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村上 薫 編 20020327 アジア経済研究所,217p. 2400 ・村上 薫 編 20020327 『後発工業国における女性労働と社会政策』,アジア経済研究所,217p. 2400 ・この本の紹介の作成:志方佳代(立命館大学政策科学部2回生) *構成* 序章 後発先進国における女性労働と社会政策 ―問題の所在と課題の設定― 村上薫 はじめに 第1節 社会政策とそのジェンダーバイアス:先進国研究の知見 第2節 途上国における社会政策のアプローチ 第3節 本書の視覚と考察の対象 おわりに 第一章 アルゼンチンにおける福祉国家と女性労働政策の変容 宇佐見耕一 はじめに 第1節 ペロン政権期の女性労働と社会政策 第2節 輸入代替工業の行き詰まりとネオ・リベラル政策 第3節 拡大する女性労働:柔軟化と不安定化 第二章 「よきメキシコ国民の一員」から「個人としての労働力」へ −メキシコ経済における女性労働の位置づけを手がかりに− 谷洋之 はじめに 第1節 メキシコにおける経済構造の変遷と女性労働力率の推移 第2節 米国型国民経済モデルと女性労働 第3節 逸脱としてのマキラドーラから経済の主軸としてのマキラドーラヘ むすびにかえて:労働の柔軟化と個人主義モデル 第三章 開発計画期トルコにおける女性の労働力化と社会政策 村上薫 はじめに 第1節 社会政策と女性の位置づけ 第2節 女性の労働力化過程と社会政策 おわりに 第四章 韓国におけるセウマル運動と農村女性の組織化と動員 ―1970年代を中心に― 横田伸子 はじめに:問題の提起 第1節 セウマル運動の背景と開発体制の構築 第2節 セウマル運動の推進体制と農村女性の組織化 第3節 農村マウル女性組織の活動領域 第4節 結論と課題 第五章 華南における女性労働力化と社会政策 沢田ゆかり はじめに 第1節 香港の女性労働力の推移 第2節 珠江デルタの女性労働力化 第3節 産業空洞化と女性労働力 <序章> 欧米先進国の社会政策は、家族という単位や、そこで行われる生計維持者の夫と家庭責任者の妻という近代的成分業を制度化する立場をとるものである。そうした社会政策は既婚女性を家庭役割への専従ないし家庭役割と両立可能な就労形態へと誘導する効果を持つものである。これは近代以降の成果が示唆するのは、近代以降の社会変動の中で、家庭のありように変容をもたらした要因として、産業化とともに、国家の政策的な介入が合ったことが重要な視点である。国家は社会政策を通じてどのように「家族」を把握し、その構成員に対してどのような役割を果たしてきたか。本書ではこのような問題意識を出発点とし、いくつかの途上国の事例について社会政策が前提とする家族・ジェンダーモデルを明らかにし、この社会政策が女性の労働力家庭に及ぼす影響を検討している。 先進国の社会政策は、歴史的には19世紀の終わり頃に登場し、20世紀に入ると、総力戦を戦い抜くための大衆動員の手段としての性格を獲得した。次に、福祉国家形成への道を歩み、しかし、1970年に入ると、「福祉国家の危機」説が提出され、小さな政府主義のもと、福祉政策で補っていた家庭の負担は、補助をなくすとともに、家庭の女性へと向かうこととなった。欧米先進国では近代的性分業を行う家族が労働者階級の間で成立し、そのような労働者家族を維持し、補強するために社会政策が導入されたが、これに対し、後発工業国では、国家主導で先進国に追いつくために工業化が急速に推進されたが、そのため、しばしば、労働者階級の形成と社会政策の導入とが同時に進行することとなった。急速な産業化を進める中でどのような社会政策が、家族にどのような社会的介入をすることとなったのかが問題である。また、欧米諸国と違い、労働階級の形成と社会政策の導入が同時に進められたことで、無理が生じやすくなる点も留意すべきだ。さらに、家族のあり方や再生産労働(家事・育児・介護)の担い手をどのように変化させたのかに注目している。 <第一章 アルゼンチンにおける福祉国家と女性労働政策の変容> 福祉政策を推し進めたペロン政権下、女性は一方で男女平等を形式的には保障されながらも、同時に家庭責任同時に持たせるという二重責任を負わされていた。やはり家庭責任を負うべきであるとされており、現実にはやはり家庭に縛られるものとなっていた。女性の労働力かは25%前後で中心は未婚女性であった。また、労働・社会保障法の中においても、家庭における再生産の担い手として中心的役割を果たすことを期待されていた。また、夜間の労働の規制、法律上、子どもと同じ扱いを受けるなどもしていた。1990年に入ると、大量失業などの社会的状況の変化から女性の労働力化は全世代について確認されたが、やはり20歳から34歳の再生産年齢ではのびず、育児が労働の障害となっているようだ。また、中流層以上の労働力化率の上昇が見られる。これは公的社会保障に依存しているから中流層が労働力化しやすくなったということではなく、私的に使用人を雇い労働に出ていることを示す。