HOME > BOOK >

『世界がどんなになろうとも役立つ心のキーワード』

香山 リカ 20020210 晶文社,262p.


このHP経由で購入すると寄付されます

香山 リカ 20020210 『世界がどんなになろうとも役立つ心のキーワード』,晶文社,262p. ISBN-10: 4794965192 ISBN-13: 978-4794965196 \1680 [amazon][kinokuniya] ※

■広告

・(「BOOK」データベースより)
コンプレックス、強迫神経症、パニック障害、境界例、ひきこもり…心についての不安をみんなが抱えて生きている時代。「私ってうつ病?」といった病に関する不安から、「人と会うのが怖い」「何に対してもやる気がおきない」といった漠然とした悩みまで、心の不安の種はつきない。でもいたずらに不安がることはない。心についての必要最小限の知識があれば、みんなもっと楽に生きられるはず。「心の時代」を象徴するさまざまなキーワードについて、心の問題の専門家・香山リカがかみくだいて解説。同時多発テロ事件が起き、世界が大変な状況になっても、普通の人が必要としている精神医学や心理学の知識、治療法は変わらない。世界がどんなになろうとも、明日元気に生きていくために読んでもらいたい、悩める人々に贈る、心の時代のキーワード集。

・(「MARC」データベースより)
コンプレックス、強迫神経症、パニック障害、境界例、ひきこもり…。様々な不安を皆が抱えて生きている時代でも、心についての必要最低限の知識があればもっと楽になる。香山リカが悩める人々に贈る、心の時代のキーワード集。

■目次

まえがき
1.心について知っておきたい基礎的なこと
 コンプレックス・神経症・強迫・対人恐怖症・精神科/神経科・境界例・境界例(治療)・原光景・喪の作業
「香山ココロ週報」の日記から 2000年7月〜10月
2.時代を映す鏡となる病
 解離性障害・同一性拡散・過食・パニック障害・醜形恐怖症・恋愛妄想・事故頻発人格・女性の周期的気分変調・季節性感情障害
「香山ココロ週報」の日記から 2000年11月〜2001年2月
3.心の病が生んだ社会現象
 ひきこもり・世代間境界・早じまい感覚・泣きじゃくり・父の娘・愛他主義・命日反応・児童虐待・ドメスティックバイオレンス
「香山ココロ週報」の日記から 2001年3月〜6月
あとがき

■引用

私はそのとき、「金日成死去は世界的な大問題だが、それで現実の次元の問題や悩み、病気が消えてなくなるわけではないのだ」というごくごくあたりまえのことを、身を持って実感したのだった。
そしてそういった現実の中でのさまざまな問題に対処するために、たとえどんな世の中になろうと知識や治療の技術などは変わらず必要となる。
金日成が亡くなっても、うつ病がなくなるわけではない。
そのことを私は、もう一度、改めて思い出した。
今だって、基本的にはそれと同じ。世の中がどうなろうと、必要な精神医学や心理学のキーワード、知識、治療法などは、変わることなくあるはずなのだ。p.8-9

・コンプレックス
私たちがふつうに「私のコンプレックス」と言うときは、いちいち無意識のことまで考えるわけにもいかない。だからいつのまにか、無意識の問題とは関係ない具体的な短所や欠点のこともコンプレックスとひとことで表すようになったわけなのだろう。
このように、最初は無意識と深く関係した精神分析のことばだったのに、いつのまにか本来の意味をすっ飛ばして表面的な現象を指すために使われたり、一部が省略されて日常語になったり、まったく誤った意味のまま流通したりすることは、けっこうよくある。ヒステリー、アダルト・チルドレン、自閉症などもその例だ。p.18

