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『日本型ワークシェアリング』

脇坂 明 20020529 PHP新書,208p. 680


■脇坂 明 200205 『日本型ワークシェアリング』,PHP新書,204p. ISBN: 4569622496 714 [amazon] ※

■内容

出版社/著者からの内容紹介   日本社会にワークシェアリングは根づくのか。
  今日、「時短」や「出向」といった旧来の回避策ではもはや通用せず、雇用維持の新たな仕組みづくりが不可避の緊急課題となっている。人材確保を重視する企業は、職場や働き方そのものを見直し、早くも新たなモデルを導入し始めた。
  いかに生産性を維持し、雇用を増やすことができるのか。さらに単なる欧米型ではなく、日本モデルを創出できるのか。
  本書は、ワークシェアリングを「緊急避難型」「中高年対策型」「雇用創出型」「多様就業促進型」の4つのタイプに分け、最新の企業実例やアンケート調査などから日本が目指すべきワークシェアリングのモデルを探る。
  さらに「ファミリーフレンドリー」という、自分と家族の生活を配慮した、多様な働き方を実現する職場作りを提案。キャリアパスの構築、人材を保持する分担方式と順送り方式、そして「短時間正社員」など、これからの低成長時代に適した働き方を展望する。
内容(「BOOK」データベースより)
日本社会にワークシェアリングは根づくのか。それはもはや不可避の緊急課題となり、人材確保を重視する企業は早くも導入し始めた。いかに生産性を維持し、雇用を増やすか、さらに単なる欧米型ではなく、日本モデルを創出できるのか。本書は、「ファミリーフレンドリー」という、自分と家族の生活を配慮した、多様な働き方を実現する職場作りを提案。キャリアパスの構築、人材を保持する順送り方式、そして「短時間正社員」など、最新の企業実例を基にこれからの低成長時代に適した働き方を展望する。

■著者略歴

(「BOOK著者紹介情報」より)
脇坂 明
1953年、富山県生まれ。京都大学経済学部卒業。同大学院経済学研究科博士課程修了。岡山大学教授を経て、現在、学習院大学経済学部教授。専攻は労働経済学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

■目次

第1章 いま、なぜワークシェアリングが必要か
第2章 雇用・失業情勢の推移
第3章 ワークシェアリングとは何か
第4章 日本のワークシェアリング
第5章 日本型ワークシェアリングの展望


■以下紹介:深阪健二(立命館大学政策科学部)

<目次>

まえがき

第一章 いま、なぜワークシェアリングが必要か
1、 働き方を考える契機
2、 ワークシェアリング議論
3、 雇用不安を抑えられるか?
4、 技能をいかに維持するか
5、 「効用」から「キャリア」という視点へ

第二章 雇用・失業情勢の推移
1、 完全失業率の急上昇
2、 失業の状況から何を読み取るか
3、 不本意(非自発的)な離職の増加

第三章 ワークシェアリングとは何か
1、 ワークシェアリングの類型
2、 ワークシェアリング導入にあたって
3、 タイプ別の代表事例

第四章 日本のワークシェアリング
1、 日本の「ワークシェアリング論議」
2、 アンケート調査で見た導入・検討状況
3、 ワークシェアリングに向けた動き
4、 ワークシェアリング導入にあたっての課題

第五章 日本型ワークシェアリングの展望
1、 緊急避難型から多様就業促進型へ
2、 「ファミリーフレンドリー」企業へ
3、 ファミフレ度を高める方法

あとがき/参考文献

<第一章 いま、なぜワークシェアリングが必要か>

  第一章では、ワークシェアリングを考えるにあたっての基礎知識として、簡単にワークシェアリングの説明がなされている。ワークシェアリングにはいくつかのタイプがあり、それを大きく二つに分けている。
一つは緊急避難タイプのワークシェアリングである。これは、一時的に仕事量が減った場合に、従業員を解雇せずに、その仕事を分かち合うタイプのものである。もう一つが、多様就業タイプのワークシェアリングである。これは、例えば、育児休業であったり、大学院に入って勉強をしなおすための休業であったり、働きながら資格取得のための勉強をしたりといった、多様な生き方を提供してくれるものである。
  他に、ワークシェアリングの利点を経済学・経営学の視点から簡略に説明している。

