『「彼女たち」の連合赤軍――サブカルチャーと戦後民主主義』
大塚 英志 20010525 角川書店,角川文庫,327p.
last update:20120206
■大塚 英志 20010525 『「彼女たち」の連合赤軍――サブカルチャーと戦後民主主義』,角川書店,角川文庫,327p. ISBN-10:4044191093 ISBN-13:978-4044191092 \700 [amazon]/[kinokuniya] ※ sm02
■内容
1960年代末から1970年代初頭にかけての時期は、学園紛争が吹き荒れる一方でサブカルチャーが隆盛の兆しを見せ始めるという、今考えると非常におもしろい時代だ。終戦以降の戦後民主主義社会の見直しと、今に続く高度消費社会への準備とを、世の中全体が同時に行っていたわけで、その意味では、政治、経済面ではもちろん、社会、文化、風俗面から見ても、日本の精神史の山脈に表れた一番大きな分水嶺と言えるのではなかろうか。
連合赤軍事件が起きたのは1972年のこと。本書は、この事件の裏側に、70年代以前の時代精神と、以降の消費社会的な感性との対立があった事実を指摘した本である。山岳私刑(リンチ)の発端が女性活動家の指輪にあったこと、同じ女性が党派の首領を「かわいい」と評したエピソードの紹介など、一見何でもない発見のように見えるが、事件の担い手たちのその後を、獄中手記などを手がかりに記述する著者の詳細な分析にかかると、この事件が70年代という時代の結節点を、見事に象徴していることに思い当たるのである。
著者は「ぼくの関心は『矮小』なるものの歴史化に向けられる」と言う。「(それが)サブカルチャーとして生まれた世代の唯一の『成熟』の形ではないか」と。連赤同世代の相対的な沈黙に比し、後続世代がかくも真摯な分析を行ったことを、どう考えればよいのだろう。ちなみに著者は1957年、森恒夫は44年、永田洋子は45年の生まれなのである。(今野哲男) --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。
出版社/著者からの内容紹介
永田洋子はなぜ「乙女ちっく」な夢を見たのか?
獄中で乙女ちっくな絵を描いた永田洋子、森恒夫の顔を「かわいい」と言ったため殺された女性兵士。連合赤軍の悲劇をサブカルチャー論の第一人者が大胆に論じた画期的な評論集がついに文庫化!新たに重信房子論も掲載
内容(「BOOK」データベースより)
なぜ永田洋子は獄中で“乙女ちっく”な絵を描いたのか、なぜ森恒夫の顔が「かわいい」とつぶやいた連合赤軍の女性兵士は殺されたのか。サブカルチャーと歴史が否応なく出会ってしまった70年代初頭、連合赤軍山岳ベースで起きた悲劇を『多重人格探偵サイコ』の作者が批評家としてのもう一つの顔で読みほどく。フェミニズムさえ黙殺した連合赤軍の女たちを大胆に論じ、上野千鶴子に衝撃を与えた画期的評論集に重信房子論、連合赤軍小説論を加え、増補版としてついに文庫化。
内容(「MARC」データベースより)
連合赤軍事件とオウム真理教事件。四半世紀をへだてる両事件に関わった「彼女たち」に通底しているものは何か? 戦後民主主義の中で育まれた彼らの「矮小さ」「サブカルチャー」を戦後史の中に位置づけることを試みる。 --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
大塚 英志
1958年、東京都生まれ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
■目次
第T部 「彼女たち」の連合赤軍
1 永田洋子と消費社会
2 永田洋子はいかにして「乙女ちっく」になったのか
3 連合赤軍と「母性」
4 「彼女たち」のオウム真理教
5 森恒夫と〈ぼく〉の失敗
第U部 「彼女たち」の日本国憲法
1 「彼女たち」の日本国憲法
2 消費社会と吉本隆明の「転向」――七二年の社会変容
3 〈かわいい〉の戦後史――永田洋子のいた風景
4 〈私語り〉の消費社会史
5 出産本と「イグアナの娘」たち――彼女たちの「転向」
6 「彼女たち」の転向――『成熟と喪失』の後で
終章 〈ぼく〉と国家とねじまき鳥の呪い
補 「物語」に融け込む主体
主体という幻想――『光の雨』と融解する自他境界
カメラ目線の重信房子
撮られること、語られることの愉悦
旧版あとがき
文庫版あとがき
■引用
■書評・紹介
■言及
*作成:樋口 也寸志