・境界例
境界例の人たちのいちばんの問題は、そういった自分の「不安定さ・変わりやすさ」を時として苦痛に感じるということだ。「いったいどれが本当の私の気持ちなのだろう」「結局のところ、私は明るい人間なのだろうか、それとも暗い人間なのだろうか」「5年後に私はどうなっているのだろうか」「私のまわりの人たちで本当に信頼できるのはだれなんだろう」……。自らの「不安定さ」が招いた揺れ動く状況の中で、彼らはしばしば「本当のもの」に激しくすがりたくなり、それが見つからずにパニック状態に陥ったり生きる希望がなくなるほど絶望してしまったりする。「不安定な波が押し寄せても、うまくサーフィンしていくさ」といった気楽さが持てないのも、また彼らの特徴だと言えるだろう。
では、うまく自分を変化させながら現代社会を泳いでいくのにはある意味、とてもマッチしているこの境界例の人たちが、苦痛を感じることなく、まわりの人たちも巻き込んでトラブルを起こすことなく生きていくためにはどうしたらよいだろう?p.39
境界例について話をすると、多くの人が「これって私のことじゃない?」「ぼくの彼女にそっくりだ」などと言い出す。でも、これはそれだけの病気の人が多い、という意味ではない。逆に、境界例が今や現代人のスタンダードな性格の特徴になりつつある、ということを表していると考えてもよいだろう。p.40
いずれにしても、問題は本質的には解決していないことは明らかだ。もし、友人にしろ恋人にしろ、自分以外のだれかが不安定さを自分にかわってすべて抱えてくれたとしても、それはかりそめの安心にしかすぎない。(…)だから、境界例の人にとっていちばん大切なのは、しがみつける相手を探すことではなくて、自分で自分を支え、慰める力をつけること、それに尽きるのだ。ことばをかえれば、「心の容器を少しでも大きくし、薄い壁をきたえること」となるかもしれない。p.42-43

・泣きじゃくり
「ひきこもり」も同じだと思う。「ひきこもり」という絶妙なネーミングができたから「あの人もこの人もひきこもりだ」と診断が乱発されたのではなくて、そういう若者たちがすでにかなりの数、存在しており、彼らのことをひとことで言い表すために「ひきこもり」という名前ができた。あくまで、現象が先にあって名前はあと、こう考えた方がよいだろう。
しかし、「ひきこもり」という名称を与えたはよいが、今度は「ではどうして、そういう人たちが全国で同時多発的に現れ、その数を増しているのか?」という新たな問題が浮かび上がってきた。そして、それについてはまだ決定的な説明はされていない。p.198

・4月22日(日)
今回は「とんでもない女たち」というテーマだったのだが、最初のパートに出てきた、「かたづけられない女」というのはほとんど私のことみたいだった。p.241
なぜかたづけられないか。なぜ待ち合わせ時間に遅れてしまうのか。なぜやろうとしていることを先のばしするのか。
これらは一言でいえば「だらしない」ってことにほかならないのだが、中には「やるからにはちゃんとやらなきゃ。ハンパにやるくらいならまったくやらない方がまだマシ」という完璧主義者の人も、けっこういる。(…)こういう“完璧主義者”たちは、もちろん他人からはそれを理解してもらえない。「いつもサボってばかりいて、本当になまけもの」なんて評価をされる。すると「よし、次には完璧なワタシを見せてやる」と気負うばかりで、ますます気軽にレポートを提出したり会合に顔を出したりできなくなるのだ。
また一方で、そういう人たちは「自分はどう見られているか」に強いこだわりを持っているのだろう。ハンパな自分を見せて、落ち度を指摘されたり笑われたりするのは、その人たちにとっては致命的。(…)そしてもちろん、かたづけられない私、約束を守れない私は情けない、と思って自分をいつも責めている。とてもとても生きづらいはず。
そういう人には、とにかくハンパな形でも何かを成し遂げればそれなりに達成感や喜びはある、という“良い経験”を積んでもらうしかない。p.242

・5月10日(木)
みんなが精神医学や心理学に関心を示したからといって、それは正しい分析や解釈を知りたいからということではない。では、われわれは精神医学に何をしてもらいたいと思っているのか。斉藤氏の言葉を引用したい(引用元は地方新聞の斉藤環氏のコラムらしい:引用者)
「われわれが求めているのは、異様な事件をめぐるリアルな驚きであり、その驚きを増幅してくれる過剰な解釈、すなわち『物語』なのかもしれない。」「われわれは事件の周辺情報からパズルのように解釈を進め、そこから社会病理や現代病理という大きな問題、すなわち『物語』を導き出すことの快楽を知ってしまった。」p.248
物語を探し当てるのが快楽であるとしたら、たしかに私たちはいくら「原因は脳の発達障害にあっただけで、バーチャル環境の増大や母子密着といった物語がそこにあったのではないですよ」と言われても、そんな“真実”に見向きもしないだろう。(…)
つまらない真実よりも、魅力的な物語を。
斉藤氏は「(われわれは)精神医学がまず医学であること、正確な診断と有効な処方箋が出せなければ価値はないことを、せめて忘れずにおきたいものだ」と言う。それくらいで私たちは「なんでも物語にしたい。よりドラマチックな方がいい。」という自分たちの欲望をコントロールすることができるのだろうか。p.249

■書評・紹介

■言及



*作成:山口 真紀
UP:20090625 REV:
身体×世界:関連書籍  ◇BOOK
TOP HOME(http://www.arsvi.com)