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『戦争の世紀を越えて――グローバル化時代の国家・歴史・民衆』

西川 長夫 20020724 平凡社,269p.

last update: 20131119

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西川 長夫 20020724 『戦争の世紀を越えて――グローバル化時代の国家・歴史・民衆』,平凡社,269p. \2400+税 ISBN-10: 4582702392 ISBN-13: 978-4582702392 [amazon][kinokuniya] ※

I 開戦の記憶と戦後の原風景
 映像と記憶――九月十一日をめぐって
 戦争と文学――文学者たちの十二月八月をめぐって
 廃墟と検閲――異文化としての戦後体験

II 戦後という時代と歴史学
 戦後歴史学と国民国家論
 戦後歴史学と国民国家論、その後
 『国民国家論の射程』韓国版の序
 民族という錯乱――民族論のためのノート


◇「戦後歴史学と国民国家論、その後」より

 「第二は、国民国家にかわるもの、代案つまりオルタナティヴを示さないで、国民国家批判をやるのは無責任だ、というものです。責任の名においてオルタナティヴのイデオロギーが保守派にも革新派にも蔓延しているようです。だが、またしても、安易なユートピアを示せというのでしょうか。今一般に言われているオルタナティヴは、ある大きな枠組みのなかでの選択肢です。だが、その大きな枠組み自体が崩れようとしている。問題となっているのは誰にも予見できない未来ではないでしょうか。混沌とした現実の歴史の進行のなかで、その場その場の選択を行いながら、試行錯誤の末に、私たちの視野が徐々にひらけていく。真のオルタナティヴは、長い考察と批判の間に、おのずと形成されるものだと思います。」(p.112)
 「私はこれまで、意図的に代案を出すことを拒否してきたのですが、それには主として三つの理由があります。一つは、すでに述べたように、代案というのは二大政党制が理想とされるような代議制の、したがって国民国家の枠内での選択を示す、いわば体制内イデオロギーであるということ。第二は、歴史の考え方にかかわってきますが、歴史にはつねに意外性があって、とりわけ現在のような五〇〇年来の大転換期にあっては、未来の予測は困難である。ウォーラーステインはそのことを、プリゴジンの理論を借りてバイファーケーションという用語で説明しています。そういう時代にあっては、一歩一歩、視野を切り開いて、その度ごとに道を選んで進むしかないのであって、もし一挙に代案を出せる(p.138)人がいたら、多分それはいんちきだと思います。第三は、ほぼ第二と同じことですが真の代案を出すためには、その人が感性においても思想においても、根底から変わらなければならないだろう。
 代案と言うときに、われわれは手持ちの材料で考えてすぐ代案が出せるような錯覚をいだいています。しかし国民国家の歴史のなかでは、その代案を考える思考力を抑圧する力がずっと働いていて――それが国家イデオロギーというものでしょう――、それはわれわれの感性や思考力を左右している。」(pp.138-139)


■書評・紹介・言及

◆立岩 真也 2004 『自由の平等』

◇序章・注15 「[…]多文化主義、マイノリティ文化の権利についてはKymlicka[1995=1998]、Kymlicka ed.[1995]、工藤[2000]、西川[2002]、等々。また井上[2003a:171-211]では多文化主義とリベラリズムとの関係が検討されている。(井上の言うリベラリズムとこの語の本書での用法とは同じでないが、本書では論者による語の理解の異同を確認していくことはできない。)」
◇第3章注1 「[…]本文に記したのは現実が変わると意識が変わるという一つの線だが、むろんそれだけが想定されたのではない。両者の間の幾度もの往復が、希望とともに、描かれたのだった。それはたしかに空想的だと思える。しかし、人もまた変わっていくはずであると考えるのは、人はこんなものだろうというところから議論しそこに留まってしまうのと比べて、少なくとも論理的に誤っているということはない。人はどのように変わっていくかわからないのだと、だから「代替案」を示せという脅迫に「誰にも予見できない未来」(西川[2002:112,138-139])を対置することは正しいのだし、論と現実を先の方まで進めていこうとする力に対してリベラリズムが反動として作用することに苛立つ人がいる(Zizek[2001=2002])のも当然なのである。」
西川 長夫 2002 『戦争の世紀を越えて――グローバル化時代の国家・歴史・民衆』,平凡社 <319>
西川 長夫 22003 「多文化主義から見た公共性問題――公共性再定義のために」,山口・佐藤・中島・小関編[2003:82-106] <295,325>


UP: REV:20131106, 1119
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