『経済と倫理――福祉国家の哲学』(公共哲学業書 1)
塩野谷 祐一 20020405 東京大学出版会,444p.
■塩野谷 祐一 20020405 『経済と倫理――福祉国家の哲学』(公共哲学業書 1),東京大学出版会,444p. ISBN-10: 4130034510 ISBN-13: 9784130034517 \5600 [amazon]/[kinokuniya] ※
■内容
内容(「BOOK」データベースより)
経済は何のためにあるのか。効率によって支配された経済世界を正義と卓越によって評価し直し、経済と倫理を資本主義・民主主義・社会保障の三層の社会制度の中に位置づける。公共哲学叢書第一弾。
内容(「MARC」データベースより)
経済は何のためにあるのか? 効率によって支配された経済世界を正義と卓越によって評価し直し、経済と倫理を資本主義・民主主義・社会保障の三層の社会制度の中に位置づける。
出版社 こやま
経済は何のためにあるのか 経済は何のためにあるのか! 効率によって支配された経済世界を正義と卓越によって評価し直し,経済と倫理を資本主義・民主主義・社会保障の三層の社会制度の中に位置づける,公共哲学叢書第一弾!
著者略歴(「BOOK著者紹介情報」より)
- 塩野谷 祐一
- 1932年生まれ。1953年名古屋大学経済学部卒業。1958年一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了。一橋大学教授、一橋大学長、国立社会保障・人口問題研究所長などを歴任。一橋大学名誉教授、経済学博士
■目次
まえがき
序論 経済の此岸と彼岸
経済の根底にあるもの
経済の究極にあるもの
福祉国家を通ずる価値
理念の整合化
本書のプラン
第1編 理念
第1章 経済と倫理――概念的枠組
1 経済と倫理との関係
モラル・サイエンスと経済学
経済に対する倫理的批判
倫理に対する経済的批判
経済と倫理の双方的・重層的関係
2 3つの倫理学――善・正・徳
制度の概念
規範の原理性としての道徳
「行為・制度・存在」および「善・正・徳」
倫理学の体系
3 「倫理的」価値の性質
4 社会的共存への関心
価値と関心
社会的共存への関心
善と正
パレートの人間本性とイデオロギー
5 「経済的」価値の性質
6 2つの社会的統合の機構
経済の世界と倫理の世界
善の2つの多元性
効率と正義
自由と卓越
課題の総括
価値と方法の枠組み
第2章 効率と正義
1 効用主義批判
生産の効率と分配の正義
効用対権利
経済学における記述と規範
効用主義・功利主義・パレート原理
均衡・効用・効率
2 人間像の諸側面
アルキメデスの点
効用主義の人間像
ストック概念としての道徳的人格
3 社会契約と正義原理
4 ロールズの政治哲学的転回
ロールズの変説
道徳的と政治的
ロールズ正義原理の方法論的性格
5 正義原理の制度的含意
重複する合意の内容
財産所有制民主主義
社会的共同資産
6 道徳的平等とは何か
第3章 自由と卓越
1 自由の哲学的基礎
人格概念の内実化
消極的自由と積極的自由の解釈
自由と人格
2 所在と所有
ノジックの自由至上主義
所有の主体としての人格
自己所有権と道徳的運・不運
総括
3 人格と共同体
埋め込まれた自我と共通善
社会契約主義・共同体主義論争の位置づけ
理論経済学・歴史派経済学の方法論争
テンニースのゲマインシャフトとゲゼルシャフト
共同体主義の価値体系
正と善の関係
4 徳の倫理学体系
積極的自由としての卓越
徳と内的善・外的善
物語的自我と伝統
徳の倫理学の3つの型
徳の倫理学の特徴と問題点
5 能力と卓越
6 卓越主義の構想
卓越主義の諸命題
卓越・自律・自尊・生き甲斐
卓越主義と自由主義
卓越主義の道徳的・制度的基礎
総括
第2編 制度
第4章 資本主義の倫理学
1 情報・誘因・所有のシステム
制度の倫理学
市場の構成要素と道徳的特性
ハイエクの情報システム論
ハイエク命題の位置づけ
所有権の倫理的基礎
