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『公共事業改革論――長野県モデルの検証』

森 裕之 20030315 有斐閣,310p.


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■森 裕之 20030315 『公共事業改革論――長野県モデルの検証』,有斐閣,310p. ISBN-10: 4641199914 ISBN-13: 978-4641199910 ¥6000 [amazon][kinokuniya] c05 c14

■内容紹介
戦後続いてきた日本の中央集権的な公共事業制度のもとで財政危機にあえぐ自治体が,公共事業改革を断行する場合の政策論理とその課題を明らかにし,国全体として公共事業の削減による財政構造改革を進めるために必要な制度設計の方向を提示する。

内容(「BOOK」データベースより)
長野における公共事業改革の熱い現場に立ち去った、「参与観察」から生まれた細密画のごとき研究成果。財政危機脱出のための制度設計。

■著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
森 裕之
1967年大阪府に生まれる。1990年大阪市立大学商学部卒業。1992年大阪市立大学大学院経営学研究科前期博士課程修了。1993年高知大学人文学部助手。1997年大阪教育大学教育学部専任講師。2003年立命館大学政策科学部助教授。現在、立命館大学政策科学部准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

■もくじ
序章 分析の視角
第1章 公共事業のシステムと改革
第2章 長野県「財政改革推進プログラム」と公共事業
第3章 入札制度改革
第4章 公共事業評価制度
第5章 建設産業構造改革
第6章 公共事業補助金における県‐市町村関係
第7章 公共事業と住民参加―ポスト「脱ダム」宣言の河川整備事業
終章 公共事業改革の課題と展望

あとがき
参考文献
初出一覧
索引

■引用
「ボールズとギンタスは,地方公共財の過小供給などの「市場の失敗」および「国家の失敗」による問題をコミュニティが解決する可能性があるとした。それは,コミュニティの構成員が互いの能力やニーズに関する重要な情報を有していることに基づくものであり,コミュニティは国家や市場よりも,人々が歴史的に保持してきた共同活動のためのインセンティブを育成・活用できるとしている。その背後にあるのは主流派経済学が軽視してきた「互酬選考(reciprocal preference)」であり,これによってコミュニティにおいては相互の監視と協力を持続させることができるとした。その一方でボールズらは,コミュニティが継続的な人的接触という特徴から比較的小さな規模の集団であることを必要とし,また相対的な同質性を有することによって多様性から生じる利益を得ることができないという「コミュニティの失敗」について指摘する。
 にもかかわらず彼らは,国家や市場をいかに組み合わせようとも社会的規範を十分に達成することはできないため,適切な公共政策を通じてコミュニティの機能を現代社会のガバナンスの一部に組み込むような制度設計が不可欠になっている点を強調する。とくに,適切な政府による制度環境はコミュニティが優れた機能を発揮する上で重要であり,このコミュニティ−政府のシナジー効果を考えれば,コミュニティは政府の代替ではなく補完とみなすことができるとしている。これはすでに述べた政府とコミュニティの制度的補完性に他ならない。そしてボールズらは,利己的な動機を利用するだけでなく,公共精神による動機を喚起・強化することによって,社会的に価値のある成果を支えるのが優れた政策であるとした。」(p.11)

15 Bowles, Samuel and Herbert Gintis 2002 Social Capital and Community Governance, The Economic Journal, Vol. 112, No.483, November, p.431

「先ほどみたように,世界経済の動向を背景にした国際的な政策協調に基づいて,日本の公共事業は展開されてきた。これについて金澤史男は,公共事業の「素材的必要性」と「有効需要創出」という伝統的・体内的な経済的機能に加えて,貿易黒字削減策という対外経済策手段としての位置づけが与えられることによって,公共事業の役割が「三重化」したとしている4。これは,日本の大企業が対外批判をかわしながら輸出や直接投資によって資本蓄積を継続するために,高水準の公共事業は国内的には非効率であっても重要な意義があったことを示している。しかし,1980年代末から1990年代にかけて大企業が急速に海外現地生産比率を高めた結果,現在のような財政崩壊のリスクを抱えた状況における公共事業の高水準は,これらの多国籍企業にとっては明白な障害となってきたのは間違いないとする。また碇山洋は,支配的企業の多国籍企業化を背景として「国際型企業・産業」と「国内型・公共事業依存型産業」の間の力関係が変化し,1990年代初頭から公共事業の拡大を要求してきた経済団体連合会や経済同友会が一時的に対立しながらも,1990年代末にはいずれも公共事業の重点化・効率化を行いつつ,大幅削減を進めるという政策思想へと収斂していったことを跡付けている。その上で,支配的地位を獲得した「国際型企業・産業」による低所得者層,条件不利地域,さらには「国内型・公共事業依存型産業」にとっての「結果の平等」を否定することが,現実の政治における政策的対応の重要な契機になったとしている5。
 これらの議論に共通しているのは,日本産業の多国籍企業化が経済的・政治的に1990年代の公共事業拡大から縮減への政策転換の引き金になったという点である。その上でさらに押さえておくべきことは,これらの公共事業への経済的・社会的な依存が大きい農村圏の主要産業であるべき農業が,同じ貿易摩擦のツケを農産物輸入の促進というかたちで負わされてきたという側面である。つまり,農村圏では農林業という主要産業の衰退を公共事業に依存する建設業によって補てんしてきたが,1990年代末になって今度はその公共事業自体が削られてくるという事態が展開することになったのである。」(p.23)

4 金澤 史男 2002 「公共事業分析の課題と改革の視点」金澤 史男 編『現代の公共事業』日本経済評論社
5 碇山 洋 2005 「公共事業をめぐる政策展開」日本財政学会 編『グローバル化と現代財政の課題』有斐閣

「しかし,地域社会の崩壊懸念はすでに現実化してきている。岡田知弘は,グローバル化の下における市場主義的な産業政策によって農業が大幅に再編・縮小されていることを反映し,現代の農村では様々なムラの共同業務(消防団,道普請,水路清掃,寺社の催し,下草刈り等)の麻痺といった社会関係の崩壊現象が広がっていると指摘している10.このような農村における産業の衰退だけでなく,後でみるように近年政府は公共事業予算と地方一般財源を削減しているため,公共事業の減少による建設業の衰退が進んでいる。東京など一部の大都市圏を除けば産業構造の転換は容易ではなく,地方圏における雇用確保は困難なままとなっている。」(p.25)

10 岡田 知弘 2007 「現代日本の地域経済と地域問題」岡田 知弘・川瀬 光義・鈴木 誠・富樫 幸一『国際化時代の地域経済学』第3版,有斐閣


*作成:橋口 昌治
UP:20081201 REV:
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