<第二章 雇用・失業情勢の推移>

  この章では、失業と雇用についてのデータを上げ、失業の増加についての説明を行っている。次に、失業・離職の理由についての分析を行っている。その結果を元に、企業は必要以上に失業者を増大させており、ワークシェアリングによって、失業の増加を防ぐことができるのではないかと提案している。

<第三章 ワークシェアリングとは何か>

  第三章では、ワークシェアリングの類型とその事例を説明している。ワークシェアリングには四つの類型がある。以下に四つの類型を書き出そう。

・雇用維持型(緊急避難型、中高年対策型)
  この二つは、一人当たりの労働時間を減らして仕事を分け合い、雇用を維持していくタイプのワークシェアリングである。賃金は生産性上昇によって維持される場合と、下がる場合がある。緊急避難型と中高年対策型は、対象となる従業員が後者は中高年に限定される。

・雇用創出型
  これは文字通り、雇用創出を目的としたワークシェアリングである。国または企業単位で労働時間を短縮して、マクロ経済全体としての雇用を増やすことを目的としている。オイルショック以後のヨーロッパ、特にドイツ、フランスを中心として行われてきた。

・多様就業促進型
  歴史的な流れからいえば、一番新しいタイプである。前述の3タイプは、とにかく労働時間を減らす、それによって賃金が下がる場合も、業績低迷、中高年の余剰人員、高失業率の慢性化などによって、いわばやむを得ず行っている手法である。これに対し、多様就業促進型は、正社員であってももともとフルタイムで働きたくない人、またそれなりの処遇がされた条件のいいパートタイムの仕事で、五〜六時間働きたいという人たちのために雇用を与えるものである。

  以上の四つの類型を事例と共に紹介し、詳しく説明している。

<第四章 日本のワークシェアリング>

  ここでは、日本のワークシェアリング論議の経緯について述べられている。それと、当時の労働省の委託を受けて、「ワークシェアリングに関する調査研究会」が行った、ワークシェアリングの導入・検討状況についてのアンケート調査の結果と、そのまとめが掲載されている。他に、ワークシェアリング導入に向けた、日本の自治体や企業の事例を紹介している。
  最後に、紹介した事例を参考に、「ワークシェアリングに関する調査研究会」の報告書に沿う形で、今後のワークシェアリング導入に向けての課題について述べられている。

<第五章 日本型ワークシェアリングの展望>

  最終章である、本章では、日本のワークシェアリングは緊急避難型から多様就業型に以降しなければならいないと説いている。失業を防ぐための短期型のワークシェアリングから、家族のあり方や働き方の変化までを視野に入れた長期的なものでなければならない。ライフスタイルの多様化や、高齢化社会への以降による労働市場の変化を考えたワークシェアリングがこれからの日本に求められる。そのために必要な改革の具体的な方策をいくつか提言している。


<この本に関するコメント>

  私ははっきり言って、ワークシェアリングとは何かということをほとんどわかっていなかった。しかし、この本を読んでその概観を知ることができた。本書ではワークシェアリングとは何か、といった基本的なことから、今後、どのようにワークシェアリングを導入していくかといった実践的なこと、多くの事例を挙げて説明しており、非常にわかりやすい内容となった。一言で言えば、ワークシェアリング入門書といったとこであろう。多くのことを書いているため、多少散文的な感じは否めないところだが、裏を返せば、広く浅く概観することができる。第五章の最後には、導入するに当たっての企業がとるべき方法が書かれている。これに関しての知識不足のため、安易に評価をすることは憚られるが、実践的な内容であり、我々のような学生から、経営者まで幅広く読める本となっているのではないだろうか。

<本書を選んだ理由>

  前述の通り、私はワークシェアリングについての知識がほとんどなかった。そのため、それについて基礎的なことが書かれている本であることが基準となった。同時に、今回のレポートは書評であり、他人に読むことを勧めるのであれば、入手が簡単であり、かつ、読みやすい本であることが条件であった。そのようなことを念頭に起き、選んだのが、新書のため、入手が簡単で安価、読む分量も多量というわけでなく、入門書として平易である本書であった。


UP:20040216 REV:20060315
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