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『人身売買と受入大国ニッポン――その実態と法的課題』

京都YWCA・APT(Asian People Together)編 20011210 明石書店 1800



■京都YWCA・APT(Asian People Together)編 20011210 『人身売買と受入大国ニッポン――その実態と法的課題』,明石書店 1800
・この本の紹介の作成:峠美千久(立命館大学政策科学部4回生)

まえがき―人身売買とはなにか、人身売買の定義、本書作成の参加者について
第1章 人身売買―その実態―
 はじめに
 1実態――三カ国のケース
 2聞き取り
  インタビュー
 資料
第2章   人身売買の禁止に関する国連の取り組みと日本の課題
 はじめに
 1国連における人身売買の根絶に向けた取り組み
 2人身売買禁止議定書の意義と概要
 3日本が守る義務のある慣習国際法規と人権条約の概要
 4人身売買の根絶にとって特に重要な条約
 おわりに
 資料
第3章   人身売買の加害者取り締まりに関する国内法制度と問題点
 はじめに
 1人身売買
 2人身売買にともなって生じる違法行為の禁止
 3売春の強制(強姦)の禁止
 4売春の強制(強姦)にともなう違法行為の禁止
 資料
第4章 人身売買被害者の保護に関する提案
 はじめに
 1人身売買被害者に対する救済の現状
 2人身売買被害者保護コーディネートセンター
 まとめ
 資料
あとがき

本書の目的
1980年以降、主にアジアから多くの女性たちが日本の風俗産業に送り込まれている。日本への人身売買の実態の一端を紹介した上で、これを犯罪とみなし、この犯罪の予防と被害者保護のための方策を法的側面から検討することを目的としている。

* 引用部分は【頁】で表す。

まえがき

1.人身売買とはなにか
「人身売買」という言葉を聞いて日本に住む私たちが思い描くのは、貧しい農村の娘が親の借金のかたに身売りを余儀なくされ、住み慣れた村を離れ、見知らぬ土地で前借金に縛られながら遊郭で働かされるという戦前の状況である。現在でもこのようなケースが多数存在することは事実である。
今日の人身売買の構図は、経済開発から取り残されたアジアの貧しい農村の娘が、家族の生活を支えるためにだまされて日本に連れてこられたあげく、売春を強要されるというものである。しかしまた、今日の人身売買の形態は、このような典型的なケースに限らない。日本に送りこまれるすべての女性が脅されたり、だまされたりしたわけではない。中にはある程度事情を知りながら来日するものもいる。しかし、彼女たちは、性関連産業で働いていること自体で一段と低く見られ、常時監視を受け、適法な在留資格をもたないなどきわめて弱い立場に置かれている。このような立場の弱みにつけ込まれ、基本的な人権を侵害される場合が少なくない。一方、女性を募集し、移送し、受け取るまでのあいだには、さまざまな人間が関与し、大きな利益を得ている。
この問題の根底には、国家間の経済格差、貧困問題、男女の職業機会・教育機会の格差、民族的差別意識等が横たわっている。したがって彼女たちの行動の向こうにあるこの「構造」に目をむけることが大切である。【004−005】

2.人身売買の定義
本書では人身売買を「威嚇、力の行使、支配的地位の利用、詐欺を手段として他人を性的または経済的に搾取することを目的として、国境内または国境を越えて人を募集したり、移送したり、受け取ったりすること」と定義する。【005−006】

3.本書作成の参加者について
本書の基となった検討作業は、国連北京女性会議が開かれた1995年に始まる。この問題に関心をもつ、関西を拠点にするNGOグループや個人が集まって、問題を法的側面から検討、作業を行なった。その作業は京都YWCAに属する滞日外国人支援NGO「京都YWCA・APT(AsianPeopleTogether)」のメンバーを軸に行なわれた。本書はこの間に積み重ねた議論を基に、送り出し国のNGOの報告や現場の状況に詳しい方々の意見を参考に作成している。【006−007】

