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『揺らぐ〈学校から仕事へ〉』

竹内 常一+高生研 編 20020522 青木書店,282p.


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■竹内 常一+高生研 編 20020522 『揺らぐ〈学校から仕事へ〉――労働市場の変容と10代』,青木書店,282p. 2940 ISBN-10: 4250202178 ISBN-13: 978-4250202179
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■内容(「BOOK」データベースより)
未曾有の就職難とフリーターの急増。教育はいま何をすべきか。日本型雇用の大転換のなかに10代の労働市場を位置づけ、「学校と仕事を結ぶ」実践から学 校・教師の課題を提示する。

内容(「MARC」データベースより)
未曾有の就職難とフリーターの急増。教育はいま何をすべきか? 日本型雇用の大転換のなかに10代の労働市場を位置づけ、「学校と仕事を結ぶ」実践から学校・教師の課題を提示する。

■著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
竹内 常一[タケウチ ツネカズ]
1935年生まれ。1960年、東京大学大学院学校教育修士課程修了。現在、国学院大学文学部教授、全国高校生活指導研究協議会常任委員(本データはこの 書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

■目次

はじめに
第1部 激変する若者の雇用状況
第1章 若者たちの労働市場のいま
   ――「学校から仕事へ」の移行過程変容の性格と課題  乾彰夫
 はじめに――高校生の四人に一人が就職放棄?!
 1 急速に変容する日本の若者たちの「学校から仕事へ」の移行
 2 「学校から仕事へ」の移行過程変容が若者の生活にもたらすもの
 おわりに

第2章 日本型雇用の転換と若者の大失業  木下武男
 1 日本型雇用と格差社会の枠組み
 2 日本型雇用の転換をもたらす若年雇用問題
 3 単身者賃金の社会的相場化
 4 若者の就業環境と意識の変化、その意味するところ

第3章 高卒就職最前線  中谷利秋
 1 二〇〇〇年度の求人の特徴と就職活動
 2 過去数年の進路の状況
 3 女子の厳しい就職状況
 4 ツッパリたちの就職への取り組み
 5 おとなしい生徒の苦戦
 6 コツコツできるのは個性ではないのか?
 7 ゆったりと若者を育てられない社会――その陰に生徒の涙
 8 就職の全体状況と今後の課題

第4章 「地方」における高校生の就職状況
   ――「深刻」の打開に向かって  石津宏介
 はじめに
 1 進学事情
 2 就職戦線の今
 3 企業の傾向と生徒の動き
 4 文科省らの「中間報告」
 5 学校現場の対応
 6 就職試験のための具体的な指導
 7 生徒自身の気持ち
 8 新たな対応・指導のあり方
 9 フリーター流行りのなかで
 おわりに

第5章 聞き取り・高校生のアルバイトと仕事観  山崎和達
 はじめに
 1 「A高校生のアルバイト」
 2 アンケート集計「B高校生のアルバイト」
 3 聞き取り「B高校生のアルバイト」
 おわりに

第2部 学校から働くことを考える
第6章 地域には先生がいっぱい
   ――旭丘高校商業科「課題研究」(職業体験学習)  田村康成
 1 そもそもの始まり
 2 体験学習オリエンテーション――事前学習
 3 生徒の"夢"と地域の支援
 4 生徒の新しい「学び」
 5 地域社会への返礼と交流の深まり
 6 体験学習のバックグラウンド――教職員集団の支え
 7 私たちの課題

第7章 授業:インタビューを通して仕事の話を聞く  岡村昭弘
 1 なぜ仕事のインタビューか?
 2 授業をどう構成したか
 3 実践の経過
 4 授業を振り返って

第8章 職業高校における進路指導と職場体験実習  石幡信
 はじめに
 1 職業教育の現場から見た現状と課題
 2 職場体験実習を通した職業教育
 3 職場体験実習の新たな展開
 4 まとめにかえて――職業高校を中核とした地域単位の職業教育の可能性

第9章 ジェンダー視点から教育と仕事をつなぐ  朴木佳緒留
 はじめに
 1 学校におけるジェンダー再生産のしくみ
 2 「働くこと」についてのジェンダーフリー教育
 まとめにかえて

第10章 「地域づくりへの協同」を軸とした「進路指導」再構築と展望  西本勝美
 1 「職場体験学習」の経緯
 2 一九六〇年代初期の転回点――「教育における進路問題」の先送りと消失
 3 「技術教育」主義の戦略と限界
 4 小括:「教育における進路問題」をめぐる問題の構図
 5 高校における「進路指導」の新たな方向
 6 中学校における「進路指導」の新たな方向

第11章 「高校改革」と職業・労働の教育  竹内常一
 1 高校生の就職問題と「高校改革」
 2 高校教育の弾力化・個性化へ
 3 総合学科の登場
 4 二つの職業教育論
 5 職業教育から労働教育へ(T)――働くことの「しんどさ」と「喜び」
 6 職業教育から労働教育へ(U)――職業にたいする決定権と政治的介入

第12章 若者たちの「学校から仕事へ」を支える公共システム
   ――イギリスの場合  乾彰夫
 1 若者たちの就労と社会的自立
 2 福祉国家体制と若者の自立を支える枠組み
 3 保守党=ニューライトのもとでの制度的後退
 4 ニューレイバー(新労働党)政権による再構築
 おわりに

