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『ガキの自叙伝』

稲盛 和夫 20020115 日本経済新聞社,247p.

last update:20140127

稲盛 和夫 20020115 『ガキの自叙伝』,日本経済新聞社,247p. ISBN-10:4532164044  ISBN-13:978-4532164041 \1400+税 [amazon][kinokuniya]  ※

■内容

商品説明
「稲盛さん、若いのにあなたにはフィロソフィがある」。これは、京セラを一代で築き上げた現名誉会長、稲盛和夫がサラリーマン時代に大学の恩師の知人、吉田源三(当時三井物産のニューヨーク支店長)に言われた言葉である。
この言葉が示すように、稲盛和夫は哲学の人であり、本書ではその哲学が個人から同僚へ、従業員へ、出資者へ、そしてやがては企業グループ全体に浸透していく様子をうかがうことができる。取引先の信頼にこたえるべく仲間を説得し、スト破りをしてまで生産を続けた松風工業時代、「26、7の若造に何ができる」と一喝されながらも技術にかける情熱を伝え、出資を取りつけた創業時代、あまりのハードワークに反乱を起こした若手とひざをつき合わせて語った創業3年目、深夜まで現場の技術者につき添ってIBMの厳しい検査をクリアした「京セラサブストレート神話」の時代、そして海外展開、多角化の時代――。いつの時代も京セラの発展を支えていたのは、稲盛和夫の哲学だった。

タイトルは「ガキの自叙伝」となっているが、内容は、日本経済新聞に掲載された「私の履歴書」を大幅に加筆修正したものである。人を動かし、企業を動かす哲学の重要性を感じさせる1冊だ。(土井英司)

内容(「BOOK」データベースより)
ひと好き、しごと好き。落ちこぼれ、挫折を重ねた男が世界の京セラ、KDDIを創った!日経連載「私の履歴書」待望の単行本化。

■目次

まえがき
挫折越え夢追う


三時間泣き
ガキ大将の目覚め
弱気の虫が不運呼ぶ
焼け跡行商
罪滅ぼしの友情

II
おんぼろ会社
転職かなわず
対立、決断
血判の誓い
若手の反乱
闘争心、涙
全員が経営者
能力は無限
人間流の経営
経営はマラソン
オイルショック直撃
多角化は茨の道
神が与えた試練
地球にやさしく
ソ連へ
助けたい一心で
人類の未来を願って
逆境に武者震い
悔しさをバネに
利他の心で

III
フィロソフィを活かす
真の京都人に
国を越えて
盛和塾
KDDI誕生
家族に支えられ

年譜

■引用

◆才能に乏しくても熱意があれば人に伍していけるはずだ。しかし、それ以上に大切なものがある。心の様相だ。心が呼ばないものが自分に近づいてくることはない。人生は心に描いた通りになる。ひたすらそう考えてきた。[2002:13]

◆…研究に没頭しようと気持ちを百八十度切り替えた。…朝から深夜まで実験づけの生活に自分を追い込んだ。すると、不思議なことに、すばらしい実験結果が出るようになってきた。/いい結果を出すと、上司にもほめられる。仕事がおもしろくなって努力するとまたいい結果が出る。すると役員まで声をかけてくれるようになり、それを励みに努力を重ね、また高い評価を受ける。…心の持ち方を変えた瞬間、私の人生は転機を迎え、好循環がうまれだした。[2002:53-54]

◆「もし、自分の技術者としてのロマンを追うためだけに経営を進めれば、たとえ成功しても従業員を犠牲にして花を咲かせることになる。だが、会社には、もっと大切な目的があるはずだ。会社経営の最もベーシックな目的は、将来にわたって従業員やその家族の生活を守り、みんなの幸せを目指していくことでなければならない」。…この体験から、私はこんな経営理念を掲げるようになった。「全従業員の物心両面の幸福を追求する」。…/それでも、まだ何か足りない気がした。自分の人生は、従業員の面倒をみるだけで終わってよいのだろうか。自分の一生をかけて、社会の一員として果たすべき崇高な使命があるはずだ。そこで生涯をかけて追い求める理念として、後に「人類、社会の進歩発展に貢献すること」と付け加えた。経営理念は、全社員が共感し、心から納得できる普遍的な価値観に根ざしていなければ意味がない。この経営理念を確立したことは、会社経営の確固たる基盤となり、後の私の人生観のなかで大きな位置を占めることになる。[2002:76-77]