第1章  人身売買―その実態―

はじめに
日本の性関連産業で働く海外からの女性の流入は、1980年代はフィリピン人女性が中心を占め、80年代後半からは、タイ人女性が人身売買組織によって日本に送り込まれ売春を強要されるケースが増加した。その後、ソ連崩壊や日本の出入国管理法の改正など、取り巻く環境の変遷にともなって送り出し国も多様化し、中南米、最近ではロシアなどから来日する女性が増えている。また、中国、韓国、台湾などの近隣諸国からの来日も少なくない。本章では日本社会への外国人女性送り込みの実態の一端として、コロンビア、タイ、フィリピンのケースを取り上げる。【015ー016】

1. 実態
(1)コロンビア人女性のケース
ここ10年の顕著な傾向として、南米コロンビアからの女性の送り込みが実態的に増加しているが、統計的な数字で日本に入国するコロンビア国籍の人数が大きく伸びているわけではない。これはコロンビア国籍では日本への入国がむずかしいため、ヨーロッパの国に一度行きフランスやスペインの国籍のパスポートを偽造し、これらの国籍の人間として日本に入国しているため。【016−018】
募集
コロンビア人女性は次のような方法で募集され日本にやって来る。
(a) 新聞広告
「厳しい時代の今こそ、このチャンスを生かそう。包容力があって誠実な外国人がコロンビア人女性との結婚を希望」、「外国で成功したい若いモデル求む。」、「外国で働いてみたくありませんか。」など。【019】
(b) 奨学金制度
カタログを介して、日本を経由して米国で学ぶ機会を女性に提供。留学費用は学生特別優遇分割払いを用意。申し込み者はまず抽選で選ばれる。【020】
(c) 企業との契約
日本での国際見本市でコロンビア企業の社員として働くという求人広告。【020】
(d) カタログ結婚
女性たちが写真を送り、それがコロンビア人「妻」を求める日本人男性向けのカタログに掲載される。【020ー021】
(e) 女性リクルーター
ほとんどの場合は、これら女性自身が過去に人身売買されて日本で売春に従事していた。そして、若い女性に、ウェートレス、看護婦、家政婦などの仕事があるといって誘う仕事を引き受けている。【021】
(f) 楽団や舞踏団
リクルーターがダンサーや歌手志望の女性を探す。【022】
人身売買被害女性
コロンビア外務省、管理安全部、在東京コロンビア大使館、エスペランサ財団など様々な情報筋によれば、日本に売られる女性の平均的なプロフィールは15歳〜30歳、低学歴あるいは中程度の学歴、ほとんどが未婚の母あるいは別居した女性、中低所得者といった女性。【022−024】
出身地
日本に売られた女性の大半は、バリェ・デル・カウカ県、アンチオキア県、ボゴダ・カルダス県、リサラルダ県出身。これらの地域はハイリスク地域と見なされている。【024−025】
コロンビアでのヤクザ
ヤクザは当局のみならず、経済界、政界など日本社会のさまざまな社会層に深く食い込んでいる。彼らは武器や麻薬の取り引き、密入国、女性の人身売買に関与しており、人身売買対象の女性の出身国はタイ、中国、香港、韓国、台湾、フィリピン、ロシア、コロンビア、メキシコなど。
ヤクザは1980年代中ごろにコロンビアに進出し、コロンビア中央部から南西部を活動拠点にした。
やがてヤクザはコロンビア人組織と手を組むようになり、女性の募集、逃亡した女性の連れ戻し、女性の家族への対応など、被害女性を完全に管理化に置く仕事をコロンビア人が担うようになる。【025−033】
ルート
コロンビア人女性を日本に連れて行くのに人身売買業者たちはさまざまなルートを利用する。例えば次のようなルートである。
南米経由としてコロンビア→ペルー→タイ→日本、コロンビア→エクアドル→パナマ→米国→日本、ヨーロッパ経由としてコロンビア→マドリッド→日本、コロンビア→フランクフルト→日本、アジア経由としてコロンビア→韓国→日本【033−034】
日本到着後
