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『社会福祉における資源配分の研究』

坂田 周一 20030320 立教大学出版会,226p.

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last update:20151022

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■坂田 周一 20030320 『社会福祉における資源配分の研究』,立教大学出版会,226p. ISBN-10:490198800X ISBN-13:9784901988001 3800 [amazon][kinokuniya] ※

■内容

本研究は政府部門の資源制約が顕在化した1980年代から2000年までの期間を対象として、わが国の社会福祉供給体制に生じた変化の要因を資源配分の観点から検討したものである。この変化は、わが国の社会福祉にとって根本的なものであり、多様なアプローチからの検討が求められる歴史的な重要性を持っているが、その解明に一定の貢献ができたと考えている。一方、社会的ニーズとそれを充足するための社会的機構が持つ機能を明らかにし、さらには可能な代替案の成立条件の検討を課題とする社会福祉政策研究において、社会的ニーズを中心とする分析と、福祉サービスの供給を中心とする分析の両者を結合する枠組みとして、資源配分における割当(ラショニング)の概念の意義を検討することも目的の一つとした。(紀伊国屋BOOKWEBより)

■目次

第1章 資源制約下の社会福祉供給
第2章 社会福祉供給制度の枠組み
第3章 国家財政の長期動向と社会保障
第4章 意思決定理論と社会保障予算
第5章 国家財政の社会福祉への配分
第6章 国から地方自治体への配分
第7章 地方自治体間での配分
第8章 地方自治体内部での配分と社会福祉計画
第9章 社会福祉の有料化と社会福祉概念の変容
第10章 福祉供給体制の変化をめぐって
あとがき 個人的メモワール


■引用

◇社会福祉における資源配分をめぐる研究史
「政策現象としての社会福祉を研究する学問は、イギリスでは社会行政学ないし社会政策・行政学(Social Policy and Administration)と呼ばれている。この研究分野の発展に尽力したティトマスが、その課題に触れて、「基本的に<<4<<は一連の社会的ニードの研究と、欠乏状態のなかでこれらのニードを充足するための組織(それは伝統的には社会的諸サービスとか社会福祉と呼ばれるものである)がもつ機能の研究に携わることになる」〔Titmuss,1968(三浦監訳,1971,p.15)]と述べた一節は有名である。
 この引用文にある「欠乏状態のなかで」という一句の原文はin conditions of scarcityとなっているから、「希少状態のなかで」とか「希少性を条件として」と訳すこともできるだろう。これはニーズを持つ人びとが欠乏状態にあると述べたものとして考えがちであるが、文脈からはそうではなく、社会的ニーズを充足するための組織、すなわち社会福祉が資源の希少性という制約を受けている、あるいは、その条件のなかで機能していると述べたものと理解すべきである。」(4-5)

※Titmuss, R. M. [1968],Commitment to Welfare,George Allen & Unwin(三浦文雄監訳『社会福祉と社会保障――新しい福祉の地平を求めて』東京大学出版会

「社会福祉における希少資源の配分問題をティトマスよりも明瞭な形で提起したのはパーカーであった。彼は「社会行政と希少性――割当の諸問題」[Parker,1967]と題する論文を、「潜在的にニーズは無限である。しかし、資源は常に限られておりそれゆえ希少である」という文で書き始め、資源が限られていることによって社会福祉供給が直面せざるをえない困難の諸相を全編にわたって論じている。すなわち、「社会福祉は自由市場で提供されるサービスからはっきり区別される二つの重要な特徴を持っている。第1に、社会福祉は、社会や個人が基礎的にかつ必需と考える一定のニーズを充足しようとするものであるが、そおれを供給するものは高価であること。第2に、社会福祉は、価格メカニズムをその分配ないし配分の手段とするのをおおむね避けている。それにもかかわらず、豊富な福祉ニーズに希少な資源を調和させるという普遍的な問題はやはり解決されねばならないのであり、この状況を緩和することのできる唯一の方策は、一部のニードを充足されないままに放置するか、または、資源をぞy化させることだけである。」[Parker,1967,p204]と指摘しているように、彼においては資源の増加とともに所与の資源の配分が問題意識の中心を占めていた。」(6)

 ※Parker, R. A. [1967]“Social Administration and Scarcity: The Problem of Rationing" Social Work, Vol.24, No2, Reprinted in, E. Butterworth and R. Holman (eds) [1975], Social Welfare in Modern Britain, Fontana.

「パーカーによって1960年代末に再提起された割当の概念は、70年代後半になって別の学者たちによって再評価され、彼らの研究の中心に位置づけられることになった」(6)

◇市場による資源配分/社会福祉による資源配分
「割当とは資源が必要量に対して不足しており、かつ価格が配分機能を果たさない状況において用いられる、資源配分方法の総称ということができる。市場における競争を前提としている資本制経済においては、有限な資源は価格メカニズムを通じて配分することが原則である。供給よりも需要が多い場合には、価格が上昇することによって供給が促進され需要は縮小する。」(8)

「ところが、現代の資本制経済は市場における完全競争を前提とした価格メカニズムだけで成立しているのではなく、不完全競争の存在を認め、これに対して規制を加え、資源を直接配分することによって政府が経済的役割を果たす混合経済の体制をとっている。すなわち、市場を通さないで資源配分を行う領域があり、ここで用いられる配分配分方法を配給制ないし割当制というのである。」(8)

「社会保障や社会福祉こそは、価格の引上げによって需要を抑制することへの社会的・政治的許容性が限定された分野であり、このため割当が重要な課題となってくる。」(8)

「物を配る、配分するというのは昔から経済学のテーマとされている。経済学の教科書のなかには、最初のページに経済学とは資源配分の学問であると書いてあるものがあるくらいである。さまざまな産業分野があるなかでどの原料がどの産業にどれだけ配分されるのか、あるいは人間のさまざまな欲求に対していかに有限の資源を配分されていくのかを検討する学問であると表明されていたりする。」(196)

「しかし、福祉における配分は経済学で取り扱うのとは違った面、大げさに言うと大きく違う面があるのである。」(196)
「非常に抽象的ではあるが、社会福祉と言う行為に学問的に迫る切り口として、経済学では取り扱わないものとして、サービスや資金を「配る」という行為が浮かび上がるのである。」(197)

■書評・紹介


■言及



*作成:角崎 洋平
UP: 20100727 REV: 20151022
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