『ヨーロッパ思想史における〈政治〉の位相』
半澤 孝麿 20031028 岩波書店,382+xip.
■半澤 孝麿 『ヨーロッパ思想史における〈政治〉の位相』,岩波書店,382+xip. ISBN-10: 4000023977 ISBN-13: 978-4000023979 \7200 [amazon]/[kinokuniya] ※ p
■内容
出版社/著者からの内容紹介
非ヨーロッパ世界において〈政治〉を理論的に考えることは容易ではない.理論の言葉はすべてヨーロッパ産であるからだ.この困難を脱するためには,まず何がヨーロッパ固有の政治思想なのか把握する必要がある.自由・非政治的なもの・保守主義の考察を軸に,ヨーロッパ政治思想史の再把握と限界画定をめざす,画期的労作.
内容(「MARC」データベースより)
すべてヨーロッパ産の政治思想の語彙によって、我々は自らの政治を考察できるのだろうか? 自由、政治的-非政治的なもの、保守主義の考察を軸に政治思想の中のヨーロッパ固有性を括り出し、その限界を明らかにする。
■目次
凡例 (v)
序章 主題と方法 (1)
第一章 「自由」の倫理的力(moral force)に関する歴史的一考察 (39)
一 出自と理由 (41)
(i) 仮説の提示――「自由」の観念の核心 (41)
(ii) アウグスティヌス『自由意志』重要性 (52)
二 伝統とその変容 (61)
(i) 十七世紀――受容・そして変容の始まり (61)
(ii) 十八世紀から十九世紀へ――主観性の勝利 (80)
三 世俗化の帰結 (90)
(i) ヒューム政治理論の革命性 (90)
(ii) ロールズ『正義論』とノージック『アナーキー・国家・ユートピア』 (95)
(iii) バーリンの自由論――自由意志論・自然法への回帰? (102)
第二章 ヨーロッパ政治思想における「非政治的なもの」 (121)
一 仮説の提示――政治と非政治の緊張・その持続性 (123)
二 キリスト教の本質的非政治性 (134)
三 ヘレニズムにおける〈政治〉の相対化の論理とその伝統――観想的生活論―― (143)
四 非政治的人間の連帯――友情論の歴史的展開 (149)
(i) 胚種としてのアリストテレス『ニコマコス倫理学』 (149)
(ii) キケロおよびそれ以降 (158)
(iii) モンテーニュ友情論のパラダイム性 (164)
(iv) 十八世紀以降の友情論 (173)
第三章 十六世紀政治思想における世界認識――昂進するペシミズム―― (191)
一 問題の提起――なぜ十六世紀か (193)
二 一五二〇年頃までの思想状況(その一)――仮説の提示・「形相」と「質料」の乖離―― (205)
三 一五二〇年頃までの思想状況(その二)――仮説の検証―― (214)
(i) 作為による自然の実現――モア『ユートピア』、ラブレー「テレームの僧院」 (214)
(ii) 〈旅〉の困難――ルター『キリスト者の自由』、マキアヴェッリ『リヴィウス論』 (218)
(iii) エラスムス――その多面性 (222)
(イ) 『エンキリディオン』 (223)
(ロ) 『痴愚神礼賛』 (225)
(ハ) 『キリスト者君主教育論』 (231)
四 宗教戦争――ペシミズムの支配 (237)
(i) 状況の変化――カルヴァンとそれ以後 (237)
(ii) リプシウス『政治学六巻』 (243)
(iii) フッカー『国王首長制教会国家の諸法について』 (249)
五 結びに代えて (268)
第四章 ヨーロッパ保守主義政治思想の三類型 (273)
一 問題の提示 (275)
二 類型の設定 (288)
(i) 懐疑主義的保守主義 (288)
(ii) 目的論的保守主義 (312)
(iii) 生成論的保守主義 (324)
注 (341)
あとがき (379)
■引用
「すべての保守主義政治思想は、……何よりもまず現に存在する事実の意味を重視し、それを人間行動の与件とすべきだとする。それは最も広い意味で必然論の系譜に属する思想である。言うまでもなく、必然論はヨーロッパ思想史とともに古い。しかし、そこには同時に、それを正面から否定し抑制する、目的論と自由意志説の強い伝統があった。ところが初期近代以降、目的論の漸進的後退とともに「自由」の観念が徐々に変質し始め、そこに生まれた空隙を埋めるかのように、それ以前とは装いを変えた必然論のさまざまなヴァージョンが展開し始める。その代表例が保守主義なのではないだろうか(……)。」(2003:276)
■書評・紹介
■言及
*作成:野口 陽平