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『経済学とジェンダー』

久場 嬉子 監修/編,梅沢 直樹・山森 亮・新井 美佐子・竹中 恵美子・河内 優子・石塚 浩美・白石 弘子・若森 章孝 20020329 明石書店,叢書,現代の経済・社会とジェンダー,第1巻,257p.

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last update:20161018

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■a href="../w/ky04.htm">久場 嬉子 監修/編,梅沢 直樹・山森 亮・新井 美佐子・竹中 恵美子・河内 優子・石塚 浩美・白石 弘子・若森 章孝 20020329 『経済学とジェンダー』,明石書店,叢書,現代の経済・社会とジェンダー,第1巻,257p. ISBN-10: 4750315540 ISBN-13: 978-4750315546 3,800+ [amazon] [kinokuniya]

■内容

■目次

第1部 ジェンダーと「経済学批判」
 第1章 ジェンダーと「経済学批判」[久場嬉子]
 第2章 女性労働差別問題とマルクス派社会経済学の再構築[梅澤直樹]
 第3章 合理的経済「男」を超えて[山森亮]
 第4章 労働市場の分断と女性労働[新井美佐子]
 第5章 家事労働論の現段階[竹中恵美子]
第2部 生産・社会的再生産・ジェンダー
 第6章 人口問題と女性労働[河内優子]
 第7章 「女性労働政策」の効果はどのように変わったか[石塚浩美]
 第8章 女性労働の国際比較[白石弘子]
 第9章 フォーディズム・ポストフォーディズム・女性労働[若森章孝]


久場 嬉子 20020329 「ジェンダーと「経済学批判」」
 久場編[2002:017-050]
◇梅沢 直樹 20020329 「女性労働差別問題とマルクス派社会経済学の再構築」
 久場編[2002:051-074]
山森 亮 20020329 「合理的経済「男」を超えて」
 久場編[2002:075-96]
◇新井 美佐子 20020329 「労働市場の分断と女性労働――二重労働市場論・SSAアプローチ・レギュラシオン理論を中心にして」
 久場編[2002:097-120]
竹中 恵美子 20020329 「家事労働論の現段階――日本における争点とその特質」
 久場編[2002:121-152]
◇河内 優子 20020329 「人口問題と女性労働――人間の再生産とジェンダーに関する一考察」
 久場編[2002:155-184]
◇石塚 浩美 20020329 「「女性労働政策」の効果はどのように変わったか――夫婦単位から個人単位へ」
 久場編[2002:185-208]
◇白石 弘子 20020329 「女性労働の国際比較――日本とオランダのパートタイム就労と雇用・社会保障」
 久場編[2002:209-228]
◇若森 章孝 20020329 「フォーディズム・ポストフォーディズム・女性労働――社会的レギュラシオンの視点から」
 久場編[2002:229-253]

■概要

◆「ジェンダーと「経済学批判」」 久場 嬉子著 17-50
 1はじめに――経済学とジェンダー視点
 2「経済的行動主体」モデルとジェンダー・バイアス
 3「ブラックボックス」を開ける――家族と世帯の経済学をめぐって
 4ジェンダー平等の経済社会構想へ向けて

◆「女性労働差別問題とマルクス派社会経済学の再構築」 梅沢 直樹著 51-74
  *滋賀大学経済学部教授
 1はじめに
 2女性労働差別問題のマルクス経済学へのインパクト
 3価値・生産価格論のポテンシャル
 4市場経済システムと不等価交換の状態性
 5総括と展望
  「差別を帰結するような物差しを許容する懐の深いシス(p.68)テムとしてそうした女性の物差しを喜んで受け入れているという構図である。したがって、問題はその何らかの事情、つまり女性がなぜそうした物差しをそれなりの合理的なものとして受け入れているのか、そうした女性の判断の背景にあるものは何かということになる。そしてその答えは、さしあたり家父長制的イデオロギーに求められよう。」([68-69])

◆「合理的経済「男」を超えて」 山森 亮著 75-96
 1問題の手前で
 2「合理的な愚か者」
  (1)いくつかの批判
  (2)「合理的な愚か者」
  (3)コミットメントと行為主体
 3フェミスト経済学
  (1)「フェミニスト経済学」とは何か
  (2)「合理的経済『男』を超えて
 4フェミニスト経済学とセン
  (1)欲求と必要
  (2)その他の繋がり
 5終わりに

◆「労働市場の分断と女性労働――二重労働市場論・SSAアプローチ・レギュラシオン理論を中心にして」 新井 美佐子著 97-120
 1Doeringer-Pioreによる二重労働市場論
 2SSAアプローチにおける分断分析
  (1)SSAアプローチの分断観
  (2)SSAアプローチによる女性労働分析
 3アメリカ・フォーディズムと女性――レギュラシオン理論による論考
  (1)レギュラシオン理論とは
  (2)アグリエッタによるアメリカ・フォーディズム分析
  (3)レギュラシオン理論の女性労働分析に残された課題