◆…私は個人の能力を最大限発揮させ、みんなが生きがいを持って働けるようにするには、どうしたらいいか考えた。思案の末、創業時に戻ればいいと思い当たった。全員が経営者になるのだ。全体を工程別、製品群別にいくつかの小さな組織に分け、それぞれが一つの中小企業のように経営を任され、独立採算で運営するのだ。/その小集団は、固定したものではなく、ひとつひとつが環境の変化に適応して、自己増殖していくため、アメーバと名付けられるようになった。会社が大きくなっていっても、事業の目的に沿って、独立採算が成り立つように組織を分ければ、中小企業の経営者のように経営者意識を持ったリーダーや社員が輩出してくる。さらに、アメーバ全員が、自らのアメーバの目標を把握し、その達成に向けてそれぞれの立場で努力することで、個人としての能力も向上し、生きがいを持って働けるはずである。/だが、そのためには、会社が普遍的な経営哲学を持つことが前提となる。京セラの経営理では、会社は一部の人のためでない、パートナーである全従業員のためのものだ。だからこそ、社員は積極的に経営に参加し、業績を向上させるため一生懸命努力することができるのだ。/さらに、私は「思いやりの心、利他の心」を持つことが重要であると社員に説いている。徹底した独立採算により、各アメーバは必死になって採算を上げようと努力するが、…利己的な意識が芽生えると、アメーバ同士の足の引っ張り合いが始まり、ついには会社が内部崩壊してしまう。各アメーバが相手のことを思いやりながら、正々堂々と競い合ってこそ、アメーバ経営は真の意味で成功するのだ。/そういう利他の哲学に立脚しているので、アメーバ経営では、好業績を上げても、それがすぐに給与に反映される仕組みにはなっていない。立派な業績を上げるということは、それだけみんなのために貢献したということであり、すばらしい業績を上げたアメーバに対して与えられるのは、名誉と誇りである。みんなのために貢献したという満足感と、信じ合える仲間から寄せられる感謝や称賛こそ、人間が得られる最高の報酬である。[2002:90-92]

◆…八四年に財団法人、稲盛財団が発足、「京都賞」の創設を決めた。京都賞を創設するについて私は二つの理由を挙げた。一つは、…「人のため世のために尽くすことが人間として最高の行為」という私の人生観だ。…/二つには、人知れず努力をしている研究者にとって、心から喜べる賞があまりにも少ないことだ。立派な研究をするような人は、世間に知られることもなく、生涯を通じて地味な研究に打ち込んでいる。そういう人を顕彰することで、今後の研究の励みにして欲しいと考えたのである。/この京都賞を受賞される資格者は、謙虚にして人一倍の努力を払い、道を極める努力をし、己を知り、そのため偉大なものに対し敬虔なる心を持ち合わせる人だ。さらに、その業績が、世界の文明、科学、精神的深化のために、大きく貢献した人である。…対象は先端技術、基礎科学、精神科学・表現芸術(現在では思想・芸術)の三部問。賞金はノーベル賞に近い一部門四千五百万円(現在は五千万円)に設定した。科学技術と精神面の両者がバランスよく発展してこそ人類の未来がある、というのが私の考えだ。科学の急速な発達に比べ、精神面の研究は大きく後れをとっている。ものごとには陰と陽、明と暗、プラスとマイナスと必ず二面の世界がある。この両面がバランスよく解明され、発展してこそ全体としての安定がもたらされるはずだ。[2002:165-166]

■書評・紹介

■言及




*作成:片岡稔
UP:20140109 REV:20140123 0127
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