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『バカの壁』

養老猛司,200304,新潮社,新潮新書003,204p. ISBN:4-10-610003-7 680


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養老 猛司 200304 『バカの壁』,新潮社,新潮新書003,204p. ISBN:4-10-610003-7 680 [amazon][bk1]

 以下製作:立命館大学政策科学部3回生Y

はじめに
 私は、養老猛司著の新潮社の新書である、「バカの壁」を紹介します。新聞などでも話題になったため、知っている人、またはすでに読んだという人も多いと思います。タイトルだけ見ると、いったい何について書かれた本なのか、と興味をそそられる人も多いと思いますが、この本ではさまざまな分野のことがかかれています。自分について考えている人、また世界中で起こっている不可解な事件について考えている人、そして人の脳の仕組みについて知りたい人にもこの本はお勧めです。なんだろう、と少しでも疑問に思った人は一度読んでみるべきだと思います。本の内容に入る前に、著者である養老孟子さんについて述べておきます。1937年、神奈川県鎌倉市でお生まれになり、1962年に東京大学医学部を卒業、その後解剖学を学ばれ、1995年には東京大学医学部教授を退官され、現在では北里大学教授、東京大学名誉教授でいらっしゃいます。他の著書には「唯脳論」「人間科学」「からだを読む」など、専門である解剖学、科学哲学から社会時評まで、多くのことを手がけていらっしゃいます。では、「バカの壁」の世界にご案内しましょう。

第1章 「バカの壁」とは何か
「話せばわかる」は大嘘・「わかっている」という怖さ・知識と常識は違う・現実とは何か・NHKは神か・科学の怪しさ・科学には反証が必要・確実なこととは何か

第2章 脳の中の係数
脳の中の出入力・脳内の一次方程式・虫と百円玉・無限大は原理主義・感情の係数・適応性は係数次第

第3章 「個性を伸ばせ」という詐欺
共通了解と強制了解・個性豊かな精神病患者・マニュアル人間・「個性」を発揮すると・松井、イチロー、中田

第4章 万物流転、情報不変
私は私、ではない・自己の情報化・「平家物語」と「方丈記」・「君子豹変」は悪口か・「知る」と「死ぬ」・「朝に道を開かば・・・」・武士に二言はない・ケニアの歌・共通意識のタイムラグ・個性よりも大切なもの・意識と言葉・脳内の「リンゴ活動」・THEとAの違い・日本語の定冠詞・神を考えるとき・脳内の自給自足・偶然の誕生・「超人」の誕生・現代人プラスα

第5章 無意識・身体・共同体
「身体」を忘れた日本人・オウム真理教の身体・軍隊と身体・身体との付き合い方・身体と学習・文武両道・大人は不健康・脳の中の身体・クビを切る・共同体の崩壊・機能仕儀と共同体・亡国の共同体・理想の共同体・人生の意味・苦痛の意味・忘れられた無意識・無意識の発見・熟睡する学生・三分の一は無意識・左右バラバラ・「あべこべ」のツケ

第6章 バカの脳
賢い脳、バカな脳・記憶の達人・脳のモデル・ニュートラルネット・意外に鈍い脳の神経・方向判断の仕組み・暗算の仕組み・イチローの秘密・ピカソの秘密・脳の操作・キレる脳・衝動殺人犯と連続殺人犯・犯罪者の脳を調べよ・オタクの脳

第7章 教育の怪しさ
インチキ自然教育・でもしか先生・「退学」の本当の意味・俺を見習え・東大のバカ学生・死体はなぜ隠される・身体を動かせ・育てにくい子供・赤ん坊の脳調査

第8章 一次元論を超えて
合理化の末路・カーストはワークシェアリング・オバサンは元気・欲をどう抑制するのか・欲望としての兵器・経済の欲・実の経済・嘘の経済を切り捨てよ・神より人間・百姓の強さ・カトリックとプロテスタント・人生は家康型・人間の常識

第1章
 はじめに、この本の題名にもなっている、「バカの壁」について説明している。男女の学生に、出産のときのビデオを見せたとき、女子学生のほとんどからは「大変勉強になりました」などの回答が得られたのに対して、男子学生は皆一様に「保健の授業で習ったことばかりで知っていた」などと答えたというデータがある。これも一種の「バカの壁」であり、自分が知りたくないことについては自主的に情報を遮断してしまう、という壁である。また、これは常識だから、とか、自分は知っているなどの思う込みも「バカの壁」である。

