『「分裂病」の消滅――精神病理学を超えて』
内海 健 20031009 青土社,318p.
last update: 20100904
■内海 健 20031009 『「分裂病」の消滅――精神病理学を超えて』,青土社,318p. ISBN-10: 4791760670 ISBN-13: 978-4791760671 \2940 [amazon]/[kinokuniya] ※ m
■内容
・同書の帯より
〈病〉と〈近代〉が終わるとき
「精神分裂病」という名前が消えた.病そのものも大きく変質し,精神病理学は解体的再構築を迫られるだろう.豊富な臨床経験と最先端理論に基づき,分裂病による主体と時間の変容を綿密に追跡.「緊張病性エレメント」「戦略的エポケー」という新概念で,従来の分裂病論を大きく前進させ,この病を生んだ〈近代〉の意味を問い直す.
■目次
はじめに 7
序章 分裂病の時空の病理 25
ヤスパースを超えて 26
安永浩の「パターン逆転」 28
木村敏の「個性化原理の危機」31
生と死の韻律 33
分裂病と空間 38
分裂病の構造主義的時間論――中井久夫 42
アンテ・フェストゥムの展開――緊張病性エレメント素描 48
戦略的エポケーとメタ病理学 51
I 分裂病と時間
主体と時間 緊張病性エレメント 59
はじめに 60
現象学と時間の問題 62
差延するものとしてのコギト 65
時間の二契機 尖端性と円環性 74
臨床問題に対する予備的考察 83
「緊張病性エレメント」について 88
おわりに 98
未来の創発 101
はじめに 102
未来時の創発 105
走り出した主体 112
治療論への転回 126
外傷と記憶 133
はじめに――記憶の脱構築にむけて 134
臨床事例 139
主体/記憶の脱構築 148
治療論へむけて 155
II 分裂病と主体
デカルト 戦略的エポケー 167
はじめに 168
生涯と創造の軌跡 169
戦略的エポケーと創造 180
おわりに――デカルトの埋葬 187
ウィトゲンシュタイン 零度の狂気 193
はじめに 194
『論考』まで――前半生の素描 195
『論考』――示される病理 199
『探究』――快癒への意思 206
展望 215
カフカ 主体の死 223
はじめに 224
分裂病と主体の死 226
カフカ『掟の門前』をめぐって 236
再び戦略的エポケーについて 263
III 精神病理学の脱構築へ
精神病理学/精神分析と構造主義/ポスト構造主義 274
はじめに――二つの系譜 275
思想史からみた位置づけ 277
構造主義の要諦 280
構造主義と精神分析 282
ポスト構造主義への展望 285
精神病理学における「言説」の可能性 291
序論 292
他者了解の両義性 293
精神病理学の言説における主体と他者 297
臨床精神病理学への展望 301
精神病理学の彼岸にむけて 305
畸型としての脳 306
進化の中の裂開 308
脳の「外」へ 309
言語の創発 311
展望 312
あとがき 315
■引用
・「言語の創発」
最終的に,言語によって脳は外への回路を結びつつ,その裂開を閉じることが可能となる.同時に言語は脳に還元されるものではない.それゆえ自己固有化の回路は完全には閉じられず,他者へと開かれたものとなる.多少楽観的に言うなら,ここで自己の圏域の分離と他者への交通という二つの課題が同時に可能となる(312).
■書評・紹介
◇千葉 一幹,200401,「書評 内海健『「分裂病」の消滅』――精神医学への期待」『文學界』58(1): 361-4.
◇森島 章仁,2004,「書評 内海健著『「分裂病」の消滅――精神病理学を超えて』」『日本病跡学会誌』67: 83-5.
◇高岡 健,20070710,「ブックガイド 統合失調症に関する本10選」『精神医療』批評社,47: 75-7.
■言及
*作成:藤原 信行