日本に売られたコロンビア人女性のほとんどは、性関連産業で働かされることが明らかになっている。主に次のような場所で働く。ソープランド、ファッションへルス、劇場、ディスコ、デートクラブ等。【035−036】
通報・人権侵害
服従の強要、脅し、コロンビアにいる身内に対する報復のほのめかしなど、人身売買組織が女性に与えるプレッシャーは、女性に人身売買犯罪の通報をちゅうちょさせる大きな要素である。また、外国人移民であるという事実が人身売買の被害者であることよりも優先され、ある場合には、女性が売春に従事していたことが裁判において不利に働き、女性が語る事実すら歪曲され、「疑わしい」と見なされてしまう。【036−038】
提言
受け入れ国と送り出し国の双方で支援のメカニズムを作って、被害女性のその後をフォローアップし、女性たちが共同体や家族の元へ支援を受けて安全に帰還できるようにし、女性たちが社会に再統合できるようにすることが重要。【038−039】
(2)タイ人女性のケース
タイ国内の背景
1950年代から60年代において、タイの農村、特に北部や東北部での生活は厳しかった。タイ全体として国民の半数以上が貧困ライン以下の状態にあった。聞き取り調査によると、幼少期の生活は厳しく、家族の窮状を救うために身を売るということが60年代後半にはすでに北部農村の女性たちの周辺で起きていた。【040−043】
動機の変化
60年代初期は貧しさのなか、両親の合意の下で少女たちは半ば強いられて村から連れ出されて都会の買売春ビジネスに送り込まれるケースが多かった。しかし70年代後半から80年代にかけて若い女性の身体が大金を生み出すことを知った家族が娘を売るという現象が現れた。また、「それほど貧しくはないがもっと豊かな生活を夢見て」、「なにかおもしろいことをしたくて」など様々な要因が女性を性関連産業に向かわせる動機となることもあった。【043−044】
タイ国内性関連産業の発達
60年代後半からのベトナム戦争時、米軍兵士のための歓楽街がタイでは基地周辺以外にも出現し、さらに西からは石油でにわかに潤った中東諸国から、東からは高度経済成長のお陰で安く海外旅行ができるようになった日本からの男性客たちが、タイにおける性関連産業を一層発達させていった。【045】
タイから日本へ
斡旋人たちは、しだいに国境を越えて、南部タイからマレーシア、シンガポールへ、バンコクからは香港やヨーロッパ諸国や日本へ、女性の斡旋範囲を広げていった。ここではタイから日本への人身売買に介在するリクルーター(斡旋人)、エージェント(斡旋組織)、エスコート、ブローカーのそれぞれの役割を検証する。【046−054】
女性達の日本での状況
女性達の仕事は多くの場合スナックのホステスである。また「借金の返済」と称して売春を強要させられる。当然日々監視や脅しのなかでの生活を余儀なくされ、入管法や売春防止法などの法の違反者として取り扱われる傾向にある。【055−060】
(3)フィリピン人女性のケース
日本の風俗産業にフィリピン女性が増えたのは1980年ごろからである。フィリピンではマルコス政権期の1974年に、政府は海外への出稼ぎ労働を外貨獲得のための国策とした。フィリピンからの海外出稼ぎといっても、行き先によってその内容と携帯はさまざまである。アメリカには医師や看護婦などの高度な専門職の人材を「頭脳流出」している。日本に向かうフィリピン人労働者のほとんどは、エンターテイナーとして風俗産業で働く女性である。日本に入国してからの女性たちには、奴隷同然の、まるで商品のように扱われる過酷な現実が待っており、まばゆい世界は幻想と化して消えていく。【061−082】
人身売買に対する政府の対応
フィリピン政府は、女性の人身売買は政府が対処すべき重要問題であることを認識している。出稼ぎ問題に関するより効果的なプログラムを政府内にさまざまな機構を作ることで対応している。しかしながらこの方法で実際に問題が解決したケースはほとんどないのが現実である。【082−085】