これは、低所得層女性への再生産労働(育児、介護など)のシフトを示す。階層によって女性の就労率の不平等が生じている。 <二章 「よきメキシコ国民の一員」から「個人としての労働力」へ> 元来メキシコでは女性は近代的意味での労働ではないが、農業的な労働には少なからず携わっていた。次期においては男性労働力を近代部門に引き出し、その獲得賃金と福利厚生によって近代的性分業を特徴とする家族が生活を営むと言う構図が企図されはじめた。輸入代替工業化を軸に経済発展が図られその成果が国家によって配分されるのである。その配分、恩恵を受けた人が「よきメキシコ国民」の一員として、さらにメキシコ社会に貢献するという構図が子の時期には為政者によって描かれた。しかし、1960年代に入るとこの体制は行き詰まりを示し、1982年になると対外債務危機で最終的に瓦解した。これを契機として、個人主義が台頭するのである。そしてこの第三期「個人主義モデル」において、法改正で女性は家庭から解き放たれることとなる。こうして、マキラドーラにおける労働力の男性化、「女性が男性と同様の条件・資格のもとに家庭の外で就業する」ことが可能になった。これが、「男性であれ、女性であれ、成員全体の所得合計で家計が維持できればそれでよい」という型を設定した。メキシコが男女機会均等において、かなりの成果を出したことは間違いないのである。 <第三章 開発計画期トルコにおける女性の労働力化と社会政策> 1960年代から1970年代に着目し、経済政策が要請する良質な労働力の安定した供給のための制度的な枠組みのために、近代家族型の家族が労働力再生産の基礎単位とされ、その維持のために近代的家事と育児の実践者として主婦の育成がはかられた。この時期には、コストカットのため女性の労働力を低賃金で国家が買い受けたが、女性は働くことを続けるには家庭の仕事をする労働力を安い賃金から捻出しなければならず、これらの女性公務員は結婚と共に退職せざるをえない場合が多かった。これに対して国家は女性が働きやすいような場を提供することがなかったことが問題であろう。 <第四章 韓国におけるセウマル運動と農村女性の組織化と動員> 1970年代の韓国農村で、開発主義と利害を同じくした女性をマウル毎に上から組織し、家庭領域と家族管理者として家庭に閉じこめられていた女性を生産力として、動員し得たことは韓国経済が発展する上での大きな動力となった。産業化過程で国家が負担しなければならない再生産分野や福祉体制構築にかかる費用は、個々の家庭において、セマウル運動の農村女性の自己犠牲的な不払い労働に転じたのである。それまでの家庭管理者という役割に加えて、地域社会の管理者、生産者の役割も果たさざるをえなくなり、その負担は大きく飛躍的に増大したことも留意しなければならない。 <第五章 華南における女性労働力化と社会政策> 経済のグローバル化は、華南の女性に多大な影響を及ぼした。中国への生産地移転によって、香港の製造業は空洞化が進んでいった。1997年のアジア通貨危機の前から、女性の貧困化が発展していた。従来福祉に弱い香港では、就業が唯一の防衛手段であったが、正規雇用の喪失を契機として、就業しながらも合理的な生活水準を達成できない就業貧困層が誕生する。そのうち女性の占める割合は83.3%で(97年第3四半期)ある。ししかし、これに対して政府は何らかの保障策を打ち出すことはなかったのである。また、広東省でも、出稼ぎ女工の生活は必ずしも法律で保障されていない。彼女たちは市場の変化の調整弁としてその圧力に耐えなければならない。急激なグローバル化に対して、香港でも、中国でも政府のプレゼンスは希薄である。グローバル化による経済状況の変化に対しては、保障策が必要であるはずだ。香港、中国両政府は民間の活力に任せるのではなく、社会保障制度を整え、介入を行うべきである。 <感想> 女性は家庭を守って当然であるという考え方は女性の可能性を大きく狭めることになっているのは明白な事実である。しかし、昨今男性が家事負担をもっと担うべきという考え方は出てきてはいるが、現実としてまだまだ女性の負担は大きい。二重責任がのしかかる上に、もし職に就いても差別は存在する。先進国であってもこのような状況である。これらの事実は誰もが知っていることではあるが、その背景には社会政策が存在することをこれまでははっきりと認識していなかった。このことによって、根本の問題に直面し、問題点とその原因のプロセスを掴みやすくなった。さらに、ジェンダー的観点から、社会政策を吟味し、社会の構成、家族とは何か、また、家族のありかたを問い直す良い機会になった。また、様々な後進開発国の激動期の女性労働者に対する労働への国家介入の違いや、問題点が見ることができ、より雇用形態や労働について関心が高まった。 UP:20040210 ◇2003年度受講者作成ファイル ◇2003年度受講者宛eMAILs ◇BOOK TOP(http://www.arsvi.com/b2000/0203mk.htm) HOME(http://www.arsvi.com)◇ |