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『超高齢社会と向き合う』

田尾 雅夫・西村 周三・ 藤田 綾子 編 20030410 名古屋大学出版会,236p. ASIN: 4815804621 2940


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■田尾 雅夫・西村 周三・ 藤田 綾子 編 20030410 『超高齢社会と向き合う』,名古屋大学出版会,236p. ASIN: 4815804621 2940 [amazon][kinokuniya] ※, b fm/a01


■内容
(「BOOK」データベースより)
人口の4人に1人が高齢者という、未曾有の社会をわが国は迎えようとしている。本書は、高齢者の心理・行動と制度・政策の2つの視点から、この超高齢社会を概観し、そこで生きぬくための具体的な指針を提供する。

(「MARC」データベースより)
人口の4人に1人が高齢者という未曾有の社会をわが国は迎えようとしている。高齢者の心理・行動と制度・政策の2つの視点から、この超高齢社会を概観し、そこで生きぬくための具体的な指針を提供。

■目次
I 超高齢社会を考える基礎
  1 超高齢社会の到来
  2 エイジングについて―加齢現象とは
  3 人口について―超高齢化とは ほか)
  4 豊かなのか、貧しいのか――高齢者の経済状況
II 社会・心理・行動
  1 エイジズムへの挑戦
  2 高齢者から家族と地域を考えなおす
  3 より積極的に生きる―仕事とその設計
  4 心身の病理と向き合う
  5 超高齢社会と介護
III 政策・制度・組織
  1 行政施策―地方自治体による超高齢社会への対応
  2 保険・年金・医療・介護制度 西村 周三 168-188
  3 高齢者雇用
  4 高齢者施設のこれから
終章 変化に対する適応力 西村 周三 223-231


III 政策・制度・組織
  2 保険・年金・医療・介護制度 西村 周三 168-188

 「「どちらかと言えば」どちらを望むのかの意向を、必ずしも本人から聞き出しにくいという事情がある。なぜなら、家族に対する遠慮や配慮によって、本音が語られにくいからである。極端に言えば、日本人にとっては、老人の身体や心が、本人だけのものではなく、家族のものではないかとはさえ思わざるを得ない状況がある。そういった思いやりの精神は、確かに日本のよく伝統ではあるが、同時に問題の解決を難しくしている。
 一例をあげれば、一定の介護を要する期間を終え、いよいよ終末に近い状態を迎えたとき、いわゆる「死に場所」としてどこを選ぶか、という問題である。どちらかと言うと、本人は、自宅でのあまり過度な医療行為が行われ<0187<ない状況を選びがちであるが、家族の方は、少しでも長い延命を願って、病院への入院を望むことが多い。もちろん、この背後には、純粋な延命の期待と家族での介護の負担の忌避とが相混ざっている。しかもこの際、本人も、家族への思いやりから、本音を語ることをしない。結果的には、より医療機器などが整備した(ママ)施設が選ばれることになるのである。
 厄介なのは、国民の中に、医師が「終末の時期」をある程度的確に予測できるという期待と誤解がある点が、より問題を複雑にする。その結果、医療費も介護費用も、やや過大と思われる程度にまで費消されることが多いのである。」(西村[2003:187-188])

終章 変化に対する適応力 西村 周三 223-231

 「北欧が、かつて超高齢社会を迎えるに際して経験した次のような例が参考になる。いわゆる後期高齢者を大量に抱えることを最初に経験したのは北欧諸国であるが、この時期に、北欧は、いわゆる「寝たきり老人」を最小限にすることに成功した。それは医学の発展の成果を受け入れることで成功したのではなく、それまで医学分野ではいわばマイナーな技術であった「リハビリテーション」に政策の力点をおくことで成功した。80年代頃から、スウェーデンは、後期高齢者を大規模病院に「収容」することで、社会保障を充実することから、在宅ケアを重視し、生活の場でのリハビリに力点をおくことで、意外にも寝たきりの高齢者を減少させることに成功したのである。
 このような試みは、いまでは世界の主要先進諸国では当たり前のことになっているが、政策が打ち出された当初は、多くの偏見と不満があったことが想像できる。いまでは、多くの研究者は、この変化を「健康変換(health transition)と呼び、高く評価しているが、この転換は、研究室や病院での<0230<医学の技術進歩から生まれたのではなく、まさに「変化に対する、社会制度の柔軟な適応力」から生まれたと言ってよい。」(西村[2003:230-231]


UP:20061202 REV:
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