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『DVと虐待――「家族の暴力」に援助者ができること』

信田 さよ子 20020315 医学書院,190p.


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信田 さよ子 20020315 『DVと虐待――「家族の暴力」に援助者ができること』,医学書院,190p. ISBN-10: 4260331833 ISBN-13: 978-4260331838 1890 [amazon][kinokuniya] ※ m.

■内容紹介

書 名:DVと虐待――「家族の暴力」に援助者ができること
著 者:信田さよ子(のぶた・さよこ):原宿カウンセリングセンター所長/臨床心理士
仕 様:A5版、ヨコ組、並製、190ページ
定 価:1800円+税
発行日:2002年3月15日  ISBN4-260-33183-3

殴られている人は、なぜ自分が殴られていると思わないのか。
虐待された子は、なぜ親を慕いつづけるのか。
殴られた妻は、なぜ夫のもとにすぐ戻りたがるのか。
――DV・虐待の臨床現場は、こんな「謎」に満ちています。前作『アディクションアプローチ』(1999年、小社刊)で日本の援助論に新地平を切り開いた著者はこの謎と格闘し、やがて「当事者性の不在」というキーワードに辿り着きます。介入しようとする援助者の腰を引かせ自信を失わせるものもこの当事者性の不在にほかならないと述べ、そこに触れないアメリカのDV・虐待援助マニュアルは、だから現場で役に立たないのだと喝破します。

しかし本書は、このように「解明」して終わり、ではありません。とにかく目の前のクライエントをなんとかしなければならないと考える著者は、ここで逆に、「当事者性がないからこそ、外部から介入が必要なのだ」と言い切ります。
それを実現するための具体的方策が、本書の核をなす第V部「こう介入する」です。

最初に、「なぜ介入しなければならないのか」の理論的根拠を探り[介入@]、続いて被害者・加害者を問わず介入すべてに共通する基本的スタンスを述べます[介入A]。ここまでが総論です。
以下各論に入り、まずDVを中心に「被害者への介入方法」を〈発見〉〈分離〉〈教育〉の3項目に分けて解説します[介入B]。とくにカウンセラーならではの鋭い観察に満ちた「DV被害者はどのような顔をして登場するか」[p.87〜]は、前記した当事者性の不在というわが国の特徴を考えるとき、きわめて有用な指摘になるでしょう。
さて、「被害者を強制的に加害者から分離させる」ことの必要性は近年ようやく“常識”化しつつありますが、一方で「では加害者にはどうするのか」という問題は手つかずでした。そこで著者は、実際に相談を持ち込まれたある児童虐待事例を素材に、「加害者への介入方法」について詳しく論じます[介入C]。「子ども中心の発想が虐待を維持している」「いかに加害者を困らせるかがポイント」というように、従来の援助とはまったく正反対の、しかし目からウロコの解決策へと読者を導き出す手さばきは、スリリングとさえいえるでしょう。そして最後のまとめは、「これだけは覚えておきたい七箇条」[介入D]。

「味方になる(被害者にも加害者にも)」「第三者を登場させる(対の関係はあぶない)」「数と時間の効果(援助の質より仲間の数、仲間といる時間)」等々、本書には魅力的な考察が横溢しています。と同時に本書は、きれいごとを一切排した、日本の現場ですぐに役に立つ「DV・虐待援助マニュアル」でもあります。ここからも、従来切り離してしか論じられなかった「DVと虐待」あるいは「理論と方法」を統一的にとらえることなしに「家族の暴力の援助論」は構築できない、という著者の意気込みがうかがわれます。ぜひ本書を楽しみながら、DV・虐待援助のノウハウを得てください。

[編集担当]医学書院看護出版部:白石正明
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UP:20081102
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