『トヨタの労働現場――ダイナミズムとコンテクス
ト』
伊原 亮司 20030501 桜井書店,313p.
■伊原 亮司 20030501 『トヨタの労働現場――ダイナミズムとコンテクスト』,桜井書店,313p. ISBN-10:
4921190216 ISBN-13: 978-4921190217 2940
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■内容(「BOOK」データベースより)
若き学徒が、ライン労働に従事しながら考察、分析した労働現場の真実。
内容(「MARC」データベースより)
トヨタの労働現場では、機械・装置を通して権力が行使され、労働者はコミュニケーションを通してコントロールされている。著者がライン労働に従事しながら
考察、分析した労働現場の真実。
■著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
伊原 亮司
一橋大学商学部卒業。現在、一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程在学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
■目次
序章 入社
第1章 工場・組・勤務形態
第2章 現場労働
第3章 現場労働者の「熟練」
第4章 現場労働者の「自律性」
第5章 労働現場における管理過程
第6章 選別と統合―労務管理の実態と労働者の日常世界
第7章 労働現場のダイナミズム
終章 退社―労働市場と労働現場
補論 日本の自動車工場の労働現場にかんする調査研究の動向―「熟練」にかんする議論を中心に
■引用
「組長の森田さん(勤続二〇年)の話によると、このラインの設計意図は、自動装置に人間を従わせるのではなく、「人間を生産の中心に置くこと」にある。さ
らに、このラインは、「安全第一」かつ「誰にでも働ける」というコンセプトでデザインされているという。」(p.29)
「「提案」への参加状況を見てみると、そのほとんどは、締め切り直前になって無理やり捻り出しているようであり、職制から「ネタ」をもらって書いている従
業員もいる。期間従業員の多くは、締め切り期限を過ぎて催促されない限り提出しない。ただ、この提案は、ごく一部の労働者にとっては経営側にアピールする
機会になっている。逆にいうと、管理する側にとっては労働者のやる気を測る材料になっているのであろう。」(p.65-66)
「(…)QCを「労働の人間化」と結びつけた議論がある。しかしそれ以前に、「労働者の人間化」を問題にして欲しいと思える。夜中の三時、普通の人なら
とっくに寝ている時間。労働者が人間らしく働くためには、QCの活性化の前に、寝ることが求められる。バスももうないだろうから車で送ってもらう。寮に戻
ると午前四時前。」(p.79)
「経営側は、品質に対する責任を個々の労働者に押し付けているだけでなく、共同責任という形でグループ全体にも負わせている。そのため、何かトラブルが生
じた際には、たとえそれが個人的なミスであっても、グループ全体で処理しなければならない。個々の労働者には、グループに迷惑をかけてはいけないというプ
レッシャーが重くのしかかってくる。」(p.174)
「地元の雇用状況やトヨタに入る前に就いていた仕事について、何人かの期間従業員に聞いてみた。彼らは、共通して、「帰っても地元には仕事がない」とい
う。期間従業員の多くが地方出身者である。地方から出てきた期間従業員は、ここトヨタで働き続ける積極的な理由がなくても、簡単には辞められないのであ
る。」(p.257-258)
*作成:橋口昌治