2.聞き取り
本節は、日本に働くために来た八名の女性の、来日の経緯から、彼女たちが日本で経験したさまざまな事柄の記録。タイとフィリピンの女性それぞれ三名は、日本に滞在するなかで出会った男性と結婚(事実婚を含む)し、その後も日本で生活している。【086−111】
資料
(1) 入国・在留手続きの基礎知識、(2)タイ人女性がからんだ四つの殺人事件の経過(下館事件、茂原事件、桑名事件、市原事件)【120−127】
第2章 人身売買の禁止に関する国連の取り組みと日本の課題
はじめに
この章では国際社会において人身売買を根絶するためにどのような取り組みがなされてきたのかを国連の取り組みを中心に検証する。【129】
1. 国連における人身売買の根絶に向けた取り組み
人身売買の根絶が国際的課題となって浮上するのは1990年代に入ってからである。国連は1948年に世界人権宣言を採択し、人々と国家が達成すべき共通の基準を示したのち、さまざまな人権条約を採択してきた。しかしながら人権概念も男性の経験を中心に作られてきたことから、女性が被る人権侵害はながく「人権侵害」として認知されずにきた。1993年に開かれた世界人権会議では女性に対する暴力を中心に女性の人権が大きく取り上げられた。そして、同年12月には国連において「女性に対する暴力撤廃宣言」が採択されるに至った。さらに、1995年に開かれた第四回世界女性会議でも女性に対する暴力は主要課題の一つとして位置づけられた。2000年11月には国連総会において、国際組織犯罪禁止条約と移民の密入国禁止議定書および人身売買禁止議定書が採択された。人身売買禁止議定書は、人身売買について包括的な定義を行なったはじめての条約となった。【130ー138】
2. 人身売買禁止議定書の意義と概要
議定書は、国際的組織犯罪撲滅のための国際協力促進を目的に、各締約国内で人身売買を犯罪として規定し、国際的な組織的犯罪集団が関与する人身売買を防止し、根絶するための国内立法措置およびその他の措置をとることを締約国に義務づけている。議定書は、本体条約である国際組織犯罪禁止条約を補完するものであり、本体条約と一体で解釈されることが定められている。議定書には以下の三つの目的が掲げられている。
・ 女性と子どもに特に留意しながら人身売買を防止および禁止すること
・ 人身売買の被害者を、その人権を十分に尊重しながら保護し支援すること
・ 以上の目的を達成するために、締約国間の協力を促進すること
【138−148】
3. 日本が守る義務のある慣習国際法規と人権条約の概要
「慣習国際法」はそれぞれの国家がその法的拘束力を明確に認めることを表明しなくとも、設定された基準が多くの国家に受け入れられ、自発的に実践されていく過程で、「法的拘束力」が認められるようになり、法となるもののこと。慣習国際法は、国際社会を構成するすべての国家が守らなければならないルールであるのに対し、条約は条約に参加する国の間で守られるルール。日本が参加している条約は10である。そのうち人身売買の被害者保護に関連する条約には以下のようなものがある。
・ 1949年条約「人身売買および他人の売春からの搾取の禁止に関する条約」
・ 自由権規約「市民的および政治的権利に関する国際規約」
・ 社会権規約「経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約」
・ 女性差別撤廃条約
・ 子供の権利条約
・ 強制労働に関するILO第29条約
【148−157】
4.人身売買の根絶にとって特に重要な条約
・ 1949年条約「日本は1949年条約の締約国であることから、日本における人身売買の防止および被害者救済については、少なくとも条約が定める範囲内での義務を負っているということは明らかである。」
・ 女性差別撤廃条約「女性差別撤廃条約が1949条約と大きくことなる点は、条約が締約国に義務づけた事柄について、各締約国が国内でどのような具体的な措置をとっているか、その効果はどうか、条約上の義務が果たせない場合、その原因は何かなどについて記載した報告書を締約国が作成し、それを定期的に提出させるという報告制度を備えている点。日本は女性差別撤廃条約選択議定書については署名も批推もしていない。したがって、同議定書を早急に批推することが求められる。批推に当たっては、調査制度を受け入れることはもちろんである。【158−170】

