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『稲盛和夫の哲学――人は何のために生きるのか』

稲盛 和夫 20011121 PHP研究所,213p.

last update:20131203

稲盛 和夫 20011121 『稲盛和夫の哲学――人は何のために生きるのか』,PHP研究所,213p. ISBN-10:4569614701 ISBN-13:978-4569614700 \1200+税 [amazon][kinokuniya]  ※


■内容

商品説明
「人間は何のために生きるのか」。カリスマ的な経営者として知られる稲盛和夫は問いかける。「人間性を磨き、素晴らしい人格を身につけることこそが、人生の本当の目的なのです」。稲盛は、さまざまな試練や苦難、困難なども自分の向上心を試そうとする試練なのだと受け取り、感謝しつつ、人間性を高めていくことが大事なのだと説く。「幸運とか成功に恵まれたときに、どのような心構えで対処するかによって、その後の人生が天国にも地獄にもなるのです。成功して有頂天になり、鼻持ちならない人間に堕している一方、成功が自分だけの力でなしえたことではないことを悟って、さらに努力を重ね、自らの人間性を高めていく人もいる」という言葉には、ハッとするものがある。

稲盛は「そうしたことは、人生に対して志を立てる十二、十三歳ごろに教えるべきだが、現実の教育の現場では誰もそのようなことを教えていない」と警鐘を鳴らす。また、死後、「現世で何をしましたか?」と尋ねられたとして、「『京セラをつくって、おおきな会社にした』といってみたところで、意識体にとっては肉体も何もないので、何の価値もない」という言葉には、京セラの創業者である稲盛だからこその説得力がある。

本書は、混迷する現代にあって正しい生き方を懸命に模索する人たちに向けた本だ。一代にして京セラを大企業にまで急成長させてきた稲盛の哲学からは、生きていくうえで、学ぶべきことが多い。(玉木 剛)

内容紹介
21世紀になっても、世界中で争いが絶えず、社会は混乱の度を深めているのはなぜか。ひるがえって日本をみても、物質的な豊かさを獲得したにもかかわらず、政治は迷走し、社会は規範を失い、人々の心が満たさないのはなぜなのか? そもそも人間が存在する理由、生きる価値とは何なのか? かかる疑問に対して、一代で京セラを世界企業に育て上げた著者が、人間の本性を深く洞察したうえで導き出した「哲学」を用いて答えたのが本書である。「人間は何の目的で誰がつくったのか」「なぜ人生には試練や逆境があるのか」「魂の存在や死というものをどう捉えたらよいのか」といった根本的な問題を、著者は真正面から受け止め、自らの考えを披瀝している。それはけっして独りよがりの「論」ではなく、仏教をベースにした、日本人が忘れてしまった「行動規範」といえよう。真摯に生きる人に読んでほしい、「素晴らしい人生」を送るための生き方・考え方でもある。

■目次

まえがき
1 人間の存在と生きる価値について
2 宇宙について
3 意識について
4 創造主について
5 欲望について
6 意識体と魂について
7 科学について
8 人間の本性について
9 自由について
10 若者の犯罪について
11 人生の目的について
12 運命と因果応報の法則について
13 人生の試練について
14 苦悩と憎しみについて
15 逆境について
16 情と理について
17 勤勉さについて
18 宗教と死について
19 共生と競争について
20 「足るを知る」ことについて
21 私の歩んできた道

■引用

◆「人間は価値ある存在なのか」「この世に生を受け、生きていく意味とはどこにあるのか」/そのように「人間」というものに対して核心をつくような問いを受けたとき、私は次のように答えています。/「地球上……いや全宇宙に存在するものすべてが、存在する必要性があって存在している。どんな微小なものであっても、不必要なものはない。人間はもちろんのこと、森羅万象、あらゆるものに存在する理由がある。たとえ道端に生えている雑草一本にしても、あるいは転がっている石ころ一つにしても、そこに存在する必然性があったから存在している。どんなに小さな存在であっても、その存在がなかりせば、この地球や宇宙も成り立たない。存在ということ自体に、それくらいの大きな意味がある」[2001:8]

◆…人間は存在するというだけにとどまりません。知恵をもち、理性をもち、心をもっているという点で…たんに存在するということを超える大きな価値を内在しているはずです。…/つまり、宇宙という大きなものから見た場合には、何もしなくてもただ存在するだけで価値があるのですが、意識をもった人間、考えることのできる人間、自分を磨くことができる人間は、たんに存在する以上の価値を生みだすことができる、それが世のため人のために尽くすことができるということなのです。…/ところが、自然を征服しようとし、地球上の他の存在を踏みにじる。あるいは、他の民族を制圧しようとして、争いに明け暮れる。そうなったとき、あたら知恵があり、知識があり、考える力があり、心というものをもっているだけに、人間は恐ろしい存在になってしまいます。/存在しているだけならまだしも宇宙のためになったのに、悪い心をもてば人間はたいへんな害毒を流すことになる。そういう二面性が人間にはあるのです。ですから人間が「人間として価値ある存在」となるためには、心、考え方、知恵、理性といった精神作用の質が大切なのです。[2001:11-12]

◆もし仮に、人間にそれほどの価値がないとしても、「必然」と位置づけることによって、われわれの人間としての価値を高めていきたいと思うのです。「必然的に生まれた」と捉えることによって、生きる意義、意欲、使命というようなものが出てくるわけです。私はそういう考え方が大事だと思います。[2001:14]