所有的個人主義と所有的人格主義
2 競争とゲームの隠喩
ゲームとは何か
競争の倫理
競争の評価
ゲームの3要素
3つの人間関係
3 「記録」と卓越の倫理
4 「闘争」と正義の倫理
手続き的ルールの公平性
社会的ダーウィニズム
自己所有権の問題
5 「協調」と信頼の倫理
協調・信頼・共同体
信頼の社会学と経済学
市場社会・社会連合・組織体
道徳発達理論
信頼の普遍化
6 2つの資本主義レベル
第5章 民主主義の倫理学
1 私的空間と公共的空間
経済と政治
私的空間と公共的空間
公共的空間・私的空間・制度・個人モデル
2 資本主義と民主主義の結合と離反
民主主義の理念
政治制度を問う意味
資本主義と民主主義との相互関係
民主主義の理論的問題
3 「論理的」次元と価値多元性
アローの社会選択論
公正な多元主義
効率・自由・多様性
4 「機能的」次元と競争システム
シュンペーターの民主主義論
ヴェーバーの民主主義論
政治権力の解釈
政治における知識の問題
民主主義の成功の条件
5 「規範的」次元と公共的理性
公・私と官・民
正義原理と公共的理性
内省と合意
ロールズとハーバーマス
6 討議的民主主義の可能性
討議的民主主義の概念
互恵性・相互承認・可謬性
討議的民主主義の場としての世論と知識
成果としての文化多元主義
第6章 社会保障の倫理学
1 社会保障の理念的構造
問題の設定
社会保障とは何か
社会保障の目的
社会保障の理念的基礎(1)
社会保障の理念的基礎(2)
社会保障の内在的矛盾
資本主義と民主主義を媒介するものとしての社会保障
2 理念と制度との相関
福祉国家の倫理的基礎を問うことの意味
学派とレジーム
社会学的概念としての家族
3 4つの道徳哲学の福祉国家論
(1)功利主義と福祉国家
無知からの発想
功利主義の民主主義観と資本主義観
(2)社会契約主義の福祉国家論
総括
(3)自由至上主義と福祉国家
自由至上主義の資本主義観と民主主義観
(4)共同体主義と経済・政治制度
共同体主義と社会保障制度
総括と予告
4 家族・ジェンダーとケアの倫理
福祉国家の類型論
福祉国家類型論が提起する問題
家族・ジェンダー・フェミニズム
福祉国家類型論におけるジェンダー
シティズンシップ論におけるジェンダー
市場対家族
ケアの倫理学
フェミニズムの戦略とケアの倫理の一般化
5 シティズンシップと義務の倫理
権利の理論から徳性の理論へ
公民的徳性と自尊
シティズンシップにおける制度・行為・存在
6 「良き生」の文化価値
理念と制度の三次元的相関
ストック社会像の概念的枠組み
社会保障と「良き生」
第7章 社会保障改革の経済と倫理
1 福祉国家の危機とは何か
2 少子高齢化の本質
新しい人口現象の意味
基本的問題(1)
基本的問題(2)
以下の課題
3 「市場」・個人責任・社会責任
責任の概念
正義原理と責任の外部化・内部化
市場主義の偏見と卓見
市場化アプローチの評価
(1)ウェルフェアからワークフェアへ
(2)民営化
(3)インセンティブ・システム
4 「家族」・世代間正義・世代内正義
世代の概念
世代と家族
現実型としての社会保障における社会連帯
ライフ・サイクルと社会保障
賦課方式と積立方式
公正貯蓄の原理とストックの世代間継承
資本形成における世代間移転とライフ・サイクル貯蓄
資本主義と社会保障との整合化
5 「国家」・社会保険・社会扶助
6 ポジティブな社会保障
結語 正義と卓越の社会を求めて
経済の根底にあるもの
経済の究極にあるもの
正義と卓越の倫理学
補論 日本における経済哲学の源流――左右田喜一郎と杉村広蔵
1 2つの視点
2 左右田の文化価値主義
文化価値の経済哲学
認識目的としての文化価値
文化価値の根拠としての創造者価値
極限概念としての文化価値
3 杉村の経済哲学研究
経済学の方法
世界観としての経済性原理
社会倫理としての社会思想主義
4 ドイツ理念主義とシュンペーター
5 解釈と評価
注
事項索引
人名索引
■引用
■書評・紹介
■言及
*作成:樋口 也寸志