 既裁定年金の改定率と年金課税 4.6 積立金問題 4.7 国民年金制度への多段階免除の導入と国庫負担のあり方 4.8 年金改革と民主主義 4.9 日本の年金給付水準について 結論と議論 補論1‐I 補論1‐II 勿凝学問2 メディアクラシーの日本的特徴と年金不信 第2章 年金改革と社会保障改革の考え方――『基本方針2003』を踏まえて 1 年金論議の終焉 2 経済の活力と国民負担率、そして学者の職分 3 政府の規模と国民生活――典型的日本人の思考の癖 4 研究者としての訓練の材料と研究者の政治的態度 勿凝学問3 同音異義語のバランスシート II 積極的社会保障政策論 第3章 積極的社会保障政策と日本の歴史の転換 序論 1 福祉生産の3つの機関 2 社会保障、政府の規模と経済パフォーマンス 3 典型的日本人の悩み――社会問題 4 典型的日本人の悩み――経済問題 5 長期需要不足と日本の形の転換 6 マクロ経済学の系譜と第1次、第2次ケインズ革命の意味 7 経済成長論の展開 8 ケインズ型成長理論――第2次ケインズ革命と社会保障 結論と議論――大切な問題は政府の財源調達力であり、税制である 勿凝学問4 制度学派とリベラリズム、そしてネオ・リベラリズム 第4章 先進諸国家の家族政策と学歴別出産タイミング――家計パネルデータによるイギリス、オランダ、ドイツ、スウェーデンの4カ国比較 序論 1 ヨーロッパにおける出生率低下と出産の延期 2 キャリア・プランニング動機と出産タイミング 3 イギリス、ドイツ、オランダ、スウェーデンにおける家族政策 4 イギリス、ドイツ、オランダ、スウェーデンにおける第1子出産タイミングの学歴間格差 結論 III 財源調達論と日本の納税者意識 第5章 社会保障の財源調達と消費税――民主主義を統治しうる市民が育っていない日本 1 問題意識の所在 2 人口問題に無策の90年代とその社会実験の結果 3 出生率の動向と公共政策 4 租税・社会保障負担と消費課税の規模 5 消費税の逆進性、比例性、さらには累進性 6 有効な少子化対策と財源の模索 7 消費税誕生までの歴史的推移と益税 8 民主主義的な意思決定――未組織納税者の無知と利益集団の政治力 9 未組織納税者から信頼される消費税に 勿凝学問5 マニフェストと小選挙区比例代表並立制の矛盾 第6章 国税と社会保険料の財源調達力――国税と社会保険料の財源調達力の比較を通じて 1 問題の所在 2 国税と社会保険料の推移 3 社会保険料の伸びを支えた要因 4 結論と議論 4.1 強力な財源調達力をもつ厚生年金と組合健保 4.2 国庫支出の削減をはかる立場からの政治戦略 4.3 国民の納税者意識と社会保障理解 補論6‐I 相続税の現状 勿凝学問6 Institutions matter ――制度は重要である 初出一覧 あとがき 索引 ◇出版社からのコメント 本書の刊行に至った背景には、第1に年金制度に関して専門家と世論の間にある認識のギャップや歪みを緩和したい、第2に年金制度改革から将来の日本の社会像へと議論を発展させたい、という私たちの問題意識がありました。 まず、年金制度に関する近年の研究は、海外の研究・実践成果の吸収もあり、理論面でも現実への適用面でも相当に進んでいます。また、その知見は研究者・実務家・政策担当者の間で一定程度共有されるものになっています。 こうした成果を受けて、今国会に提出された与党案も「実現可能な範囲」でよく研究されたものになっていますし、民主党案も今後の改革に向けて重要な論点を提出しています。両案の長所・短所やそれらが描く日本の将来像が議論されれば、国民の合意形成に大いに役立つと期待されます。 しかし、現実の国会審議を見ますと、残念ながら熱心な議論が行われているとは言えないようです。また、出版状況を見ますと、扇情的なタイトルの書籍や雑誌の特集が数多く並んでいます。その中には、年金制度の現状や歴史的経緯をよくご存知のはずの論者も含まれており、少々不可解にも思われますし、メディア側の責任を感じもします。 そうして、いつの間にか「専門家が知っていること」と「世論が感じていること」との間に大きな「歪み」が生まれ、現在の年金不信の一因になっているのです。 次に、年金制度改革をめぐる議論には、国民の価値判断や日本が向かうべき未来の社会像の問題が直接・間接に関わってきます。つまり、年金制度はそれ自体だけでなく、社会保障全般、さらには社会のあり様までを「想像」しながら議論すべき問題だと思います。 やさしい例として、「世代間の不公平」問題があります。たとえば、「負担と給付の比率が世代間で大きく異なる」ことの問題性がいまなお喧伝されていますが、この比率に世代間格差があるとき、私たちの「実際の生活」にどれだけの格差が生まれるのか、想像をめぐらせたことがあるでしょうか。 また、社会のあり様とは、社会の役割分担のことでもあります。社会に家計・企業・政府があるとき、出産を支援するのは誰の役割か、育児は誰の役目か、教育は、就業は、介護は、誰と誰がどの程度ずつ担うのか? このような「社会をマモル仕組み」全体を柔軟な頭で想像して、その中に年金制度を置いて考えた方が、より魅力的なアイデアが生まれるのではないでしょうか。特に、過去の制度や諸外国の制度と比較してみると、私たちが思いの外、狭い範囲で考えていることに気づきます。 最後に手前味噌を。本書の著者の主張に賛成するかどうかは、読者個々人の価値判断によって異なるでしょう。しかし、著者が提起している論点は、間違いなく、年金制度をめぐる考えを深めたり、その視野を広げたりしてくれるはずです。 また、弊社のホームページで、年金改革の動向をめぐる著者のコラムなども掲載していますので、あわせてご覧いただければ幸いです。 ◇カバーの折り返し 積極的賦課方式支持論という従来の年金経済論とは異なる考え方を示し、これまでの負担と給付の調整方法であった「財政再計算方式」と2004年年金改革に導入される「マクロ経済スライド」とを比較して前者から後者への改革がいかなる点において望ましいのかを理論的に明らかにした「I部 年金改革論」。 日本がかかえる社会問題(少子化)と経済問題(需要不足)を解決する方法として、家族政策をはじめとした社会保障政策の拡充を提唱しつつ、その社会経済的意味を比較福祉国家論と青木・吉川モデルという経済成長理論とを結びつけて説き、わが国に第2次ケインズ革命を起こすべしとした「II部 積極的社会保障政策論」。 その実現のカギとなる社会保障の財源調達問題を、日本の租税民主主義と政府の財源調達力という視点から論じた「III部 財源調達論と日本の納税者意識」。 筆者は、これら3部を年来の研究目的――日本人が、将来に対していだく生活不安を少しでも緩和することができ、一人一人が豊かさを感じつつ、それゆえにこの国を誇りをもって語ることができる、そうした社会はいかにあるべきかというヴィジョンの構築――のもとに統合し、日本が歴史的に再生産してきた家族依存型の福祉国家から社会保障政策を積極的に利用する政府依存型の福祉国家へ移行することを求める。そして筆者は、この移行――日本の資源配分と所得分配の大規模な変化――を、「日本の歴史の転換」と呼ぶ。 *作成:北村健太郎 UP:20080126 ◇権丈善一 ◇BOOK |