1Doeringer-Pioreによる二重労働市場論
 Doeringer, P. B. & Piore, M. J.
 OJT〜企業内内部労働市場*/外部市場
 *「行列の理論」 確率的に女性の方が勤続年数が短い
 「女性は、男性よりも勤続年数が短いという統計データを根拠として行列の下位に置かれやすく、企業内内部労働市場へのアクセスを制限されている。結果、女性は第2次市場に多く集まることとなり、それが性別労働条件格差の一因になっているという。そして、女性の勤続年数が短い理由として、女性、わけても子をもつ既婚女性が、賃金取得よりも家族のケアを優先するためだと論じている。すなわち、彼女たちは「家族に緊急事態が生じた際は遅刻や欠勤が許されるような職を求めて」3)おり、また出産を計画したり、ある程度家計が潤ったら、仕事をやめることを希望しているというのだ。そしてそのような労働スタイルは、女性が自らの賃金を家計の主たる稼得者である夫の賃金の足しとして位置づけているからだと説明されている。」(新井[2002:99])
3):Doeringer & Piore[2002:170]
 「次の2点を重視しておきたい」
 1)家族のケア
 2)自発的であるかのように捉えられている
 ※もっともな話(このように二重労働市場論は紹介されてきたのか?)

Doeringer, P. B. & Piore, M. J. 1971 Internal Labor Market and Manpower Analysis, D. C. Heath

2SSAアプローチにおける分断分析
 (1)SSAアプローチの分断観
 SSA=社会的蓄積構造
 (2)SSAアプローチによる女性労働分析

文献:ゴードン他『アメリカ資本主義と労働――蓄積の社会的構造』,東洋経済新報社→品切?

3アメリカ・フォーディズムと女性――レギュラシオン理論による論考
  (1)レギュラシオン理論とは
  (2)アグリエッタによるアメリカ・フォーディズム分析
  (3)レギュラシオン理論の女性労働分析に残された課題

文献:アグリエッタ『勤労者社会の転換』,日本評論社会→品切?

「本稿で考察したD−Pやアグリエッタもまた、性労働条件格差の要因をせんずるところ性別分業に基づく女性の家事労働負担に求めている。そうなると、今度は性別役割分担が何に依拠するのかという疑問が生じてくるのだが、その点に関してはD−P、アグリエッタを含め、あらゆる経済学アプローチがこれまで不問に付してきたように思われる。」(p.118)

◆「家事労働論の現段階――日本における争点とその特質」 竹中 恵美子著 121-152
 1はじめに
 2家事労働論の国際的流れ――労働からケアへ
 3日本における家事労働論とその特質
  (1)特質とその背景
  (2)90年代の論争――なぜ家事労働は無償か――中川・大沢論争を中心にBR>   (3)「家事労働の経済学」をめぐって――安川・久場説を中心に
 4日本におけるアンペイド・ワーク(UW)議論の問題点

 1はじめに
「女性抑圧の物質的基礎の解明からスタートした家事労働論は、男女の実質的平等が実現される社会システムに向けて、家事労働の社会・経済的評価を通じてそのUWの社会的大きさを明らかにすると(p.122)とともに、ペイドワーク(Paid Work - PW)とUWを男女に公平に配分するための制度・政策課題を明らかにしつつある。」(pp.122-123)

文献:久場嬉子・竹信三恵子 1999 『家事の値段とは何か』,岩波ブックレット473 品切?

 3日本における家事労働論とその特質
  (2)90年代の論争――なぜ家事労働は無償か――中川・大沢論争を中心にBR>
 「労働力の価値の中には、主婦役割を担う妻の生活費は含まれるが、膨大な家事労働は無償である。この無償の家事労働は、直接的には夫が領有することになるが、資本−賃金労働関係の中では、究極的にはこの不払い労働部分は、資本の剰余価値として領有されるという構造になっているというべきであろう。
 なお、家事労働の無償性の原因を「カップル単位」制に求める伊田広行氏の主張があるが、「カップル単位」という言葉の新しさは別として、何故カップル単位となるのかは、家父長制によってしか説明されていない。その意味で伊田説は、C.デルフィや大沢説と軌を一にしていると言ってよいであろう53)。
 […]
 53)なお伊田説への批判は、前掲拙稿(注1)、183-184ページ、を参照されたい。」(p.137)
 *前掲拙稿=

◆「人口問題と女性労働――人間の再生産とジェンダーに関する一考察」 河内 優子著 155-184

◆「「女性労働政策」の効果はどのように変わったか――夫婦単位から個人単位へ」 石塚 浩美著 185-208

◆「女性労働の国際比較――日本とオランダのパートタイム就労と雇用・社会保障」 白石 弘子著 209-228

◆「フォーディズム・ポストフォーディズム・女性労働――社会的レギュラシオンの視点から」 若森 章孝著 229-253

 「19世紀の近代家族は中産階級だけのものであり、労働者の家族には妥当しない。近代家族の特徴が労働者の家族にまで大衆化するのは、20世紀におけるフォーディズムの生成と発展を通じてである。」(p.239)

 「家庭用耐久消費財の販路を拡大するという戦略的意図のもとに、「物質的フェミニズム」による家庭内労働の社会化の運動を挫折に追い込んだ1920年代の歴史と、1929年の大恐慌の後の1930年代のニューディール期に国家と資本の側が女性に求めた新しい役割とが、顧みられねばならない30)。[…]
 30)物質的フェミニズムの盛衰とその意義については、ドロレス・ハイデン(野口美智子他訳)(1985)『家事大革命』勁草書房が是非とも参照されるべき研究である。」(p.241)

■書評・紹介

■言及



*更新:焦 岩
UP: 20051015 REV: 20161018
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