◆しかし、私は…宇宙には森羅万象あらゆるものをあるがままに存在させるのではなく、それが生成発展する方向へ動かしていく流れ、すべてのものを成長発展させるような進化をうながしていく流れがあるというふうに理解しています。つまり、無機物的な法則というよりは、宇宙にはすべてのものを生成発展させ、進化をさせていく「意志」が存在するというふうに考えたほうがよいと思うのです。…このように、すべてのものを発展する方向へ動かしていこうとする宇宙の意志が、われわれ生物にも、石ころにも存在しているのです。いわば、宇宙の意志がすべての源になっている。そう考えてもよいのではないかと私は思います。…その宇宙の意志を、当然われわれは誰もがもっている。そしてそれは死ということにも関係していきます。…肉体が滅びても、宇宙の意志という、存在のベースになるものは滅びません。宇宙の意志を存在の核にもっている以上、肉体の死はそのまま人間の死を意味しないと私は信じています。[2001:19-23]

◆私も同じく、物質文明をつくったのも、科学をつくったのも、もともとは意識だと考えています。…大脳生理学的に捉えると、意識も、意志も、考えることも、すべて脳細胞の作用として出てくるものだということになります。しかし、それだけではなく、人間が生まれたときからすでにもっていた意識、意志というものもあるのではないかと私は思っています。[2001:28-29]

◆では、何が価値あるものなのか。それは現世を生きたときにつくりあげた人格、人間性、魂、意識体です。それは肉体が滅びてもなくなることはありません。「あなたは努力され、素晴らしい人格をもつまでに自分を高めましたね」といわれることが人生の価値であると私は思います。つまり、人間性を高めるためにわれわれは現世で生きているのです。[2001:32]

◆宇宙の創造主は、いろいろな試練を人間に与え、それをどのように受け取って自分の心を高め、心の浄化をしていくのかを試しているのです。そう考えれば、人生はまさに心の修行をするために与えられたものだといえます。[2001:35]

◆創造主は上からすべてのものをコントロールしているのではなく、その根源なるもの――魂のなかのいちばん中心になるもの――だけを人間に与え、あとはわれわれが自由にできるようにしているのです。[2001:41]

◆人間は自由だから、欲望をいくらでも追求していける。ところが、それでは宇宙のためどころか、人間のためになりません。そして何よりも地球を保てません。地球環境のことを考えれば、人間は自分の欲望の追求はほどほどにして、他の動植物たちと共生して生きていくより他に道はないのです。すなわち、足るを知って欲望の肥大化を抑えるべきなのです。/これこそが「叡知」です。[2001:44]

◆結局人間は、その人の意識と行動によって、よき方向にも悪しき方向にも進むのです。つまり、人間は生きていく以上、自由であるがゆえに悪をつくる可能性が十分あるのです。しかし、自分を抑えることによって、悪をつくらず、善をなすこともできるのです。このように、もともと性善か性悪かという発想を超えて、人間は自由を手に入れたがゆえに、その自由の使い方によって悪にもなり善にもなるということを理解することが必要だと思います。[2001:78]

◆もともと悪があるのではなく、人間が生きていくために、結果として悪を自分でつくってしまっているのだと考えたわけです。/では、悪という影を生じさせるものは何か。それは「自由」だと私は考えています。自由は、人間が人間らしく発展してきた基であり、本質的に大事なことです。そのいちばん大事な自由が、じつは人間が悪を生みだす原因の一つなのです。…自分自身が自由でありたければ、他の人に不自由を強いることになります。こうして、自分が自由を謳歌する影として悪が生じるわけです。[2001:84-85]

◆人を助けるという「布施」、やってはならないことを示した「持戒」、この二つは少なくとも子供たちに教育しなくてはなりません。努力するという「精進」、耐え忍ぶという「忍辱」の二つは自分で身につける必要があります。[2001:91]

◆青少年の問題で最初に考えるべきは、「心というものをつくるために何をすべきか」であり、基本となるのは「われわれ人間は自己の欲望を抑え、辛抱をし、そして働くということが、心をつくるために必要なことだ」ということを教えることです。[2001:97]

◆では、われわれは人間性を磨くために何を心がければよいのでしょうか。…第一に、人のために尽くしたい、世のために尽くしたいと思うように努める――「布施」することです。第二に、自分を戒めてエゴを抑えていく――「持戒」すること、第三に、諸行無常、波瀾万丈の人生に耐えていく――「忍辱」することです。第四に、精一杯働く――「精進」することです。これらのことを通じて人格を高めていくようにさせることが肝要だと思います。[2001:107-108]

◆われわれの人生を形成する要素として、二つのものがあると私は考えています。/まず第一にあげられるのは、もって生まれた「運命」です。…/この「運命」とは別に…われわれの人生を形づくる大きな要素があります。それは「善根は善果を生み、悪根は悪果を生む」という「因果応報の法則」です。…/ここで大事なことは、「因果応報の法則」が「運命」より若干強いということです。そのため、われわれはこの「因果応報の法則」を使うことで、もって生まれた「運命」をも変えていくことができるのです。つまり、善きことを思い、善きことを行なうことによって、運命の流れをよき方向に変えることができるのです。[2001:110-112]

◆私は波瀾万丈の人生とは、よいときも悪いときも、創造主が私たちに与えてくれた「試練」だと考えています。つまり、幸運に恵まれることも、災難に遭うことも、等しく試練なのです。その試練にいかに対処するかによって、人生はさらに大きく変化していくのです。[2001:124]

◆では、どのようにすれば悩まないですむのでしょうか。/まず第一に、悩む暇があったら誰にも負けない努力で働く。第二に、謙虚にして驕らない。第三に、毎日反省する。…第四に、足るを知って、生きていることに感謝する。第五に、自分よりも相手によかれという利他の心をもって生きることです。[2001:136]

■書評・紹介

■言及




*作成:片岡稔
UP:20131118 REV:20131202 1203
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