おわりに
今、新たな議定書に基づいて、人身売買の根絶と被害者の保護に向けた国際協力が始まろうとしている。私たちは日本が一日も早く議定書を批推するように働きかける必要がある。日本に送り込まれる女性たちに関して国際機関による調査は活発に行なわれているのに対して、日本に住む私たちの多くは、この問題の存在さえも知らないか無関心である。【170−171】

資料
・ 国際組織犯罪禁止条約を補完する、人身売買、特に女性と子どもの人身売買の防止・禁止・処罰に関する議定書
・ 人身売買禁止に関する主要な決議書
・ 国連が中心となって作成した人権関連諸条約
・ 国際法および国際人権法に関する基本書・解説書

第3章  人身売買の加害者取り締まりに関する国内法制度と問題点

はじめに
「人身売買」および「強制に基づく売春とその相手方となる買春」は、違法であって廃絶させなければいけないことは明らかである。そして、人身売買および強制売春・買春に対する規制は、不備な点は多いとしても、ともかく日本の現行の法制度下でも可能なはずである。それにもかかわらず、なぜそれがかくも野放しにされているのか、規制の実行性がないのか。これが本章のテーマ。
【203−205】

1.人身売買
現行国内法には、人身売買という行為そのものを定義した上で、一般的にこれを違法として禁止する規定はないが、「刑法」には日本国外に移送する目的で人を売買するすること等を禁止し、処罰の対象とする規定がある。しかし日本は現在、人身売買被害者最大の受入国の一つであり、人身売買被害者の送り出し国であった立法当時とは状況がまったく逆転している。したがって国外移送目的略取等罪はまったく機能していない。児童福祉法を適用した摘発例は少ないし、児童買春等禁止法は一応機能しているといえようが、氷山の一角とも考えられる。【206−210】

2.人身売買にともなって生じる違法行為の禁止
人身売買にともない生じる違法行為に対し、未成年略取誘拐罪、被略取者収受罪、逮捕罪、監禁罪、逮捕等致死傷罪、暴行罪、傷害罪、傷害致死罪、殺人罪、脅迫罪、強要罪、公文書偽造等罪、公正証書原本不実記載等罪、偽造公文書行使等罪など刑法の各該当条文が適用可能なケースは少なくないと思われるが、実際に適用された例は少ない。これは「被害者」であるという認識の欠如や、国外犯処罰を妨げる制約要因が原因である。改正するためには捜査員に対する人権教育、捜査・公判手続き等の改善、すべての者の国外犯規定改善が必要。【210−216】

3.売春の強制(強姦)の禁止
刑法では強制猥褻、強姦、準強制猥褻、準強姦、各未遂、強制猥褻等致死傷、傷害、傷害致死などの法適用が定められているが、人身売買の加害者に対し、強姦罪・強制猥褻罪の適用を念頭におく捜査は、まったくといってよいほどなされていない。犯罪成立要件の著しい限定、告訴期間の制限、「被害者」であるとの認識の欠如などが主な原因である。
売春防止法では「善良な性風俗の維持」と「人権侵害の防止」を目的としているが、買春行為者は全面的に処罰の対象外であるのに対し、売春行為者は補導・更正の対象とされ、明らかに性別差別である。
児童売春・児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律は1999年11月に施行され、2000年4月末現在、364件、264人が本法により検挙された。日本は児童を被写体とするポルノの世界的製造流通基地といわれ、国際社会の強い非難を浴びているだけに今後も検挙の推移を見守る必要がある。【217−234】

