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『ガンのある日常――体験者18人のいのちの力』

影山 和子 20030520 NTT出版株式会社,237p.


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■影山 和子 20030520 『ガンのある日常――体験者18人のいのちの力』,NTT出版株式会社,237p. ISBN-10: 4757150377 ISBN-13: 978-4757150379 \1680 [amazon][kinokuniya] ※ c09

■内容
(「MARC」データベースより)
愛する人を看取り、自らの一部を失いながら、人はどのように「ガンのある日常」を受け入れていったのか。様々なかたちでガンと直面した18人の証言。『月刊がん・もっといい日』連載をまとめる。

(出版社 神谷 竜介, 2003/05/25)
生でも死でもなく、ガンと共にいる「日常」のあり方
 職場に高校時代の後輩から電話が入ったのは昨年二月のことだった。彼は泣きじゃくっていた。「ガンになりました。どうしたらいいか判らなくて」。高校時代とくに親しかった後輩が四人いる。そのうちの一人を私は既に失っていた。今また年若い友人を失うのかと思うと暗澹たる気持ちにふさがれた。
 しかし一方でなんとか彼に力を与えられないかとも思った。私はガンの家系だ。母をはじめ一族郎党ほぼ全員がガンに倒れている。そのバリエーションはガンの博物館がひらけるほどで、私にも無意識のうちに「自分もいずれは」という覚悟があった。身のまわりにガン患者が一人もいたことがない彼に「言葉」を与えるのは自分の使命であると感じた。
 多くの病のなかでも、ガンは人に特別なイメージを喚起する。そして生きていくにも、死んでいくにもたいへんな力を必要とする。初めて生と死のあわいに立たされた人間に、人としてあるための力を与える本。彼自身が、その力を養うための支えとなる本はないか、私はプロの本読みとしてのプライドにかけて渉猟した。
 しかし結論から言うと、それは見つからなかった。少ないが良書はある。柳田邦男さんは言うに及ばず、数年前、大ベストセラーとなった柳原和子さんの『がん患者学』(晶文社)などその白眉と呼ぶべきであろう。ただ自らのガン体験を驚くべき執着と分析で描ききった同書は読み通すのに極めて強い精神力が必要だ。今ショックのただ中にいる人、そしてその人と関わりを持つ家族に、この本を薦めることを私はためらった。
 結局、私は「ガン患者とその近親者の為だけ」に本を作る決意をした。つねに友人と、私もかつて散々お世話になった彼のご両親の姿が頭にあった。ここまで読者のイメージを絞り込んだ本を作るのは初めてだった。どのような形を取るのがよいか私のなかにも具体的な像はなかった。
 そんなとき出会ったのが本書のベースとなった連載だった。ガン患者、関係者にインタビューしていくだけのシンプルな構成だ。しかし毎号のタイトルに惹かれた。「パパはヤブ医者だね、ママを治せなかったんだから」「いつか子供を生みたくて、パッチワークの子宮」「尊厳死・安楽死に手を下すのはなぜ医師なのか」「お母ちゃんと同じガンになって、すべてを記録してやる」「いのちとしか言えないようなものが、這い上がっていく」。
 章タイトルを羅列するとテーマの重さばかりが気にかかるかもしれない。しかし、それだけに引きずられない軽妙な筆遣いに魅力を感じた。自らがんに冒され、あるいは最愛の人をガンで失った皆さんが語る言葉は重く、悲しみを背負っていたが、不思議なことに沈鬱ではなかった。事態に冷静に接近し、生きること、死ぬことをひとつの物差しで測らない文章を読み、これならば動揺し、過度にナーバスな状況にある心を傷つけない、と考えた。
 インタビューノンフィクションの成否はひとえに著者の人柄による。テーマやテクニックだけでは作品にならない。文章には甘さも浅さもあった。そのうちのいくつかに手を入れ、そのうちのいくつかには敢えて手を入れなかった。私は著者の影山和子さんにお目にかかり、その筆を信じることにした。
 その後、電話ではあったが『がん患者学』の著者、柳原和子さんとお話しする機会を得たことも嬉しい偶然だった。彼女は、生きることに過度の意味を見出そうとする風潮に異を唱えたい、というニュアンスのお話をされた。私には、その意図するところがよくわかる気がした。
 患部にもよるが、今日ガンの生存率は劇的に上がってきている。たいした病気ではなくなった。ガンは治るんだ。だから前向きに生きよう…。スローガンとしては良いかも知れない。だが、そのことが死病としてのガンにとりつかれた人々の闇をより深く濃いものにする。ガンにかかり死んでいくことは後ろ向きなのか。死んだら何もかも終わりなのか。
 私たちの日常は
 いつだって生と死の
 あわいにある
 私は本書の帯に上のコピーを書いた。「日常」ということにこだわりたかった。それは著者と担当編集者の、そして本書に登場してくださった皆さんにも共通する想いではないかと推察する。
「生きることと死ぬことは等価だと思う」。柳原さんの言葉だ。そのことに想いを馳せることのできない本では意味がない。私は今もガンとつきあいながら(単に闘病と言うことではない)、以前よりすこし身体に気を配った「日常」を送っている友人Mのために本書を作った。だがその背後に多くの読者の皆さんがいることを強く感じている。
 ガン患者、身近にガン患者のいる皆さんにどうか手に取っていただきたい。そうした皆さんの拠り所になることが出来れば…。その一心からこの本は生まれた。

■目次
まえがき

第一章 新しい扉を開く
パパはヤブ医者だね、ママを治せなかったんだから ●外科医 熊沢健一さん
もんでも洗っても美しくフィットしている人工おっぱい ●舞踏家 新野まりあさん
書けなくなった脚本家を甦らせた沖縄 ●脚本家/エッセイスト/赤坂潭亭亭主 高木 凛さん
たったひとつの瞳が写す ●写真家 富田 豊さん
動けなかった指が、霊感でピアノを弾く ●ピアニスト 遠藤郁子さん

第二章 希望は日常の中に
二つのがんと五回の再発を超えて ●経営コンサルタント 間瀬健一さん
だるい腕を切り離したいと嘆いたことも ●「リンパの会」代表 神保キサエさん
いつか子どもを生みたくて、パッチワークの子宮 ●漫画家 田中満智子さん
ちょっと不自由、でも生きている方がずっといい ●作詞・作曲家 中山大三郎さん

第三章 あなたを忘れない
尊厳死・安楽死に手を下すのはなぜ医師なのか ●作家 塩見鮮一郎さん
最後まで舞台に立った名優・宇野重吉さんの秘蔵っ子 ●女優 日色ともゑさん
父の死が教えてくれた緑の癒し ●画家・エッセイスト 宮迫千鶴さん
死は生きるための着地点 ●ノンフィクション作家 柳田邦男さん

第四章 いのちの力
お母ちゃんと同じガンになって、すべてを記録してやる ●ノンフィクション作家 柳原和子さん
怒りなされ 小さな己を悟るまで 怒りなされ ●尼僧・画家 中村明晃さん
「自信過剰の手術好き」になれた動機 ●外科医 土屋繁裕さん
「片方の瞳で泣く」という言葉が好き ●「高齢社会をとくする女性の会」代表/東京家政大学教授 樋口恵子さん
いのちとしか言えないようなものが、這い上がっていく ●環境哲学者/和光大学教授 最首 悟さん

あとがき
人物紹介

■引用

■書評・紹介

■言及




*作成:岡田 清鷹 
UP:20081106
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