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『チョコレート・アンダーグラウンド』

Shearer, Alex 20030704 Bootleg, Macmillan Children's Books, London
=20040607 金原 瑞人 訳,求龍堂,507p.

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last update:20151125

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■Shearer, Alex 20030704 Bootleg, Macmillan Children's Books, London  =20040607 金原 瑞人 訳 『チョコレート・アンダーグラウンド』,求龍堂,507p.  ISBN-10: 4763004204 ISBN-13: 978-4763004208 1200+税  [amazon][kinokuniya]

■内容

舞台は現代のある国。選挙で勝利をおさめた“健全健康党”は、なんと“チョコレート禁止法”を発令した! 国じゅうから甘いものが処分されていく……。 そんなおかしな法律に戦いを挑むことにしたハントリーとスマッジャーは、チョコレートを密造し、“地下チョコバー”を始めることにした! チョコレートがこの世からなくなったら、あなたはどうしますか? 禁チョコなんて、ダイエットのときしかしたことない! 読めばきっと、チョコレートが食べたくなる。みんなに自由と正義とチョコレートを! 読み出したら止まらない痛快小説。

■著者略歴

アレックス・シアラー。イギリスの作家。1949年生まれ。30以上の仕事を経験したが、29歳のときに書いたテレビのシナリオが売れて作家活動に専念。 14年間ほどテレビ、映画、舞台、ラジオ劇の脚本などを書いた後、小説を書こうと決心する。最初の著作は“The Dream Maker”。イギリスのサマセット州に家族と在住。 16歳の息子と13歳の娘がいる。

■訳者略歴

法政大学教授。翻訳家。大学のゼミで創作のためのワークショップを担当。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

■目次

とんでもないことが始まった
1 健全健康党
2 チョコレート探知車
3 バビおばさん
4 破棄
5 ちょっとした昼食

おれたちは戦う!
6 闇市場
7 チョコ代用品
8 砂糖の袋、ケーキみたいにかんたんに
9 ブレイズさん
10 チョコレート作り
11 大成功
12 発見
13 悪党
14 地下チョコバー
15 開店の時間

心配しなさすぎたのだ
16 見張り
17 手入れ
18 チョコレートよ、永遠に
19 盗聴
20 いとこのアーノルド

もしも切り抜けることができたら……
21 全国窓ふき会社
22 尋問
23 フランキー・クローリー
24 再教育、そして釈放

ふたたび、未来のために!
25 すぐにもどります
26 ただの哀れなおばあさん(おそらく)
27 計画
28 制服
29 作戦決行
30 放送
31 チョコレート、そして自由
32 謝辞とあとがき

■引用


1 健全健康党
 車が通り過ぎた。ハントリーは、その車の後ろの窓に貼ってあるステッカーに気づいた。こう書いてある。
「おれのせいじゃない。おれはやつらに投票しなかった」
 ふたりには、その言葉の意味がわかっていた。車の持ち主は、「自由愛好党」に投票したのだ。だが、それは少数派だった。多くの者が「健全健康党」に投票した。 それはただ、健全健康党は少しばかり世界の秩序を正し、世界を住みやすくするだけだと思ったからだった。
 そのほかの人、たとえばスマッジャーの父さんは、わざわざ投票に行くつもりにもなれなかった。
「どっちの党も同じようなもんだ。どうしようもない」父さんは言った。
 だが、おそらく、同じではなかったのだ。

 選挙が終わり、健全健康党が勝利をおさめてから、そのことで両親が言い争うのをス>015>マッジャーは聞いていた。
「あなたみたいな人のせいなのよ」母さんが言った。
「ほかの人に投票しなかったから、連中が勝ったの。『悪が栄えるためには、善人がなにもしないでいてくれればそれだけでいい』★1 って言うじゃない。 あなたは、まさになにもしなかったのよ」
 父さんはほとんど返事もせず、苦虫をつぶしたような顔をしてぶつぶつ言い、パン型の音をたてながら、せっせとパンを作った。
 健全健康党から知らせが届くと、父さんのしかめっ面はよけいにひどくなった。近いうちに砂糖が使えなくなるという通告だった。 それに、可能なかぎり全粒小麦粉を使わなければならなくなる。精白小麦粉★2 には食物繊維が足りないからだ。父さんにとって、この知らせはあまりうれしくなかった。
「砂糖が廃止されたら」父さんは不平をもらした。
「菓子職人の技は死に絶えちまう。精白粉も砂糖もじゃ、どうやってウェディ>016>ングケーキを焼けばいい? 基本的な材料なしで?  これから先、幸せなカップルのためになにを作れっていうんだ? ロールパンを焼けってか? マッシュポテトの生地にひき肉つめて、てっぺんに牛のフンをのせろって?」
 父さんはやかましくパン型の音をたてた。そして、 自分がもらったカップや賞状や証明書を悲しそうな目でながめた――それは、いちばん好きなこと、もっとも得意とすることをさせてもらえない悲しみだった。(pp.014-016)


★1 「悪が栄えるためには、善人がなにもしないでいてくれればそれだけでいい」18世紀イギリスの政治家、エドマンド・バーク(1729-1797)の言葉。
★2 精白小麦粉。皮をとり除いた、白い小麦粉。
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31 チョコレート、そして自由
「すべての人に、チョコレートを!」叫び声は通りにこだました。
「すべての人に、自由と正義とチョコレートを!」
 チョコレートが吹雪のように舞い、教会の鐘が鳴り響いた。その瞬間、すべての人々が心から幸せを実感した。
 これこそがチョコレートが人々にもたらす効果だった。
 チョコレートは人生をとても幸せなものにしてくれるのだった。(p.501)
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32 謝辞とあとがき
 本書を革命におけるすべての勇敢な男女に捧げる。
 次にかかげる言葉は、ミセス・D・バビとJ・ブレイズ氏の墓石に刻まれているものである。ふたりの運命は、存命中と同様、死後もかたく結ばれている。>505>

  チョコレートを手に取って
  わたしのことを考えてくれ。
  そして思い出してくれ
  甘い記憶を。
  すべての人に
  自由と正義とチョコレートを。

 これ以上語るべき言葉はない。
 もしあるとすれば、その言葉を真に語り得るのは、チョコレートのみ。(pp.504-505)
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■関連書籍

◆樋口 陽一 20001122 『個人と国家――今なぜ立憲主義か』,集英社(集英社新書0067A),230p.  ISBN-10: 4087200671 ISBN-13: 978-4087200676 680+税  [amazon][kinokuniya]

◆雑賀 恵子 20101010 『快楽の効用――嗜好品をめぐるあれこれ』,筑摩書房,254p. ISBN-10: 4480065741  ISBN-13: 978-4480065742 780+税 [amazon][kinokuniya]

藤原 辰史 20120530 『ナチスのキッチン――「食べること」の環境史』,水声社,450p.  ISBN-10: 4891769009 ISBN-13:978-4891769000 4000+tax  [amazon][kinokuniya] ※

■書評・紹介

■言及



*作成:北村 健太郎
UP:20151125 REV:
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