|
>HOME >BOOK
金井辰樹 20031020 光文社新書,230p. 700 ・金井辰樹 20031020 『マニフェスト――新しい政治の潮流』,光文社新書,230p. 700 ・この本の紹介の作成:下森保幸(立命館大学政策科学部3回生) 目次 第1章 マニフェストの誕生 (1)発祥の地イギリス (2)最高傑作「英労働党97年マニフェスト」を読む (3)「一国主義」も公約に ― アメリカの場合 (4)欧州マニフェストめぐり 第2章 公約なき国ニッポン (1)自民党強さの秘密 (2)失われた10年 (3)ウイッシュ・リストの作り方 ― 自民党 (4)ウイッシュ・リストの作り方 ― 民主党 第3章 はじまりは地方から (1)マニフェストの伝道師 (2)日本初のマニフェスト誕生 (3)ローカル・マニフェストの原点 第4章 中央で高まるマニフェスト熱 (1)先駆者たち (2)5人の若侍 (3)重い腰を上げた自民党執行部 (4)「発禁本」という壁 第5章 政党別マニフェスト比較 ― 初のマニフェスト選挙を迎えて (1)"本家"の意地をかけて ― 民主党の戦い (2)根深いアレルギーの中で ― 自民党の挑戦 (3)「第3党」としての立場から 第6章 理想のマニフェスト ― 15のポイント 第1章 マニフェストの誕生 この章では、マニフェスト誕生の地であるイギリスにおけるマニフェストや各党のマニフェストの作られ方、ヨーロッパ各国やアメリカのマニフェストの作られ方や内容などについて、紹介している。イギリスにおいてマニフェストが誕生したのは諸説あるが、イギリスのマニフェストの第1号は1834年に誕生し170年の歴史があるという話には驚かされ、日本と違いマニフェストの歴史があると思われた。そして保守党と労働党によって、マニフェストの作られ方がトップダウン型かボトムアップ型かという違いがあることもわかった。 そしてアメリカのブッシュ大統領が掲げたマニフェストには、イラク攻撃を匂わせるような外交戦略の根幹が示されており、イラク戦争も公約どおりといったブッシュ大統領の公約に対する誠実さ?も見て取れるのは、ある意味でおもしろかった。 第2章 公約なき国ニッポン この章では、これまでの日本の政治においてどれだけ公約がいい加減なものであったか、そして自民党と民主党のウィリッシュ・リスト(おねだり集)の作られ方をについて見ていっている。例えば小泉首相が、靖国参拝などの公約が守られなかったことに対して「大したことない」という発言をしたことに、この国の政治家の公約に対するスタンスが表れていると著者は論じている。 そして小選挙区制を中心とした新しい選挙制度という「仏」はつくったが、その中に政党本位、政策本位の政治という「魂」は入っていない。その「魂」を入れるための答えの1つがマニフェストであるという結論には、選挙制度が変わっても今だ政権交代は実現していない現状を見れば、その答えには納得できるだろう。 第3章 はじまりは地方から この章では、地方からのマニフェスト(ローカル・マニフェスト)導入の動きを見ていき、マニフェストの伝道師とも呼ばれる前三重県知事の北川正恭氏の各県知事へのマニフェスト導入の動きを紹介している。 この章の中で、日本で初めてマニフェストを発表したのは岩手県の増田寛也知事であることが紹介され驚いた。私はてっきり、マニフェストは中央の政党が導入したのが初めてだと思っていたからである。そして、ローカル・マニフェストには財源の多くを国に頼らざるを得ない部分がまだ残っているため、ローカル・マニフェスト作成には限界もあるという指摘から、一層の地方への財源移譲が必要ではないかと考えさせられた。 第4章 中央で高まるマニフェスト熱 この章では、地方からはじまったマニフェスト導入の動きに対して中央の政党や政治家はどのように動いていたのかを紹介している。このなかで、印象的であったのは、「脱政党」で当選したように思われた前三重県知事の北川正恭氏と中心とした21世紀臨調が、マニフェスト導入のスタンスに「脱無党派」を掲げたことであった。これは政党の求心力を高めようということである。「脱無党派」で当選したように思われた北川氏がこれを掲げることはおもしろいと考えられる。 そして、マニフェストは公職選挙法で配布が禁止されていたことを紹介していた。