HOME > BOOK >

『原則統合をもとめて――「北海道・障害児普通学級入級訴訟」を再考する』

古川 清治 20031018 千書房,291p.

Tweet
last update:20180719

このHP経由で購入すると寄付されます


古川 清治 20031018 『原則統合をもとめて――「北海道・障害児普通学級入級訴訟」を再考する』,千書房,291p. ISBN-10:4787300407 ISBN-13: 978-4787300409 4500+ 欠品 [amazon][kinokuniya] ※ w/fs03, e19

■内容

「障害児を普通学校へ・全国連絡会」HPより

http://zenkokuren.com/book/book/book01.html

一九九三年一〇月二六日の旭川地裁判決は、車いすを使用する山崎恵さんと親が「普通学級で共に学ぶこと」を選ぶ学級選択権を否定した。判決理由は「通常の義務教育学校は明治以来、極端な個人差を持つ者は就学して来ないのが前提だ」というものだった。札幌高裁判決は翌年五月二四日、その日は奇しくも子どもの権利条約が日本で発効した二日後のことであった。国際的な教育の流れは、インクルーシブ教育などへ動き出していたが、札幌高裁はそうした情勢を無視するかたちで、山崎さんの控訴を棄却した。これは、四日前の五月二〇日に旧文部省が「子どもの権利条約の批准にあたって国内法の改正は必要ない」とした通知と見事に符合するものであった。

「北海道・障害児普通学級入級訴訟」は義務教育において「普通学級で共に学ぶこと」を選ぶ学級選択権をもとめておこされた裁判の唯一の判例であり、第4部には判決文の全文が掲載されている。

本書では、日本における普通教育はそもそも分離を原則としており、そこには紛れもなく排除の論理が貫かれていることを指摘している。その一方で、共生共育を求めてきた側の間でも、根本的な問題解決へ向かっていくような議論が展開されてこなかったと自戒する。各学校で障害児が個別的・例外的に普通学級に入らざるを得なかった状況を、多様な視点から理論的に総括し、その上で、文部科学省が推し進めようとしている「特別支援教育」こそがインクルーシブ教育を骨抜きにするものであることを明示していく。自身障害者の親であり、この裁判闘争に深く関わった筆者が日本での原則統合実現に向けた条件をさぐっていく話題作だ。


■目次

まえがき
第I部「北海道・障害児普通学級入級訴訟」を考える前に
 1 どこに議論のレベルを定めるか―「原則統合」論議をふり返りながら―
  「原則統合」研究集会でよく見えたこと
  思想が生命力をもちつづけるには
  わたしの考える「議論のレベル」は
  普通教育をどうとらるかが問われている
 2 文科省はなぜ「原則分離」にここまで固執するのか
  文科省が「原則分離」に固執するのは
  「障害児は普通学級での勉強を妨げる」
  特殊教育に下支えされた普通教育とは―文部省はどんな子どもを望んできたのか―
  大づかみにまとめてみれば
第II部「北海道・障害児普通学級入級訴訟」をふり返る
 1 はじめに――なぜいま「普通学級入級訴訟批判」か
  一九九四年五月の五日間
  「恥ずかしさ、なさけなさ」の背後にあるもの
  本人と親が裁判に訴えるということ
  「鎖国の精神」にもとづく判決を否定するために
 2 「原告勝訴」の条件をユートピアの論理で考える―旭川学テ最高裁判決を主な標的にしながら―
  この訴訟に勝てる条件はあったか?
  司法の世界にデモクラシーの嵐を
  国家教育権論からの解放を
  「鎖国の精神」から脱けだす
 3 旭川地裁判決と「裁判官の職業倫理」―判決を支える生活意識と秩序感覚をめぐって―
  法律相互の関係と「裁判官の良心」
  旭川地裁判決の歴史感覚と現実感覚
  法のオブラートに包まれた生活意識
 4 国家による公教育の管理と支配・その仕組み
  公教育・教育権・学習権
  「普通教育」と「特殊教育」は同じか、違うか
  「個人の尊重」と「心身ともに健康」のあいだ
  この裁判が突きだした本当の課題は
 5 「嫌なことはいやだと言いつづけたい」―原告と保護者の陳述書が訴えたこと―
  法の論理と暮らしの論理
  「のために」が「とともに」を押しつぶす
  「教育」が不本意きわまる生活を強制する
  「嫌なことはいやだと言いつづけたい」
 付 ひとつの学校教育法批判―「就学義務」をめぐって―
第III部判決批判から原則統合へ
 1 ふたつの判決を支える制度を突きくずすには
  ふたつの判決と「権利条約」とわたしたち
  わたしたちにとって裁判とは、法律とは
  「意見の不一致」の現実とどう向き合うか
 2 障害児分離を必要とする「普通教育」とは
  特殊教育に下支えされた「普通教育」とは・再考
  「健常児教育」――その仕組み
  「分離・普通教育」のなかの「例外統合」を見据える
 3 原則統合への法制度癲癇に必要な前提
  「他者」のことばをどう読むか
  「統合教育は学校の民主化を前提する」
  「原則統合は学籍の統合からはじまる」
  共生・統合・インクルージョン
  インクルージョンとは? これをどう訳すか
 4 より自由な対話と討論を求めて
  わたしが"もっと対話を!"と思う理由
  教育とはなにか
  いま、制度としての教育をみる目は
  おわりに――これからどうなる?これからどうする?
 付 「教育基本法――無視から改悪へ」がわたしたちにもたらすものは
第IV部「北海道・障害児普通学級入級訴訟」資料
  原告と原告代理人の陳述書から―無視され圧殺された「人間の声」―
  旭川地裁判決
  札幌高裁判決
  山ア恵さんの裁判・交渉から判決までの経過
 付 「児童の権利に関する条約」について(通知)
あとがき

■引用

■書評・紹介

■言及



*作成:塩野 麻子
UP:20180719 REV:
古川 清治 障害者と教育  ◇身体×世界:関連書籍  ◇BOOK
TOP HOME (http://www.arsvi.com)