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『ケア論の射程』

中山 將・高橋 隆雄 編 20010628 九州大学出版会 320p.


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■中山 將・高橋 隆雄 編 20010628 『ケア論の射程』 九州大学出版会, 320p. ISBN-10: 4873786800  ISBN-13: 978-4873786803  3150 [amazon][kinokuniya] ※ b

■九州大学出版会のHP
http://www1.ocn.ne.jp/~kup/sinkan/680care.html

■目次
まえがき  中山 將

序章 ケア論の素描と本書の構成  高橋 隆雄
    I. ケア論の素描
     (1) 「ケア」について考える必要性
     (2) クーラの神話
     (3) ケア概念の展開
     (4) 現在の状況
     (5) ケアの観点
   II. 本書の構成

第1章 ケアの本質構造――ハイデガーの寄与――  中山 將
   はじめに
    I. 構えとしてのケア
   II. 様態としてのケア
      (1) ものとの関わり
      (2) 他人との関わり
   III. 他人へのケア
   IV. ケアの日常性
    V. ケアの本来性
   VI. 結語

第2章 日本思想に見るケアの概念――神の観念を中心として――  高橋 隆雄
   はじめに
    I. 日本文化を理解するキーワード――ケアとの類似――
      (1) ケアの概念
      (2) タテ社会
      (3) 甘え
      (4) 母性原理
   II. 日本における神の観念
      (1) 本居宣長・大野晋・山折哲雄
      (2) 和辻哲郎
      (3) ケアを求める神
   III. 日本的な霊の本性としてのケアへの要求
      (1) 死者の霊
      (2) 生者の場合
      (3) 神、死者の霊、生者の魂との関係
   IV. 政治・宗教
      (1) 祭事と政事
      (2) 神仏習合
   おわりに

第3章 ケア、正義、自律とパターナリズム  中村 直美
   はじめに
    I. ケアと正義
      (1) 女性の視点からの伝統的正義論への批判
      (2) ケア対正義論争における二人の中心人物――ギリガンとノディングズ――
      (3) ケアの倫理と正義の倫理との関係をどう捉えるか
      (4) 正義の原理・ケアの倫理と個人の自律
   II. ケアとパターナリズム
      (1) ミルにおける自律尊重と反パターナリズムの思想
      (2) パターナリズムの定式化――パターナリズムの特徴――
      (3) パターナリズムとケアの関連性
      (4) 自律の尊重と本人のための干渉・介入のディレンマ
      (5) ディレンマを解決する統合原理
   おわりに

第4章 終末期のケア  田口 宏昭
   はじめに
    I. 文化としての終末期
      (1) 人間の死の二面性
      (2) 世俗化のなかの終末期
   II. 癌と死のタブー
      (1) 死のタブー視と死の断片化
      (2) パターナリズム
   III. ホスピスにおけるケア
      (1) ホスピスの起源と展開
      (2) ホスピスとは何か
      (3) ホスピスの目標
      (4) ホスピスの二形式
   IV. 終末期のコミュニケーション
      (1) ケアとコミュニケーション
      (2) ケアの担い手
      (3) グリーフ・ケア
      (4) ケアすることの意味

第5章 看護におけるケアの変遷と展望  前田 ひとみ
   はじめに
    I. 一般的ケアと職業的ケアの違い
      (1) 職業としてのケアの必要性
      (2) 職業的ケアに求められるもの
   II. 医療における看護ケア
      (1) 医学の発達と看護ケア
      (2) ケアとキュアに対する責務と看護ケア
   III. 看護における“ケア”概念の変遷
      (1) ナイチンゲールの看護とケアの概念
      (2) アメリカにおける「看護」と「ケア」概念の変遷
      (3) 日本の看護史とケア概念
   IV. 医療と福祉におけるケア
      (1) 介護福祉士と看護婦の歴史的背景
      (2) 「医学モデル」と「看護モデル」
      (3) 教育から見る「看護」と「介護」の相違
    V. 看護におけるケアの展望
      (1) ケアの相互性
      (2) ケアを職業とする人に求められるもの
      (3) 医療と福祉の協働によるケアの提供
   おわりに

第6章 高齢社会とケア――その倫理的側面――  嵯峨 忠
   はじめに
    I. 高齢社会と「ケア」の課題
      (1) 高齢社会の進展と「ケア」問題
      (2) 老熟の実存課題と「ケア」
      (3) 「ケア」の洗練課題
      (4) 「ケア領域」の拡がりと連携の課題
   II. 老年期と「セルフケア」の展望
      (1) 老賢・老健のイデーと老化廃失論
      (2) ライフサイクルの視点
   III. 社会が老いに関わる相
      (1) 社会が老いに関わるとき
      (2) 現代における敬老と棄老の錯綜
      (3) 「ケアリング」(caring)が癒す生命、「ケアリング倫理」が回復する生命観の荒廃
      (4) 制度で支える
      (5) 地域再生とセルフケアの成就
   おわりに

付録
関係年表
事項索引
人名索引


■引用
太字見出しは、作成者による。

ケアとパターナリズムの問題(「第3章 ケア、正義、自律とパターナリズム」)
 教育的ケア、医療上のケアなどを見れば分かるように、ケアは、本人のための(応答的)措置・扱いを含むが故にパターナリズムとの関連は密接である。単に関心を持ったり、注意を向けたり、心に懸けたり、心配したりという意味でのケアの段階では、通常言われるところのパターナリズムの問題は生じない。パターナリズムの問題は、それによってその人の自由・自律など倫理的に(あるいは法的に)尊重される何かが「侵害される」(あるいはその危険がある、つまりは何らかの介入・干渉がある 場合に生起する(悪しきパターナリズム)。しかしすべてのパターナリズムが「あしき」ものではない。(pp.106-107)

職業的ケアと一般的ケア(「第5章 看護におけるケアの変遷と展望」)
 教育的ケア、医療上のケアなどを見れば分かるように、ケアは、本人のための(応答的)措置・扱いを含むが故にパターナリズムとの関連は密接である。単に関心を持ったり、注意を向けたり、心に懸けたり、心配したりという意味でのケアの段階では、通常言われるところのパターナリズムの問題は生じない。パターナリズムの問題は、それによってその人の自由・自律など倫理的に(あるいは法的に)尊重される何かが「侵害される」(あるいはその危険がある、つまりは何らかの介入・干渉がある 場合に生起する(悪しきパターナリズム)。しかしすべてのパターナリズムが「あしき」ものではない。(pp.106-107)

*作成:篠木 涼
UP:20080413  REV: 
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