4.売春の強制(強姦)にともなう違法行為の禁止
人身売買により運ばれてきた女性たちが日本国内で強制売春に従事させられる場合、これが「労働関係」に該当するか否かについては、見解が分かれる。これを「労働関係」に該当すると解することができれば、少なくとも刑事的ないし行政取り締まりの対象とすることができる。しかし実際の摘発は極めて少ない。理由としては、「労働内容」や「労働条件」が明確になりにくい、労働基準監督官の人員不足などがあげられる。【234−239】
資料
刑法【240−244】
売春防止法【244−245】
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律【245−246】
児童福祉法【246−247】
児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護に関する法律【247−249】
労働基準法、職業安定法、労働者派遣法、出入国管理及び難民認定法【249ー251】
刑事訴訟法【251−253】

第4章  人身売買被害者の保護に関する提案

はじめに
「被害者の保護措置」は出入国管理法に違反していれば退去強制と処罰だけが先行してしまう発想に対して、人権の角度からこれとは別の対処をするものである。この章では日本社会で人身売買の被害者となった人が現時点で利用できる保護措置の現状を紹介し、現行制度の限界を明らかにするとともにより効果的な救済制度への提案を行なう。【255−256】

1.人身売買被害者に対する救済の現状
風俗産業で働く人が、身の危険を感じて保護を求めようとするときに利用できる公共機関は、婦人相談所である。現在婦人相談所は相談業務、一時保護、一時保護中のケア、他機関への紹介、地方検察庁の更正保護相談室への婦人相談員の派遣等を行なっている。【256−267】

2. 身売買被害者コーディネートセンター
人身売買の被害者保護に関するコーディネートセンターは、人身売買被害者保護を目的として、被害者の状況を総合的に把握し、一定の処遇の決定を下す権限をもつものにする。また救済にかかわる諸機関の機能を調整する任務と権限を担わせる。具体的には人身売買の被害者認定、退去強制手続き中の人身売買被害者の保護、一時保護、リハビリテーションへのコーディネーター的役割、一時的在留資格の付与、司法救済の保障等を行なう。【267−278】

まとめ
日本社会では人身売買の被害者を保護するための法律も、法律に基づいた施策もない。社会保障についても、防疫上の理由から法定伝染病は無料で治療が受けられるがそれ以外には、関東数県でかろうじて医療機関を救済するための未払い医療費補填事業の補助措置がとられているだけである。
【278−279】
資料
米国国務省が発表した人身売買に関する報告書【280−283】
あとがき【285−287】


コメント

  現在日本が世界最大の人身売買受け入れ国の一つであることは厳然たる事実であるが、この事実に対し、多くの日本人は目を背け、本気で解決しようとしていないように感じられる。そればかりか、女性たちは好きで日本に来ている、善良な性風俗を乱し入管法違反も平気でする不法者であるなどと考える人が多いのが現実であると思う。事実私もこの本を読むまではそうであったかもしれない。しかし、人身売買で日本に来る多くの外国人女性は、騙されたり脅されたりといった非人道的な行為によって夢や希望を失わされているケースが多々あるのである。また、人身売買は「買い手」がいるからこそ成立するということを考えれば決して自分達にとって無縁の問題であるという解釈はできないという認識に至った。
  本書は実際に人身売買の当事者となった女性から数多くのインタビューを取り、今まであまり多く語られることがなかった人身売買の全容について検証している。また合わせて数多くの資料、とりわけ日本の人権保護に関する法制度や国際社会における人権保護条約を掲載することで実際の法制度によってどこまで人権が保護され、どの点に不足があるのかを細かく議論している。日本では女性に対する暴力といえばセクハラやDVを意識する程度であろう。これから日本が国際社会から批判を受けないために法改正を提言しているこの書の価値は大きいと感じられる。


 関連HP
 http://www.ipsnews.net/jp/index.html
 INTER PRESS SERVICE NEWS AGENCY、人身売買以外にも差別に関する記事が多数掲載されている。

 http://www.ajiazaidan.org/jnatip/
 人身売買禁止ネットワーク


UP:20040210 REV:0212
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