第2章
 人間の脳というのは、複雑でわかりにくいものというイメージがあるが、簡単にいえば脳は計算機のようなものである。情報が入力され、そしてその情報に対しての反応が出力されるのである。入力は五感で、出力というのは最終的には意識的な出力、具体的に言うと脳内の運動のことである。適応性は、係数しだいで変化するものであり、このように考えると不可解な行動なども理解可能なのである。

第3章
 「個性」という言葉が話題になり、「個性を伸ばす」ことが求められてはいるが、社会は大きな矛盾を作り出してしまったのである。会社でもどこでも組織に入れば徹底的に「共通理解」を求められるにもかかわらず、口では、「個性を発揮しろ」と言われるのである。要するに、「個性」といっても、「求められる個性」を発揮しろという矛盾した要求が出されているのである。また、社会に認められて初めて、「個性」として成り立つのである。

第4章
 これまで述べてきたことをまとめて考えれば、「個性」は脳ではなく身体に宿っているということがわかる。しかし現在ではそれがまったく逆転して受け止められているのである。そして、同じ勘違いが「情報」についても起こっている。一般に、情報は日々変化し続け、自分は変わらない、と思われているが、これはまったく逆なのである。情報こそが不変であり、自分は日々変化していくのである。

第5章
 これまでさまざまな「壁」について述べてきたが、われわれがいつのまにか作ってしまった壁のなかに、意識と無意識について、身体と脳について、そして共同体についての問題がある。これらの問題は、気づかないうちに排除されてきたのである。わかりやくい例でいえば、誰でも寝ている間は無意識であろう。しかしわれわれは無意識であることを意識していないばかりではなく、意識についてばかり意識する傾向があるのである。そして同じことが身体と脳について、なった共同体についてもいえるのである。

第6章
 ここでは、脳について専門的に解説している。賢い脳とバカの脳の違いは何か、ということであるが、これを解明するのは難しい。賢いということ、バカであるということの基準がまちまちだからである。たとえば記憶力が人一倍あるからといって、賢いということにはならないし、計算が遅いからといってバカであるということではないからである。社会的に頭がいいというのは多くの場合、バランスが取れていて社会的適応がいろいろな局面でできる、ということであり逆にいえば何かひとつのことに秀でている天才は社会的には迷惑な人である、ということになる。

第7章
 教育の中にも多くの壁が存在する。近年小学校で行われている、「ゆとり教育」や「自然教育」は、意味があるようで一種の骨抜きにしかなっていないのが現状である。また、教育者そのものも変わってしまい、子供たちと真剣に人として向き合おうという姿勢を持った教員さえ少なくなってしまっている。その背景には、そんなことをすれば親から苦情がきたりPTAで問題にされかねないということがあり、自分の身が一番大切なわけでそこまでする必要はないという空気を社会が作り出してしまったのである。

第8章
 これまで現代人がいかにして考えないままに周囲に、また自分自身に壁を作っているか、そもそもいつのまにか大事なことを考えなくなってきてしまったことを述べてきた。ではどうすればよいのかという疑問が出てくるのは当然のことでありここではそれについて解説する。その答えは、どういう社会なり共同体が私たちにとって望ましいのか、またはどういう状態を私たちは幸福だと感じるのか、について考えることである。「人生の意味」について考えることをせずにして「バカの壁」に気づくことはできないであろう。 

私にとっての「バカの壁」

私にとってこの本は、自分自身について、また他人について今まで理解することのできなかった多くのことの解決策を提示してくれた数少ない本のひとつであった。一度読んだあとでもよくわからないところはもう一度、自分に足りないであろうと思われるところは再度読んだりもした。また、道に迷ったときは再びこの本を開き、力を借りることになるであろう。自分について考えている人、また世界中で起こっている不可解な事件について考えている人、そして人の脳の仕組みについて知りたい人など、本の好きな人にも嫌いな人にもすべての人にこの本を薦めたいと強く思う。


UP:20040126
2003年度受講者宛eMAILs  ◇BOOK

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