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『ゼネコン危機の先を読む』

辻村定次・野中郁江・篠井謙 20010415 新日本出版社,318p.


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■辻村定次・野中郁江・篠井謙[20010415]『ゼネコン危機の先を読む』新日本出版社,318p. 2200円(税別) ISBN-10: 4406028013 ISBN-13: 978-4406028011 [amazon][kinokuniya]

■内容(「BOOK」データベースより)

自民党政治と癒着し、国民常識とかけ離れた経済活動の果てに、存立の基盤さえ危うくする大手ゼネコン。具体的な事例と最新のデータを用い、単なる経営危機 問題ではない、奥深い問題点を明らかにし、新しい道がどこにあるかを問う。

内容(「MARC」データベースより)
自民党政治と癒着し、国民常識とかけ離れた経済活動の果てに、存立の基盤さえ危うくする大手ゼネコン。具体的な事例と最新のデータを用い、単なる経営危機 問題でない奥深い問題点を明らかにし、新しい道のありかを問う。

■著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
辻村 定次
建設政策研究所専務理事。著書に『現代日本の中小商工業―現状と展望編―』(共著、新日本出版社)

野中 郁江
明治大学商学部教授。著書に『日本のビッグ・ビジネス―旭化成・三菱化成』(共著、大月書店)、『新国有林論』(共著、大月書店)

篠井 謙
建設政策研究所研究員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

■目次
はじめに−ゼネコンの今と明日が分かる
第1部 これでわかる日本のゼネコン
 第1章 日本型ゼネコンとは
   ゼネコンの意味にはいろいろある
   日本の建設産業は中小零細業者で成り立つ
   ゼネコンは工事を受注し、施工は下請まかせ
 第2章 ゼネコン膨張の課程
   戦前の建設産業とゼネコン
   高度経済成長期の建設ラッシュとゼネコン
   70年代構造再編ですすむ減量化、EC化
   80年代は国際化から国内造注産業へ
 第3章 縮小と撤退へ、変貌するゼネコン
   元請ゼネコンの代行をする下請業者
   機械や技術を手放すゼネコン
   ゼネコン現場の技術者・労働者は激減している
   国民の認識とズレるゼネコン
   ゼネコン神話の崩壊

第2部 公共工事とゼネコン
 第4章 ゼネコン政治とは何か
   公共事業へのゼネコンの依存度
   アメリカの圧力で決められた公共投資基本計画
   利権・談合による公共事業のバラマキ−民主主義の欠如
   不良債権処理に追われるゼネコンへの公共事業による救済
   雇用吸収力も落ち込む公共事業
 第5章 大手ゼネコンの公共事業産業化戦略
   大手ゼネコンの公共事業戦略を描いた日建連ビジョン
   公共事業の産業化=「日本版PFI」
   財政上、税制上、金融上、法制上の支援
   PFI事業推進のための民間団体、ゼネコン、金融機関の動向

第3部 ゼネコン・クライシスのなかの企業経営
 第6章 「失われた10年」とゼネコン
   「失われた一〇年」と企業経営
   伝統企業、挑戦者としての一〇年
   ゼネコンには「勝ち組」はいない
 第7章 ゼネコン・クライシスは四重の複合危機
   バブルにどっぷり上場ゼネコン
   遵法意識もなければモラルもない
   市場規模は縮小
   公共工事頼みの経営体質が生みだした競争力の欠如
 第8章 ゼネコン・クライシスは止まらない
   巨額な債権放棄を受けて、債務超過を回避したゼネコン有力四社
   第三ラウンドは金融再編のなかでジグザグの債権放棄
   ゼネコン危機はつづく――収縮するゼネコン
   クライシスの終着点はどこか
 第9章 ゼネコン企業と会計ビックバン
   社会問題化したゼネコン粉飾決算
   公認会計士協会との攻防
   国際会計基準等の導入とゼネコン粉飾決算
   税効果会計は粉飾の手段となっている
   二〇〇〇年中間決算に見るゼネコンの事情

