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『〈非行少年〉の消滅――個性神話と少年犯罪』

土井 隆義 20031212 信山社出版,349p.

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last update:20150928

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■土井 隆義 20031212 『〈非行少年〉の消滅――個性神話と少年犯罪』,信山社出版,349. ISBN-10:4797222743 ISBN-13:978-4797222746 3500+ [amazon][kinokuniya] ※ c01.

■内容

本書は、近年の日本に見受けられる少年犯罪の特徴を、後期近代社会に特有の社会的性格の表われとして論じたものである。現在の少年たちが置かれている社会的状況の分析に研究の焦点を絞り、その状況を創出しているメカニズムの解明をとおして、この時代に特有の少年犯罪の性質を探るものである。

■目次

T 少年犯罪をめぐる虚と実
 第1章「少年犯罪の凶悪化」言説の妥当性
  1 統計数字とイメージの乖離
    社会問題としての少年犯罪;「主要刑法犯」と「凶悪犯」;増加傾向に転じた強盗事件
  2 統計の妥当性をめぐる問題
    主要刑法犯と凶悪犯の増減単位;統計数字における信頼性の問題;統計数字における妥当性の問題;一般イメージと乖離する強盗事件
  3 凶悪犯罪の実質的な稚拙化
    解釈過程で構築される犯罪事件;少年事件の刑事処分率の低下;虞犯少年の補導人員の減少;一人前の人格の体現者たる少年
 第2章 非行キャリアの崩壊と暴発型犯罪
  1 「わけのわからない」少年犯罪
    少年犯罪の凶悪化イメージの由来;「わけのわからない」ことへの恐怖;目立つ「いきなり型」の少年犯罪
  2 非行グループの構成原理の変質
    集団化傾向をめぐる妥当性の問題;脱集団化の傾向を示す少年犯罪;文化学習の場としての非行グループ;脱集団化傾向と暴発化傾向のリンク
  3 規格化・衝動化する少年犯罪
    暴発型犯罪における質的な変容;バラノ的犯罪からスキゾ的犯罪;非行少年のパーソナリティの稚拙化;純粋無垢の帰結としての少年犯罪
 第3章 衝動化する少年たちの社会的性格
  1 言葉を持たない少年たち
    衝動的自己による殺意なき殺人;言葉を発しない加害小宴たち;言葉の貧困がもたらす衝動化
  2 断片化していく自己意識
    ザッピングされる自己の断片;濃密手帳と微細文学の含意;時間間隔を失った少年たち
  3 感覚の共有による親密性
    構造を欠いた「感覚の共同体」;孤独に耐えられない少年たち;内面志向性から他者志向性へ
 第4章「熟い犯罪」から「冷たい犯罪」へ
  1 コミュニケーション回路の断線
    内への配慮、外への無関心;「被害者」不在のオヤジ狩り;濃密な人間関係の不成立;生活空間から排除される他者
  2 島宇宙化していく日常世界
    儀礼的無関心から本源的無関心へ;犯罪の抑止力としての他者の不在;パノプティコンの作動しない世界;フェード・アウトする他者と社会
  3 「冷たい社会」における少年犯罪
    成立しなくなったルサンチマン;社会的動機を持たない少年犯罪;反社会的非行と非社会型非行;まなざしの内閉化した少年犯罪;
    パッションを欠いた「冷たい犯罪」

