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『異邦人のまなざし――在パリ社会心理学者の遊学記』

小坂井 敏晶 20030515 現代書館,204p.

last update: 20110223

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■小坂井 敏晶 20030515 『異邦人のまなざし――在パリ社会心理学者の遊学記』,現代書館,204p. ISBN-10: 4768468543 ISBN-13: 978-4768468548 \1890 [amazon][kinokuniya] ※ s

■内容

・同書の帯より
こんな破天荒な人間でもパリ大学の先生になれるのか!
異質性との出会いから生まれる驚き,感動,そして迷い.西洋・第三世界・日本の狭間に生きる男が綴る自己形成史.

■目次

はじめに 5

偶然の海外生活 9
 きっかけ 9
 初めての海外 12
 アルジェリア 25
 フランス 42
 偶然の不思議 54

異邦人の見たフランスの大学 67
 就職事情 67
 フランスの大学制度 74
 学位の内情 76
 私の教育観 84
 大学人の実態 93
 フランスの社会心理学 99
 自分の頭で考える大切さ 109

迷い 117
 人生を踏み間違えたのか 117
 二流の人間 120
 学校嫌い 128
 三重の異邦人 136
 発想の転換 139
 フランスに生きる意義 146
 名誉白人 154

異文化と創造性 165
 何が創造を妨げるのか 165
 矛盾の大切さ 171
 異質性という金脈 172
 学際的アプローチの役割 178
 創造の最大の敵,常識 182
 無意識の働き 185
 私の発想――日本の西洋化を例にとって 188
 自己変革の必要性 193
 少数派の力 197

あとがき 201

■引用

・常識的な「自然科学」観の誤謬と,人文社会諸科学の目指すべき途
物理学・化学・生物学などで提唱される理論は高い説得力を持つ〔中略〕なぜだろうか.自然科学では実験が厳密に行われるので理論の正しさが検証されるが,人文・社会科学の場合はそもそも実験の実施が難しい〔中略〕物理学や化学のように白黒のはっきりした結果は得にくい.だから理論に説得力がないのだ.普通はこう答えるだろう.
しかしこの考えは間違っている.自然科学の強みは一般に信じられているように厳密な検証可能性にあるのではない.事実は逆で,実証など問題にしないで理論だけが先走ることを許す知的環境のおかげで自然科学は発展してきた.万有引力の法則は我々の日常生活において観察されるような性質のものではない.もちろん絶えず我々は重力にさらされているが,ニュートン理論の正否が通常の生活状況の中で検証されるわけではない〔中略〕.
人文・社会諸科学は,自然科学にはないハンディを背負っている.後者では研究対象が高度に抽象化されるため,我々の素朴な感覚との整合性が深刻な問題となりにくい.ところが前者は具体的で日常感覚に密着した事象を研究するために,理論を生み出す時点ですでに研究者の世界観=常識に邪魔され,自由な発想を取りにくい.だから誤解を恐れずに言うならば,人文・社会科学をより厳密な学として発展させるためには,思弁的態度を戒め,実証を強化する方向を目指すのではなく,逆に事実をいったん棚上げにして,もっと大胆に理屈をこねる必要があるのだ(182-3).

■書評・紹介


■言及



UP: 20110223 REV:
社会学  ◇身体×世界:関連書籍  ◇BOOK
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