『アメリカの福祉国家システム――市場主導型レジームの理念と構造』
渋谷 博史・渡瀬 義男・樋口 均 編 20030807 東京大学出版会,267p.
■渋谷 博史・渡瀬 義男・樋口 均 編 20030807 『アメリカの福祉国家システム――市場主導型レジームの理念と構造』,東京大学出版会,267p. ISBN-10: 4130402064 ISBN-13: 9784130402064 \4800 [amazon]/[kinokuniya] ※
■内容
出版社/著者からの内容紹介
グローバル化の進展のもと、世界における新たなモデルとして注目されるアメリカの 福祉国家システムを多角的に検証し、市場メカニズム主導型のレジームの背景にある 意味、そしてその構造と特徴を明らかにする。
内容(「MARC」データベースより)
福祉国家論を20世紀における市場経済・民主主義の経済社会システムと社会主義・ファシズム等の体制間競争という現代史の大きな視野から考え直す中で、福祉国家がないとされるアメリカの独自のシステムを論証する試み。
著者略歴(「BOOK著者紹介情報」より)
- 渋谷 博史
- 東京大学社会科学研究所
- 渡瀬 義男
- 国立国会図書館立法考査局
- 樋口 均
- 信州大学経済学部
■目次
第I部 アメリカ型福祉国家の理念と構造
第1章 アメリカ型福祉国家の分析視角
1 出発点:これまでの到達点
2 アメリカ型福祉国家の理念:自由と自己責任と「小さな政府」
2.1 ハイエクの自由の概念
2.2 フリードマンの福祉国家解体論
2.3 ブキャナン=ワグナーの財政赤字論
3 ボワイエのフランス型福祉国家
4 アメリカ型福祉国家の実証作業への適用
第2章 福祉国家の多様性と分析のフレームワーク
1 福祉国家のインパクトを評価するのに,純粋競争モデルが不適切である理由
2 福祉国家に関連する外部性を取り込む必要性
3 「黄金期」の経済成長に対する福祉国家の役割
4 現代福祉国家の危機:現実とレトリック
4.1 国際貿易とグローバリゼーション
4.2 生産パラダイムのシフト
4.3 親労働的政治連合から親ビジネス的政治連合へのシフト
4.4 福祉国家危機論は現行制度の改革のためのレトリックである
5 新しい反平等主義パラダイム
6 福祉国家の多様性の構造的諸原因
7 「商品化」が福祉国家の唯一の未来とはかぎらない
第II部 アメリカ型福祉国家の再編
第3章 アメリカの財政再建と福祉国家の関係
1 1990年代の財政再建
1.1 財政再建を検討する問題意識
1.2 財政再建の計数的概観
2 財政的仕組み:一般財源と「べヴァレッジ」的調整の分離
2.1 財政再建についての先行研究
2.2 信託基金の分析
2.3 アメリカ型福祉国家の視点からみた財政再建と国際管理の意味
3 1990年代の税収増加と資産所得
3.1 所得階層別の実効税率の歴史的推移:税制の累進性の維持
3.2 実効税率の推移の規定要因
3.3 所得階層別の課税額に占める比重
4 アメリカ型福祉国家と連邦財政:市場論理と「小さな政府」
第4章 基軸国アメリカが示す福祉国家モデル
1 アメリカ型福祉国家の特質の強まり
2 医療保険:選択の自由と管理医療
2.1 問題点:医療の大量消費の中における構造的格差
2.2 クリントン政権の医療改革案と挫折の過程
2.3 アメリカ的な自由社会と市場経済からみた医療問題
3 年金制度:アメリカ的論理の深化
3.1 老齢者所得の構造:大きな格差と基礎的制度の役割
3.2 社会保障年金改革の挫折とその意味
3.3 雇用主提供年金
4 アメリカ・モデルの完成型
第5章 アメリカの企業年金:確定拠出型年金と金融ビジネス
1 はじめに
2 先行研究の検討と問題意識の整理
3 年金受給権の発展における確定拠出年金の位置
3.1 ERISAにおける年金受給権
3.2 ERISAと金融業の発達
3.3 DC型の年金受給権の特質
4 401(k)運営の仕組みと金融ビジネス
4.1 401(k)運営の構成要素
4.2 金融機関の営業基盤としてのレコードキーピング業務
5 「DCシフト」論の再検討
6 むすび
第6章 アメリカ社会福祉政策におけるプライヴァタイゼーション――ウィスコンシン州福祉改革における委託契約を中心に
1 はじめに
2 社会福祉における委託契約とその位置づけ
2.1 社会福祉のプライヴァタイゼーションと委託契約
2.2 委託契約の発展と市場化
2.3 委託契約における市場モデル
3 1996年福祉改革法とウィスコンシン州の福祉改革プログラム
3.1 1996年福祉改革法における委託契約
3.2 ウィスコンシン州の福祉改革プログラム
4 ウィスコンシン州における委託契約の実施状況
4.1 第1期委託契約(1997年9月?1999年12月)
4.2 第2期委託契約(2000年1月?2001年12月)
4.3 第3期委託契約(2002年1月?2003年12月)
5 おわりに
第7章 アメリカ福祉改革への疑問:評価の視点と方法の問題点
1 はじめに
2 福祉改革の政策目標:福祉依存説への転換
2.1 福祉改革に期待されるもの
2.2 福祉依存の定義
2.3 所得権アプローチと就労支援アプローチ
3 福祉改革の背景と諸要因
3.1 1980年代からの流れ
3.2 1990年代の好条件
3.3 仮定法的なAFDCとの比較
3.4 福祉改革の枠組み:分権化と包括補助金
4 評価システムと情報・データ
4.1 データの有効性に関する限界
4.2 集計データ分析の問題点:受給者数,貧困者数,失業率など
4.3 実験的調査の再吟味
5 州政府後援調査の批判的検討
5.1 福祉離脱者の調査
5.2 ウィスコンシン州の事例
5.3 プログラム組織の3つの次元と評価の問題点
6 結論
6.1 分析の要点:福祉改革の成果と課題評価
6.2 政策上のインプリケーション:正確な評価に基づく就労支援の拡充
あとがき
索引
執筆者紹介
■引用
■書評・紹介
■言及
*作成:樋口 也寸志