HOME > BOOK >

『性の国家管理―買売春の近現代史―』

藤野 豊 20011015 不二出版,303p.


このHP経由で購入すると寄付されます

藤野 豊 20011015 『性の国家管理―買売春の近現代史―』 不二出版,303p. ISBN-10:4835038681 ISBN-13:978-4835038681 2800  〔amazon〕 ※s00

■内容(「MARK」データベースより)
買売春を必要としているのは誰か-国家による買売春管理を性病予防の観点から解き明かし、存娼派の論理も明らかにしながら買売春の近現代史を照射する。

■目次
序章――日本近現代史における買売春問題――買売春史の概観と本書の課題――――
 公娼制度/黙秘私娼制度の近代買売春
 公娼制度の研究概観
 廃娼運動への評価をめぐって
 存娼論研究の不在
 戦後の買売春史研究
 国策としての買売春管理

第一章 「花柳病」問題の発生
本章の課題――「花柳病」問題の幻像――
第一節――性病予防対策としての廃娼論と存娼論――
  廃娼論の根拠
  性病予防のための存娼
  専門家の見解と内務省の見解
  私娼取り締まりの枠組みが完成
  公娼体制の完成と自由廃業運動への巻き返し
第二節――日本花柳病予防会の設立――
  日本花柳病予防会創立へ
  優生思想に基づく性病予防観
  内務省とともに私娼取り締まりを強化
  法文上存在しない私娼
  小括

第二章 廃娼運動の高揚と「花柳病」問題
本章の課題――公娼制度維持をめぐる政府の動揺――
第一節――日本花柳予防会の再興――
  花柳病予防法制定へ
  花柳病男子結婚制限法の運動
  「花柳病」から「性病」へ
  日本花柳病予防協会に改組
第二節――花柳病予防法の成立――
  私娼とともに性病患者も処罰の対象――保健衛生調査会特別委員会の草案
  取り締まりの対象を私娼に限定
  法案の可決と日本性病予防協会の不満
  高野六郎の性病予防観
第三節――花柳病予防法下の娼婦――
  性器検診への反発と現場の混乱
  「昭和大札」と性病取り締まり
第四節――「廃娼法案」の登場――
  「国辱」としての公娼
  性病予防効果の実際
  第五節――存娼政策の動揺――
  国家の面目としての廃娼
  「密売淫」の黙認
  貸座敷業者の反論
第六節――廃娼論と存娼論の協調――
  公娼制度への国際的批判
  廃娼の実態
  売笑問題対策協議会
  貸座敷業者・存娼派のまきかえし
  小括

第三章ファシズム体制下の「花柳病」問題と買売春問題
本章の課題――性病予防対象の拡大――
第一節――花柳病予防法の改正――
  性病患者の結婚禁止
  日中戦争と第二条・第三条の施行
  本格的改正へ
第二節――「花柳病」から「性病」へ
  廃娼へのシナリオ
  花柳病予防法、再改正へ向けて
  「性病管制法」
  法改正を待たずに進む性病予防策
  「大東亜共栄圏」の性病予防
第三節――「性的慰安」の国家保障――
  「非常時」下、息抜きとして期待された買売春
  高級享楽停止と大衆慰安
補節――富山県の廃娼――
  廃娼の背景
  廃娼の実態
  廃娼後の買売春の実態と性病予防 小括

第四章 占領下の廃娼と「赤線」の成立
本章の課題――「民主化」のもとでの買売春
第一節――「民主化」のなかの廃娼――
  国策としての売春――RAAの「慰安所」
  CHQによる公娼制度の廃止
  「特殊飲食店」としての再編
第二節――売春等処罰法案・風俗営業取締法案・性病予防法案――
  女性議員の買売春観
  売春等処罰法案をめぐって
  風俗営業取締法案
  性病予防法案の問題点
  誰が取り締まりの対象になるのか
第三節――地方条例による買売春取り締まり――
  地方レベルでの買売春対策
  処罰が先行する取締条例――東京の場合
  「赤線」黙認と街娼の取り締まり
  小括

第五章 売春防止法の成立
本章の課題――買売春肯定論をめぐって――
第一節――人身売買の社会問題化――
  「赤線」の実態
  ポツダム勅令第九号の法律化をめぐって
  買春・売春両罰主義の「売春禁止法」
  増加する人身売買
  性病予防に不可欠とされた「赤線」
第二節――売春等処罰法案をめぐる論争――
  議員立法としての売春等処罰法案
  「希望の町」計画
  娼婦への生活保障を求めた法案
  売春問題対策協議会
  女性議員と法務省の対立
  優生思想に基づく買売春批判
  法案成立に向けての攻防
  売春汚職
第三節――売春防止法案をめぐる論争――
  売春対策審議会の答申
  買売春行為自体を処罰するか、否か
  売春防止法の成立
  「健全なる赤線」をめざす――大阪松島新地
  「健全なる家庭への復帰」東京吉原
  権利としての売春
  「赤線」廃止に否定的な東京都・警視庁
  買売春の「民主化」――業者側の動き
  「赤線」は貧窮女性の救済・「更生」の場
第四節――売春防止法下の買売春―
  売春防止法の下の買売春
  買売春の潜在化
  偽装転業
  「ヒモ」の処罰のための法改正へ
  女性議員による改正案――単純売春・買春・「ヒモ」の処罰
  新しい買売春形態――「トルコ風呂」
  風俗業等取締法改正――「トルコ風呂」の公認と取り締まり
  性病予防法の改正と売春防止法
  アメリカ施政下・沖縄での買売春
  小括
終章――日本国家の性管理――   なぜ、国家は買売春を必要とするのか
  「自由意志」の名のもとに
  買春こそ問題に

■引用
 国策としての買売春管理維持政策は、公娼制度と黙認私娼制度として実現される。両者に共通するのは、集娼性であり、性病予防の実施である。したがって、私娼でも、散娼や街娼の形態は取り締まられた。公娼であろうと、私娼であろうと、一定の地域の内側で性病予防をおこなう限り、国家はその存在を許容したのである。
 なぜ、国家は買売春を管理維持したのか。前提として国家は、男性には性欲処理の場が絶対不可欠であると考えていた。そして、国策の根本には性病予防という課題があった。性病から兵力・労働力となる男性を防衛し、さらに健康な子孫を増殖するうえで女性も防衛するために、公娼・私娼制度は必要であった。 ここには優生思想に裏付けられた人口政策が存在する。女性を娼婦として性病予防という国策に殉じる存在と、良妻賢母として人口増殖という国策に献身する存在とに分断し、前者を国家の管理下に置き後者の「母性」としての健康維持のための犠牲に供した。 わたくしは、この点を重視して、近世公娼制度と近代公娼制度とを明確に区別する。
(藤野[281-282])

■書評・紹介

■言及



*作成:松田 有紀子
UP: 20080519 REV:
性(gender/sex)  ◇BOOK
 
TOP HOME(http://www.arsvi.com)