U 「自分らしさ」を煽る社会
 第5章「個性的な自分」という強迫衝動
  1 「本当の自分」への強い重力
    現代日本の思春期に固有の問題;社会的性格としての個性志向性;先験的属性として感受される個性;社会的個性志向と内閉的個性志向
  2 物象化・与件化される「心」
    病理形態としての内閉的個性化;生理的な身体感覚との同質性;「心理学化する社会」の果て;心の物象化による自己像の混乱;
    感情労働をしたくない人びと
  3 エゴイスムに彩られたアノミー
    社会的拘束の結果としての欲望;アノミー化しはじめた個性志向;社会から遠ざかっていく自己;社会に対するリアリティの変容
 第6章 集団主義の残滓としての個性主義
  1 近代化の文化装置としての集団主義
    日本的集団主義による近代化の推進;弱い個人主義としての日本的集団主義;たがいに同じ方角を向いた人生目標;
    社会の進歩と個人の進歩の重なり
  2 近代化の終焉と再帰的自己の顕在化
    モノが神秘的な魅力をはなった時代;生活条件の均質化した飽和社会の到来;差異化して内面へ向きはじめた欲望;
    歴史的感覚の喪失とまなざしの内閉化;露呈しはじめた近代的主体の再帰性
  3 自己肯定の欲求の強さと根拠の弱さ
    「根拠なき自信」としての自己肯定感;他者に支えられない自己肯定間の脆さ;自己肯定感を欠いたリストカット少女;
    まなざしの潜行を促進する自己物語
  4 没個性的に個性を追求する人々
    若者の消費行動における一極集中化;他者との対話能力の高度化への期待;他者と対話する技法の欠落した社会;
    自己内コミュニケーションの不成立
 第7章 「個性」という教育アスピレーション
  1 個性化教育としての「心の教育」
    平等主義から個性主義への政策転換;個性化教育を推進する「心の教育」;道徳教育の対象となった「個性」;空疎な「個性」による一元的序列化
  2 役割関係から親疎関係へのシフト
    教育目標とその達成基準の不鮮明化;教師と生徒という役割演技の崩壊;善意に満ちた学校教師の視線の細密化;
    教師と生徒のコミュニケーション不在
  3 内閉的個性化を助長する学校教育
    全人的評価と感受される「心の教育」;関係性の病理から内面性の病理へ;構造的な学校問題の「心の問題」化;
    新しい教育目標と古い教育制度の齟齬;無限に肥大していく自己妄想の破綻
 第8章 「個性」への耐えざる焦燥の果て
  1 「普通であること」の生きづらさ
    物語性を過剰に感じさせる少年犯罪;セルフ・ノンフィクションの大流行;羨望のまなざしを注がれる「個性」;
    「個性」の徴表と化したスティグマ;「個性」商品の消費者から産出者へ
  2 カリスマへと反転するスティグマ
    「特別な存在であること」への承継;少年の殺人事件における動機の変質;個性のアノミーの発露としての犯罪;
    地方公害の少年に鬱積していく焦燥
  3 言語操作の過剰と身体感覚の希少
    暴走していく逆立ちした妄想的観念;身体性の感触を欠いた言葉の過剰性;言葉の重みの喪失と身体性の高まり;
    身体を希求する旅としての少年犯罪
  4 群発する「いきなり型」犯罪の逆説
    少年たちのカリスマとなった少年A;動機の語彙の連鎖としての群発犯罪;「個性」を追い求めた共犯関係の崩壊;
    キャラかぶりを起こした少年Aたち

V 〈非行少年〉の消滅と少年法
 第9章 少年司法における適正手続と厳罰化
  1 少年司法の保護主義と責任主義
    「少年犯罪の凶悪化」少年法改正;少年司法の場に注入される責任主義;被害者カテゴリーとしての非行少年
  2 バレンス・パトリエとしての非行少年
    犯罪者に対する保護主義の成立基盤;人格体現者としての加害者と被害者;人格の尊厳をめぐる二律背反の回避;
    社会的な統制装置としての矯正思想
  3 人格を体現しはじめた犯罪少年
    異質性の包摂と矯正措置の二律背反;保護原則の適用されない人格体現者;人権尊重を根拠とした司法制度批判;
    少年の人権保障と厳罰主義の同根性;凶悪化言説を生み出すメンタリティ
 第10章 犯罪被害者の焦点化と少年法改正
  1 少年法改正論議における対立の構図
    少年法制定とその改正論の始まり;少年法改正論争の変わらぬ対立軸;犯罪被害者の救済という新たな視点
  2 少年法改正論議と被害者救済問題
    少年審判から排除される犯罪被害者;犯罪被害者問題のアジェンダ設定;ケースワーク機能を備えた少年審判;
    被害者性を剥奪されてきた被害者
  3 領土拡大をめざすパターナリズム
    非行少年の処遇を行う主体の消失;加害者と被害者の相互反照性の変転;刑事司法に潜在するパターナリズム;
    犯罪被害者という新しいターゲット;表象レベルから現存レベルへの退却
 第11章 非行少年というリアリティの崩壊
  1 「自分らしさ」の時代の少年像
    人格を携えて生まれてくる子ども;高度飽和社会における人格体現者;子どもと対等感覚を持つ大人たち;非行少年像から遊離した少年たち;
    成立しなくなった非行のレッテル
  2 社会環境論から個人資源論へ
    生活型非行と反抗型・遊び型非行;犯罪原因観に表われた時代の刻印;妥当性を喪失した社会的剥奪理論;過去へ逆流する原因論のまなざし
  3 〈非行少年〉から〈異常少年〉へ
    物象化される少年犯罪者の内面性;社会の抑圧性の低下と精神医学化;言語的資源としての精神医学言説;内面的な異常性が強調される少年;
    社会的規則性をともなった無秩序
 第12章 少年犯罪のリスク化と修復的司法
  1 犯罪の前兆行動というレトリック
    犯罪の事後解釈装置としての前兆行動;「早期発見・早期治療」図式との相違;理解可能な反抗動機を見出せない状況
  2 リスクと認識されはじめた少年犯罪
    リスクに対する人びとの意識の高揚;内閉的個性志向による自己責任主義;責任と不安を増大させるリスク認識;
    リスクの認識と修復的司法の同根性
  3 高度飽和社会における修復的司法
    存在論敵リスクから認識論的リスクへ;リスク評価をする側からされる側へ;リスク化を免れた修復的司法の構築を
おわりに

■引用

■書評・紹介

■言及



*作成:奥坊 由起子
UP:20150928 REV:
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