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『自宅でない在宅――高齢者の生活空間論』

外山 義 20030715 医学書院,146p.


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■外山 義 20030715 『自宅でない在宅――高齢者の生活空間論』,医学書院,146p. ISBN-10: 4260332910 ISBN-13: 978-4260332910 \1890 [amazon][kinokuniya]

■内容(「MARC」データベースより)
高齢者の生活をゆるやかに包み込む生活空間とは何かを考えつづけ、その具体的なヴィジョンであるユニットケア、グループホームの普及に邁進した著者の最後の言葉。スウェーデン留学帰国後10年以上にわたる研究の成果を網羅。

■著者略歴
◆外山 義
1950年岡山市に生まれる。1974年東北大学工学部建築学科卒業。1982〜89年3月まで、スウェーデン王立工科大学建築機能分析研究所 研究員として高齢者ケアと住環境をめぐる研究に取り組む。博士論文「Identiti and Milieu」89年帰国後、厚生省国立医療・病院管理 研究所地域医療施設設計画研究室長、96年東北大学工学部助教授を経て、98年より京都大学大学院教授(居住空間工学講座)。 2002年11月9日未明、京都市の自宅にて死去。享年52歳。


■目次

プロローグ
I 地域と施設の生活の「落差」
 1 3つの苦難
 2 さまざまな落差
II 落差を埋めるための「思考」
 1 個人的領域の形成
 2 実証的「個室批判」批判
 3 中間領域の重要性
III 落差を埋めるための「実践」
 1 ユニットケア
 2 グループホーム
 3 協働生活型高齢者居住
エピローグ

インタビュー
参考文献
写真提供者一覧

追悼 あとがきに代えて(三浦 研)


■引用
「長年、地域で暮らしてきた高齢者は施設に入ったとたんに、これまで自己判断のもとにおこなっていたさまざまな行為に ついて、一方的に「規則」の遵守を求められる。入居に際して持ち込むことのできない所持物、生活時間や行動範囲に関する 規則、外出や外泊の届出、金銭管理の方法等々に至るまで、施設での生活にともなう規則は多岐にわたる。これらの諸規則に よって、地域で大切に守ってきた、あるいは楽しみに続けてきた数々の生活習慣(生活の中身)を断念しなければならなくなる。 こうして施設における日常生活の中身は個別性を失い、貧しくなっていく。」(p.30)

「地域での住みなれた環境から引き剥がされ、「ムキ身」の状態で新たな施設環境のなかに置かれ、地域での生活との落差 に苦しむ高齢者の状況に対して、施設環境を計画し形づくる側からどのような対応が可能であろうか。
 まずその手立てのひとつは、個人がいきなり大きな施設全体(この場合、物的のみならず人的・社会文化的環境をも含めた 施設全体を指す)と向き合わされる構図を崩し、まず「個が守られる空間」、次に「数名の個で共有できる空間」、そして 「小規模なグループのまとまりの単位」、さらに「施設全体」、といったように生活領域を段階的に組み立てなおすことで ある。」(p.40)

「四人部屋内での入居者同士の会話は全体の行動観察をおこなった時間のうち4%しか存在せず、「多床室=活発な入居者間 の交流」とはけっしていえない結果となった(この点に関しては、筆者の研究室でおこなった、6人部屋特養での日中12時間 連続の1分間タイムスタディにおいても実証された。7時〜19時の日中のあいだ、入居者間の会話がまったく存在しない部屋が 全室の3分の1も存在し、2回以下しかなかった部屋を含めると、なんと全体の3分の2を占めていたのである)。」(p.54)

「互いのプライベートな領域が重なり合いながら、ほかに逃げ場もなく、絶えず他者の目にさらされて過ごす生活のなかでの 相互関係は、大きな生理的ストレス源となっていく。」(p.54)

「同室者へのサービスと自分へのサービスの違いに不満をもつ入居者(入居者には"えこひいき"と映ることも多い)への配慮も 不要となり、納得のいく介護をスタッフ側が提供しやすいという側面も無視できない。また、多床室における同室者間のトラブル 回避のために割かれている直接・間接の介護や配慮も無視できない。
 一方、個室化によって自室が保障されることにより入居者の自己管理意識が高まり、自分の居室を掃除したり、居室内の洗面 で下着や衣類を洗濯するなど、スタッフに任せていた業務の一部を日常生活の一環として入居者本人がおこなうようになることも 確認されている。」(p.58)

「「孤立化」「スタッフの労働負荷の増大」に続いてしばしば主張される個室化に対する反論として、「目が届かない」、「容体 が急変したときに発見が遅れる」という指摘がある。しかし前出の『個室化に関する研究』でのヒアリング調査の結果では、入居者 の容体の急変は同室者によってはあまり発見されておらず、巡回してきたスタッフが発見するケースがほとんどであることが 報告されている。」(p.58)

「この図からわかるように、入居者はほとんどの時間、同室者に対し背を向けた姿勢をとって過ごしている(日中12時間のうち窓 側で約80%、廊下側で約70%、中央のベッドで約90%)。同室者同士は交流するどころか、むしろ互いにかかわりを避けて生活 している様子が浮かび上がってきたのである。
 夜間の同室者のポータブルトイレ使用やいびきによる睡眠中断、物取られトラブルなどによるストレスに対して、同室者同士は 互いに目に見えない壁をつくり、感覚を閉じ合うことによって生活が続けられているのだ。言い方をかえれば、同室者の容体が急変 してもわからないくらい互いに無感覚・無関心になることによって、高齢入居者はかろうじて多床室内に自己のテリトリーを守って いるのである。」(p.59)(六人部屋主体の特養において)

「その一方で、個室であるというハード条件だけで変化が期待できるのは、家族との関係である。  多人数居室にいる家族を訪問する場合、同室者を考えて好物の手みやげをどうするかなど、毎度毎度いらぬ配慮で気骨が 折れる。また仮に、<061<孫が入学試験で合格してその喜びの報告をしに行ったときに、いきなり喜びを表現するということに躊躇が あるだろう。同室に身体のぐあいが悪く横になっている方がおられるかもしれないし、まったく状況の違う方が目と鼻の先に おられるからである。すなわち、「喜びや悲しみの感情を直接的に表現することが困難な空間」として多人数居室があるの である。」(pp.60-61)


作成者:山本 晋輔
UP: 20090705 REV:
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