第4部 ゼネコン・クライシスのなかの企業経営
 第10章 21世紀の建設需要とゼネコン
   公共投資の行方へのさまざまな見方
   避けられない公共投資の削減・転換
   公共事業をどのように転換するか
   公共事業を削減しても仕事と雇用を確保できる
   大手ゼネコンの癒着・談合構造をどのように改革するか
   公共工事の入札・契約時の公正な競争と公開の原則
   自然破壊型からサステイナブル型へ
 第11章 ゼネコンの技術力をどう再生するか
   ゼネコン技術の強い点、弱い点
   ゼネコン「事故」から見えてきたもの
   ゼネコンに技術的課題解決能力はあるか?
   品質システム活用の視点
 第12章 大手ゼネコンに明日は見えるか
 ――二一世紀型企業への直言――
   大手ゼネコンは構造的で、複合的な問題を抱えている
   二一世紀型企業とは何か
   二一世紀型企業へ変身するための大手ゼネコンへの提言
おわりに

■引用

「執筆者たちが特に重視したこと、ポイントは、つぎの点である。
 この本から、ゼネコンを中心として、いま建設業界でなにが起こっているのか、なぜこのような事態となったのか、新しい動きや将来をどう考えればいいの か、という基本的な、重要な点を、つかみ取ることができる。いわば本書はゼネコン問題入門書である。」(p.4)

「ゼネコンとはゼネラル・コントラクター=総合請負業者、またはゼネラル・コンストラクター=総合建設業者の略称である。一般的には前者の意味で広く使わ れているが、ゼネコン内部では後者の位置づけが強まってきている。これは七〇年代後半から建設需要が後退局面に入るなかで、ゼネコンが従来の建設需要の注 文生産から自ら建設事業を造り出す産業=造注産業へと、戦略転換をしたことから生じたものである(第2章、三七〜四三ページ参照)。

「自民党を中心とする日本政府は、九〇年代に入って不況克服のための景気対策名目で公共事業の急激な増加を図っているが、その背景にはアメリカの強い圧力 が働いている。
 アメリカ経済は八〇年代に入って財政と貿易収支の双子の赤字に見舞われた。この真の原因は軍事費の増大とアメリカ大企業の多国籍企業化にあるが、日本の 自動車や電機産業のアメリカへの集中豪雨的輸出も原因していた。そのため、アメリカは日本経済へのさまざまな干渉を強め、特に自国の貿易赤字解消のための 円高誘導、内需拡大を要求し、公共投資の計画的拡大を求めた。」(p.68)

「九〇年代に入り、公共投資額が急速に膨らんだことは前述したが、これを政府建設投資額で九〇年度を一〇〇とした場合、九三年度一三三、九七年度一二七と 三割前後の増加となっている。一方、同じように公共事業に従事する単位発注金額当たりの建設就労者について、九〇年度を一〇〇とした場合、九三年度は八 二・五、九七年度は五七・五と大きく落ち込んでいる。
 つまり、九〇年代に入り不況対策と称し、全国に大型公共事業をばらまいたが、建設就労者の仕事や雇用拡大にはつながらず、逆に雇用効果は低下している (注)。
 これを公共事業のなかで二五%前後と突出している道路事業を見るといっそう鮮明になる。
 (注)建設省の「公共工事着工統計年度報」による。」(p.82)

「このように見ると、九〇年代の公共事業は、国や公団発注の大規模公共事業が増加するに従い、建設就労者の雇用創出にいっそうのマイナス効果をもたらして いることが明らかとなる。この原因は、工事が大型化すればするほど、工事費に占める鉄やコンクリートなど材料費の占める割合が増えるとともに、機械や電機 など設備費の占める比重が多くなり、施工の機械化・プレハブ化も進行する。そのため、建設就労者の工事総額に占める割合は減少する。同時に、これら材料や 設備、機械の供給先は大手メーカーや商社が主になり、地域の建材業者の需要に結びつかなくなるわけだ。公共事業の他産業への経済波及効果も縮小されること になる。」(p.84)


UP:20070722
1990年代
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