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『庶民金融の展開と政策対応』

渋谷 隆一 20010725 日本図書センター, 706p.


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■渋谷 隆一 20010725 『庶民金融の展開と政策対応』, 日本図書センター, 706p. \12000 ISBN-10: 4820562401 ISBN-13: 978-4820562405 [amazon][kinokuniya]

■内容紹介(紀伊国屋BookWebより)
著者が発表してきた庶民金融に関する論文を一冊にまとめたもの。資本主義経済下の高利貸資本を含む庶民金融問題の分析を行う。

■目次


T 庶民金融問題の深化と政府調査

第1章 明治末・大正初期の庶民金融機関調査
1.はじめに
2.社会問題の発生と特質
3.社会政策学派理論の導入と官僚
4.庶民金融機関調査の実施過程
5.おわりに
(補稿)明治末期の負債調査
 1.負債調査資料の概観
 2.負債調査の実施と対策
 3.負債調査の分析

第2章 戦前期・金融制度調査会の調査活動
 1.はじめに
 2.市来蔵相時代の調査
 3.憲政会内閣時代の調査
 4.井上蔵相時代の調査
 5.おわりに
(補稿)大正末作成の調査諸草案
 1.調査準備委員会・幹事会の調査活動
 2.調査諸草案にみられる特徴
 3.庶民金融に関する調査草案

第3章 政府調査・立法化と問題点――所管争い
 1.はじめに
 2.所管争い発生の条件
 3.庶民金融問題の萌芽期
 4.庶民金融問題の恒常期
 5.庶民金融問題の深化期
 6.庶民金融問題の鎮静期
 7.おわりに

U 旧式庶民金融機関の展開と政策対応

第1章 私営質屋金融の展開と諸政策
 1.質屋史研究の経緯と問題点
 2.私営質屋の展開と貸付基盤
 3.利子生み資本としての私営質屋
 4.私営質屋の再生構造と特質
 5.質屋取締法の制定と変容
 6.質屋業展開の事例分析
  ・大質屋 福島家の場合
  ・中位質屋 仁藤家の場合
(補稿)金貸・質屋地方財閥の研究
 1.金貸・質屋大資産家の展開概要
 2.金貸・質屋財閥の発展累計

第2章 公益質屋の設立と展開
 1.公益質屋法の制定と私営質屋
 2.公益質屋の展開過程
(補稿)協同組合質屋の台頭
 1.協同組合質屋の特徴と存立状況
 2.上田質庫組合の設立と展開
 3.協働組合質屋の存在意義と限界

第3章 無尽金融の展開と諸政策
 1.無尽の学説史的研究
 2.無尽の形態変化と矛盾の深化
 3.無尽関連法規の制定と変容

V 政策的庶民金融機関の設立と展開

第1章 産業(信用)組合法の制定過程
 1.はじめに
 2.信用組合思想の導入と組合法案
 3.産業組合法の制定とその意義
 4.おわりに
(補稿)杉山孝平と信用組合論をめぐって
 1.斬新な杉山孝平論文
 2.杉山「信用組合法」のもつ意義
 3.資料紹介

第2章 市街地信用組合の法認と改革構想
 1.はじめに
 2.庶民銀行構想と産業組合法第3次改正
 3.大正末期以降の改革諸構想
 4.おわりに

第3章 府県農工銀行の設立と法改正
 1.農工銀行史研究の問題点
 2.農工銀行法制定の意義
 3.明治末期の法改正とその意義
 4.観農合併法制定の背景

第4章 恩給公庫の設立と展開
 1.はじめに
 2.わが国恩給制度の特質
 3.資本主義の発展と恩給制度
 4.恩給公庫の設立過程
 5.恩給公庫の展開とその特質
 6.おわりに

第5章 庶民金庫の設立と展開
 1.はじめに
 2.庶民金庫の設立過程
 3.庶民金庫の展開とその特質
 4.おわりに

初出文献一覧

■引用 U 旧式庶民金融機関の展開と政策対応
第3章 無尽金融の展開と諸政策
  3.無尽関連法規の制定と変容
「松方デフレ期になると、政府は富籤の禁令違反者に対する罰則を布告し、また府県では富籤類似行為の取締りをいっそう強化する一方、無尽取締規則を布達し本来の無尽に対しても規制するところがでてきた。政府筋でも同規則の作成にとりかかったが、実現を見なかった。明治中期には、社会問題の質的変化を背景に、各府県の取締規則の内容がより整備され、社会政策的意図を織り込むようになった。一つは、取退き無尽を含む富籤類似行為への取締り強化=労働者やその他の下級階級の生活秩序の安定=防貧策として、いま一つは、消極的かつ間接的ではあれ本来の無尽に対する規制、ことに射幸性の排除、中産層の維持策として、それぞれの役割を果たさせようとしたのであり、それなりの意義を有していた。
  しかし、無尽に対する政府・地方自治体のこうした施策も、つまるところ無尽の持つ多様な欠陥、いいかえれば、資本主義経済への適合性の欠如によって制約されざるをえなかった。ここに政府が無尽に代わる信用組合制度の導入を図るにいたった。」(p.493)

V 政策的庶民金融機関の設立と展開
 第5章 庶民金庫の設立と展開
4.おわりに
「庶民金庫は、明治末期以降、ことに昭和初期の時局匡救時に深刻化した高利貸の跳梁→庶民金融問題の沸騰に対処する社会政策的施策の重要な一環として設立された。しかるに、この政策意図は、当金庫が国家総動員法と同時に公布されたことに象徴されるように、戦争遂行が主目的となり、その影にかくれてしまった。一つには、社会政策的施策に対する人的確保・優生結婚資金貸付とか戦災者への特別貸付に現われている。
二つは、他の庶民金融機関もそうであるように、戦時下のインフレ高進、実質賃金の低下、空襲による庶民生活の崩壊→貸付の停滞、遊休資金の発生→有価証券とりわけ国債の増加、同消化機関化の進行である。」(p.703)



*作成:角崎 洋平 
UP:20080809
身体×世界:関連書籍 2000-2004BOOK
 
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