■引用

「労働市場では若年者と中高年者が入り混じって求職活動をしている。失業率の高い労働市場では、求職者よりも求人者の方が優位に立っている。そして、企業 は、職業におけるキャリアが重視される場合を除いて、年齢の要素は採用時に勘案しない。そうなると、水は低きに流れるように賃金は下位で決まる。その下位 の相場が若年者の単身賃金なのである。」(p.46)

「以前、「底辺校」で教えている時、不思議に思っていたことの一つに、学校生活にはほとんど適応できないタイプの生徒が、アルバイトではきちんと仕事をし ていることがあった。「遅刻、欠席の常習者で、掃除も満足にできず、もちろん勉強も赤点だらけ、漢字の読み書きもままならない」というタイプの生徒でも、 しっかりアルバイトをしている話を聞くと、世の中というのはすごいものだと感心していた。
 逆に言えば、学校の「教育力」はどうみてもこのバイト先の企業の「教育力」に勝てていないということである。もちろん、私自身の力量不足という謙虚な考 え方もできる。「金がかかっているから」という言い訳もないわけではない。「金を払う側ともらう側の違いだ」と居直ることもできる。「仕事ができなければ クビだし」と企業の厳しさをあげることも。しかし、それだけではないはずである。
 その秘密が知りたいと思っていたところ、生徒のバイト先には「バイトマニュアル」らしいものがあるとわかった。ファストフードレストランなどに入ると、 誰もが同じ笑顔で同じあいさつ言葉で応じてくることから、薄々そういったものがあるらしいことは感じていたのだが。
 当時、生徒にバイト先の「マニュアル」を見せてもらった。
 ひとことで言えば「上下関係」をもとにした「徹底した指示」がそこにはあった。商品一つひとつの呼び方もコレ以外はダメ! というような。「ダブルチー ズバーガー」は「ダブバー」とか言い換えるように。また、バイト中に想定されうるありとあらゆる場面で使う言葉はコレ!だけとか。客が入ってきたら「い らっしゃいませ、クイーン・キッチンへようこそ」しか言ってはダメとか。
 これを見たときに、生徒にとっては「ラク」なんだろうなと思った。だから働けるんだろうな、と。」(p.104-105)

「これまでの検討から、以後の考察にさしあたり必要となる問題の構図をまとめて描き直すと、おおむね次のようになるだろう。すなわち、戦後日本の「教育に おける進路問題」は、一九五〇年代初期に選び取られた「『技術』教育による『職業』教育の超克」の「戦略」と、一九六〇年代初期に選び取られた中学校から 高校への「先送り」の「戦略」との二重の「戦略」のもとで潜在化され続け、いまだ本格的な再検討がなされないままになっている。そして、高校に「先送り」 された「教育における進路問題」は、格差的な高校制度実態と特殊日本的な学卒雇用形態の成立によって「消失」し、しかも、再検討の俎上にのせようにも、今 後は「『技術』教育の絶望的な『限界』」が立ちはだかっている、という構図である。」(p.224)

「このために、企業はこれまでのようにローテーションとOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング――仕事をとおしての訓練)によって労働力養成管理をおこ なうだけでなく、Off−JT(オフ・ザ・ジョブ・トレーニング――仕事を離れての訓練)を併用して、それも労働者の自発的なキャリア設計と能力開発に依 拠して、労働力の養成管理をすすめなければならなくなったのである。そのために、この時期から学校教育による進路指導とキャリア教育がことさらに重要視さ れるようになった。
 だから、第二次答申は、「障害職業能力開発の総合的推進」を課題とし、その一環として中等教育と中等教育後における職業能力開発の機会を拡充することを 提起したのである。そして、これを前提にして、個々の生徒にたいして自己責任・自己選択・自己決定の原則にもとづいてキャリアを形成していくことを求め た。それは「個性や適性に応じた進路選択を行ない、また、正しい勤労観、職業観、職業生活に不可欠な基礎的知識・技能を身に付けさせ、将来のよき職業人を 育成することが必要である」と述べたうえで、高校における職業教育については、「その(職業教育の――引用者)深化を図るものと、職業教育と普通教育との 統合を図ることがふさわしいものと、その特質に応じ充実を図り、学科の構成についても、社会や時代の進展に応じて、既存の学科にとらわれず柔軟に対応しう るようにする」(傍点は引用者)という見取り図を提起した。」(p.244-245)

「だから、選択履修の要に位置している「産業社会と人間」は、つぎのような目的を掲げている。
 「自己の生き方を探求させるという観点から、自己啓発的な体験学習や討論を通して、職業選択決定に必要な能力・態度、将来の職業生活に必要な態度やコ ミュニケーション能力を養うとともに、自己の充実や生きがいを目指し、生涯にわたって学習に取り組む意欲や態度の育成を図る。」
そして、つぎのような内容を例示している。
「職業と生活」(職業の種類とその特徴に関すること、職業生活と法律に関すること、勤労・職業の意義と望ましい勤労観・職業観に関すること)。
「我が国の産業の発展と社会の変化」(科学技術の発展にともなう産業の発展と社会の変化に関すること、産業の発展と日常生活への影響に関すること)。
「進路と自己実現」(職業と自己の適性に関すること、自己の適性と進路に関すること)。
これらを見ると、それは職業と労働に関する知識・技能の教育というよりは、職業の選択と決定に必要な能力と関心・意欲・態度の教育に力点をおくものであ る。(…)」(p.248-249)

「(…)総合学科(高校)もまた、日本型能力主義の特徴である情意考課の態度重視、「生活能力としての態度」から免れていないのである。」(p.250)


UP:20070801
「若年者雇用問題」文献表
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