このことはわが国の、公選法が「政治家は規制しないと悪いことをするに決まっている」という性悪説に立っているからである。マニフェスト配布は、公選法の改正によって認められるようになったが、「インターネット選挙」や戸別訪問はまだ禁止されているため、「政策論争のできる選挙」に向けた努力がさらに必要となるだろう。 第5章 政党別マニフェスト比較図に この章では、今回の総選挙で各党の掲げたマニフェスト(政権公約)について検証している。例えば民主党は、今回のマニフェストには「高速道路の無料化」を打ち出したが、過去のマニフェストにおいては「道路公団の民営化」を掲げていた。このように党の政策が変わったこと(理由など)を有権者に説明する責任が今後は必要とされるだろうと著者は論じている。 そして、2003年の自民党総裁選で、小泉首相をはじめとする4候補が、「構造改革路線」か「景気回復路線」かに分かれて、政策論争を行ったことは大変意義があったと論じ、民主党の掲げたマニフェストが従来とは違った総裁選にしたのであろうと論じている。 第6章 理想のマニフェスト ― 15のポイント この章では、各党が掲げるマニフェスト(政権公約)が、マニフェストと呼ぶにふさわしいかを見極めるために、マニフェストの見分け方を紹介している。例えば、「候補者全員が順守しているか」や「「数値」には、工程表が示されているか」などである。これらに紹介されている見分け方をしっかりとあてはめていけば、例えば「都合の悪い分野から逃げていないか」という見分け方においては、民主党は郵政民営化については、あまり深くに踏み込んでおらず、そして自民党は族議員などの関係で郵政民営化や道路公団民営化の方針があいまいな形になっており、真のマニフェストと呼ばれるためには更なる政策のブラッシュアップが必要ではないかと考えられる。 そして、最後にマニフェスト選挙の浸透は、日本のマスメディアが社論を明確にするという副産物を生む可能性も出てくると言及している。このようにマニフェストは、政治家や政党だけではなく、マスメディアや国民の意識も変える可能性を秘めていると考えられるだろう。 (紹介と感想の)はじめに 2003年は、日本の選挙において歴史的な意味を持つ年となるであろう。なぜならば衆議院選挙において、財源や数値、期限の入ったマニフェスト(政権公約)を各党が打ち出して選挙戦を戦ったからである。代表的なマニフェストを挙げれば、民主党が高速道路の無料化を打ち出し、自民党は小泉首相の長年の持論である郵政民営化を掲げた。そしてイラク戦争への自衛隊派遣の是非については、自民党は日米同盟に基づいての派遣を表明したのに対して民主党は、国連決議のないままでの自衛隊派遣については反対の姿勢を明確にしたのである。 私は、各党が従来のあいまいな公約ではなく期限や数値、財源の入ったマニフェスト(政権公約)を国民にはっきりと示すことによって、小選挙区制度が目指した「政策による投票」、「政党や政策本位の選挙」の実現に近づき、国民の関心も高くなるものだと考えた。しかし、2003年11月の総選挙の投票率は、過去2番目の低さとなってしまった。しかし、マニフェストの導入は政策や政党本位の投票への第1歩にはなるであろう。 そこで私はこのマニフェストに関心を持って、歴史や今回の総選挙で導入したいきさつなどを知りたいと思い、この本を読んでみることにした。著者は、現役の新聞記者だけあって、取材は緻密であり文章はわかりやすく読みやすかった。 さいごに 私はゼミでは日本の政党について研究している。そのためマニフェストには強い興味があり、この本を読んでみたのである。読み終えた感想は、「おもしろかった」の一言に尽きる。この本は、日本におけるマニフェスト導入の動きやマニフェストの歴史を大変わかりやすく書かれていると思われる。政治に関心のある人はもちろんのこと、あまり政治に関心を持っていない人もこれさえ読めば、マニフェストはどういったものであるかわかると思う。だから私はこの本をみなさんに読んでもらいたく推薦する。この本が、読んだ人にとって政治への関心の第1歩になることを切に願っている。 UP:20040216 ◇2003年度受講者作成ファイル ◇2003年度受講者宛eMAILs ◇BOOK TOP(http://www.arsvi.com/b2000/0310kt.htm) HOME(http://www.arsvi.com)◇ |