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『日本再生に「痛み」はいらない』

岩田 規久男・八田 達夫 20031204 東洋経済新報社,247p.


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■岩田 規久男・八田 達夫 20031204 『日本再生に「痛み」はいらない』,東洋経済新報社,247p. ISBN-10: 4492394184 ISBN-13: 978-4492394182 1785 [amazon][kinokuniya] ※ e05. t07.

■広告・紹介

出版社/著者からの内容紹介
景気対策と構造改革の組合せは国民に痛みを強いるものではない。日本再生には何が必要か。経済学者として名高い両者が、景気対策、税制改革等の具体策を提言。

日経BP企画
日本再生に「痛み」はいらない
 不況脱却を巡る経済学者の主張は、デフレ阻止を最優先課題にすべしとする「リフレ派」と、小泉内閣が提唱する路線を支持する「構造改革派」に分類されている。本書は、これまでも著書『デフレの経済学』などを発表し、「リフレ派」の先陣を切ってきた岩田規久男・学習院大学教授が、税制・社会保険事情に詳しい八田達夫・東京大学教授とともに経済政策提言を行うもの。
 経済全体に回復の兆しが見える中、「大企業・製造業以外の回復が遅れているのは、デフレで売上高が減少し続けているからだ」と断言する。政策提言は即効性の見込める景気対策と、それを実現したうえで実施すべき中長期的な構造改革案からなる。まずはインフレ目標を設定して無期限の長期国債買いオペを実施することでデフレから脱却し、穏やかなインフレ経済に移行すべしと主張する。また、景気が本格的に回復するまでは緊縮財政に転換せず、将来役立つ公共投資は前倒しにせよと訴える。金融、財政各政策や規制改革などを1つのパッケージとして捉え、総合的な施策によってインフレ基調回復に当たることが大切だと語る。
 そのうえで、中長期的に必要となる構造改革案を挙げる。累進的所得課税導入による財政再建、高齢化対策などについて有効性を検証する。
(日経ビジネス 2003/12/22 Copyrightc2001 日経BP企画..All rights reserved.)

■著者紹介

岩田規久男[イワタキクオ]
学習院大学経済学部教授。1942年大阪府生まれ。66年東京大学経済学部卒業。73年同大学院経済学研究科博士課程修了。上智大学経済学部教授等を経て、98年より現職

八田達夫[ハッタタツオ]
東京大学空間情報科学研究センター教授。1943年東京生まれ。66年国際基督教大学卒業。71年ジョンズ・ホプキンス大学大学院博士課程修了、Ph.D.取得。ジョンズ・ホプキンス大学教授、大阪大学社会経済研究所教授・所長等を経て、99年より現職。主な著書に、『直接税改革』(日本経済新聞社、1994年)、『消費税はやはりいらない』(東洋経済新報社、1994年)、『東京問題の経済学』(共編、東京大学出版会、日本不動産学会著作賞受賞)、『社会保険改革』(共編、日本経済新聞社、1998年)、『年金改革論』(共著、日本経済新聞社、1999年、日経・経済図書文化賞受賞)等

■目次

第1章 日本再生のための政策提言
第2章 「デフレの罠」からの脱出―金融政策のレジーム転換
第3章 デフレ脱却のための政策パッケージ
第4章 検証・「失われた一〇年」の経済政策
第5章 都市の再生と日本の再生
第6章 成長に資する税制改革とは
第7章 「痛みをともなう改革」の成否やいかに

■引用

第6章 成長に資する税制改革とは
 1高齢化時代の税構造を考える
  女性労働力の活用による財政再建を
  税金以外のハードルも
  高齢者の資産所得への課税
  家を売りやすくなる
  相続ぜいりまは引き上げるべきだ
  介護サービス市場のゆがみ
 「八田 相続税率を引き上げると、生前消費が過剰に促進されて、非効率的な資源配分になるという主張があります。私は、相続税率が引き上げられると、多くの人は、生きているうちにおカネを使おうとしますが、そのかなりの部分は自分自身の介護のために使うことになると思います。」([201])
  消費税シフトは高齢化対策にはならない
  法人税はなくすべきだ
 「八田 […]株式の譲渡益や配当所得には税金をかけ続けて、むしろ、法人税をなくす方向に持っていくべきだと思います。元来は、最終的に所得を得た人が税金を払うべきですね。株主が個人として得る所得は、株式の配当と譲渡益です。これらに所得税がかけられれば、法人税をかける理由がなくなります。
 昔は、コンピュータによる情報管理ができませんでしたから、譲渡益の徴税は難しかったのです。[…]いまでは、徴税技術が発達し、譲渡益に直接きちんと課税ができるようになったのですから、法人税は不要です。」([205])
  法人の譲渡益税
 2誤解だらけの消費税シフト
  消費税シフトと低所得者の負担
 「八田 有権者が、「高齢者の負担を現状より軽くするために、低所得者の負担を増やすべきだ」と考えるなら、そうすべきだと思います。
 ただし、消費税シフトの是非を選挙で問うときには、そのように争点を明確にすべきだと思います。高齢化対策としてその是非を選挙で問うのは、間違いです。すなわち「このシフトは、高齢化対策としてはまったく役に立たない。しかし、低所得者の負担を増やして高所得者の負担を減らすことができる。賛成か反対か」という形で問うべきでしょう。そのうえで、有権者が賛成だというのならば、これは所得分配に関する価値観の問題ですから当然そうすべきでしょう。
 経済学の観点から、所得分配に関する価値観の是非について何かいえることはまったくありません。<0208<経済学の観点から明確にいえることは、「消費税シフトは、高齢化時代の勤労世代の平均的な人の生涯税負担を軽減しない」ということだけです。
 また、高額所得者の限界所得税率を引き下げることによって、彼らの働く意欲が増すという議論もありますが、統計的に意味のあるほど意欲が増すということを示す実証的研究は、どこにもありません。むしろ、大企業の重役たちの大半は、少しでも長く会社にいたいと思っているようです。それは、限界税率が八九%のときもまったく同じでした。」([208-209])


UP:20081115 REV:20090425
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