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『税制ウォッチング――「公平・中立・簡素」を求めて』

石 弘光 20010625 中公新書,252p.


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石 弘光 20010625 『税制ウォッチング――「公平・中立・簡素」を求めて』,中公新書,252p. ISBN-10: 4121015916 ISBN-13: 978-4121015914 819 [amazon][kinokuniya] ※ t07.

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(「BOOK」データベースより)
少子高齢化社会の到来、膨大な財政赤字の増加などにともない、遠くない将来に税制の抜本的改革が避けられそうもない。国民の税についての関心は、経済成長期にくらべてはるかに高くなっている。口当たりがいいだけの安易な減税論を排し、「公平・中立・簡素」という租税原則にもとづいた税の仕組みは、どうすれば築けるのか。過去十数年の問題点をクリアにしながら、活力ある社会のための税のありかたを展望する。

■著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

石 弘光
1937年(昭和12年)、東京に生まれる。一橋大学経済学部卒業。同大学院修了。一橋大学教授。現在、同大学学長。財政学専攻。経済学博士

■目次

第1章 税制改革の担い手――政府税制調査会の役割
第2章 デモクラシー下の税制―――政治と税の攻防
第3章 景気対策と歪められた税制――あいつぐ減税要求の後遺症
第4章 企業は納税者たりうるか――法人税の新たな展開
第5章 社会保障と税制――高齢社会における費用負担
第6章 分権化社会における税制――安定財源を求めて
第7章 税制のグリーン化――環境税は必要か
第8章 グローバル化・情報化と税制――税を徴収できるのか
第9章 税制あれこれ――メモ帳から

■引用

プロローグ
 「本書執筆中の二〇〇〇年九月に、図らずも政府税制調査会の会長に任命された。しかしながらあえて断わるまでもなく、本書はまったく個人の研究者の資格で書かれたものである。政府税調の見解とは、無関係であることをお断わりしておきたい。」(石[2001:5])

第1章 税制改革の担い手―政府税制調査会の役割
 課税の公平・中立・簡素
 「課税の公平はもっとも基本的なもので税負担に公平感のない税制では国民の支持を得られない。課税の公平は個人の主観的なもので税負担に公平感のない税制では国民の支持を得られない。反面、あいまいながら社会通念としての公平の基準は厳然と存在し、税制改革の折にはこれを無視できない状況になる。」(石[2001:19])
 「課税の中立とは家計や企業の経済活動を税制によって歪めるべきでないとする原則である。課税によって、民間は政府に対して税支払いの義務が生じる。これが実際に発生する税負担だが、しかし税支払額以上に追加的に負担が生じる場合もある。高い累進課税率による勤労意欲や貯蓄意欲の減退や、あるいは特定の財のみに課税されると、消費者は好みを変え、非課税の財へ購入を移すかもしれない。」(石[2001:19])
 公平・中立・簡素の「三つの原則はこのように一般的な基準として広く認められているが、そのそれぞれがトレード・オフの関係にあることはよく知られている。」(石[2001:20])

第4章 企業は納税者たりうるか――法人税の新たな展開

 「わが国のみならず、どこの国でも法人税の取り扱いに苦慮している。このことは、各国の法人税制の混乱した過去のジグザグの改革をたどるとよく理解できる。もとより日本も例外ではない。法人税は企業活動にまともに影響を及ぼすだけに、その取り扱いいかんによっては、クロスボーダーで企業は移動しかねない。国際化の時代に入り、国際競争力あるいは協調の点からも、法人税の役割はますます大きくなってきている。
 法人税の正体がなぜ不明なのか。その最大の理由はまず誰が負担するのか分からない点にある。理論敵には、株主、従業員あるいは消費者のいずれかにその税負担が及んでいるはずである。だが実際のところ、それを誰も判断できない。より重要なことは、法人税にはあるべき姿を論じる際の基礎的な尺度が確立していない。このことは曲がりなりにも課税の公平確保の視点から、課税ベースを極力広く取るべきだと主張する「包括的所得」基準に基礎を置く所得税とは大きく異なっている。法人税には、理想の姿と描く統一的な尺度がない。かくして同じ直税ではあっても、法人税は所得税と大きく異なっている。
 このように法人税は、あるべき姿を求めて現行税制を改革する方向を一義的にかつ恒久的に設定できないという欠点を有する。法人税改革は、その背後にある経済社会の変化およびその経済効果を見て、その時々に最適な目標を立て、その達成を目指すほかはない。つまり<0070<法人税率の設定にしても、国際間の資本移動、競争力の確保、企業の資本調達あるいは資本市場に与える税制の影響を考え、法人税の仕組みを適宜構築せねばならない。」(石[2001:70-71])


UP:20081110 REV:20090801
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