HOME > BOOK >

『労働とジェンダー』

竹中 恵美子 編,宇仁 宏幸・服部 良子・井上 信宏・三山 雅子・吉田 義明・山田 和代・北 明美・柚木 理子・久場 嬉子 20010305 明石書店,叢書,現代の経済・社会とジェンダー,第2巻,284p.

Tweet
last update:20161018

このHP経由で購入すると寄付されます


竹中 恵美子 編,宇仁 宏幸・服部 良子・井上 信宏・三山 雅子・吉田 義明・山田 和代・北 明美・柚木 理子・久場 嬉子 20010305 『労働とジェンダー』,明石書店,叢書,現代の経済・社会とジェンダー,第2巻,284p. ISBN-10: 4750313823 ISBN-13: 978-4750313825 3,800+ [amazon] [kinokuniya] ※ f03, w02, ml/2002e

■内容

(「BOOK」データベースより)
 本書は、フェミニズム労働論の立場にたって、戦後日本の労働のジェンダー分析を行ったものである。第2部以下の各論では、日本の労働におけるジェンダー的特質を規定している要因は何か、を明らかにすることに焦点をおいている。

■目次

第1部 総 論
第一章 
新しい労働分析概念と社会システムの再構築――労働におけるジェンダー・アプローチの現段階  竹中恵美子著
1.労働の再定義をめぐって
2.労働力の女性化と社会的再生産様式の変容
3.雇用における男女平等の新段階

第二章
日本経済の不安定化とジェンダー構造  宇仁宏幸著
1.資本主義、市場、ジェンダー
2.雇用形態と賃金水準のジェンダー格差
3.雇用と賃金の変動パターン
4.景気循環パターンの変化とマクロ経済の不安定化

第2部 「雇用の女性化」とジェンダー構造
第三章
戦後日本の労働組合における家族賃金の形成と展開  山田和代著
1.敗戦直後の賃金体系に描かれた「労働者」
2.高度成長期の労働組合の賃金政策
3.日本の賃金制度とジェンダー

第四章
戦後日本の労働市場政策の展開とジェンダー
1.「労働力の女性化」の進展と雇用の性差別
2.積極的労働市場政策の展開と女性労働
3.雇用の流動化と男女平等

第五章
経済のサービス化と労使関係
ビルメンテナンス業の中のジェンダー構造  北明美著
1.ビルメンテナンス業の労働者構成
2.ビルメンテナンス業の賃金・労働条件
3.ビル掃除の技術的課題と新たなジェンダー化
4.ビルメンテナンス業と人材派遣業
5.ビルメンテナンス業の雇用問題と労働組合運動

第六章
大競争時代の日本の女性パート労働  三山雅子著
1.労働力のパートタイマー化の深化
2.情報ネットワーク化の進行とパート労働
3.大競争時代と日本の女性パートタイマー

第七章
「ワークシェアリング」とジェンダー  柚木理子著
1.ドイツにおける雇用の再編期の労働時間をめぐる労使間対立
2.ドイツにおける「ワークシェアリング」とジェンダー
3.日本の「ワークシェアリング」を考えるために

第3部 農業,ボランタリー・セクターのジェンダー構造
第八章
農村労働市場と農家女性労働力  吉田義明著
1.農村労働市場の展開過程
2.直系家族制農業と女性
3.現段階における農業社会の変容と農家女性労働

第九章
ケア・ワークとボランタリー・セクター  服部良子著
1.福祉の供給主体
2.世帯経済単位とジェンダー分業
3.ケア・ワークとジェンダー分業
4.ビランタリー・セクターとインフォーマルのケア供給
5.女性のアンペイド・ワークとボランタリー組織

■概要

■第一章 新しい労働分析概念と社会システムの再構築――労働におけるジェンダー・アプローチの現段階

はじめに
有償労働(Paid Work)、無償労働(Unpaid Work)におけるジェンダー・バイアスがいかなる社会システムやイデオロギーによって支えられてきたのか、を明らかにし、これを克服するために、労働そのものの再定義と再構成を行うと共に、その上にたって、PWとUWがジェンダー・フリーになるためには、いかなる社会システムが必要なのかを明らかにする。(p16)

1.労働の再定義をめぐって
@新しい労働分析概念と方法の提起
60年代後半に始まる現代フェミニズムの労働概念と分析方法に関しての5つの問題提起
・労働概念の広義化(PWとUWの再構成と分析方法における二分法批判、ならびに歴史・人類学的方法の提起)
・時間利用調査へのジェンダー視点の導入と、UWの測定・評価・政策化
・UWの独自性の発見、とくにケア労働の再概念化
・社会的市民権におけるジェンダー分析と、その再構築アプローチ
・労働力再生産構造のグローバル化(p17)
A労働分析のジェンダー・アプローチとその推移
第一期(1960年代末―70年代):私的家父長制
無償の家事労働と資本制システムとの間の構造分析に関心が向けられる
第二期(70年代末―80年代):公的家父長制
分析の焦点が家族から市場へ(「労働の女性化」)
第三期(80年代半ば―90年代):ジェンダー化した国家
「福祉国家」の研究の展開

2.労働力の女性化と社会的再生産様式の変容
@資本制は性に中立か
性差別の物質的基礎となっている家族を経済単位とする労働力商品化体制が、資本蓄積様式の変化によってどのように変容し、性差別の物質的基礎を掘り崩さざるをえないか、資本制のもつ文明化作用とその条件を明らかにする。(p27)
A社会的再生産様式の変容
資本蓄積体制の変化は女性労働需要に大きく作用し、「労働の女性化」に影響を与えた。(背景)

3.雇用における男女平等の新段階
@ジェンダー。ニュートラルな社会の再構築
PWとUWの性による偏りをなくす構造調整政策が、男女の実質的平等を実現する。
A日本におけるPWとUWのジェンダー・ギャップとその課題
UWを「社会的に有用な価値生産を担う」労働と位置付け、女性、男性もまた若者も熟年も、それぞれライフステージに合わせた働き方を選べる自由度の大きい男女共同社会に転換することを目指す。

■第二章

1.資本主義、市場、ジェンダー
日本の1970年代から90年代にかけての、労働に関するジェンダー構造の変化が、経済の不安定化とどのように関連しているかを検討。
2.雇用形態と賃金水準のジェンダー格差
雇用形態と賃金水準に関するジェンダー格差を検討し、かなり大きな格差が存続していることを明らかにする。
3.雇用と賃金の変動パターン
雇用と賃金が景気循環に対応してどの程度フレキシブルに動くかという問題を検討。
4.景気循環パターンの変化とマクロ経済の不安定化
雇用と賃金の変動パターンの変化が80年代後半以降に日本経済が不安定化した要因のひとつであることを明ら
かにする。(p57)

■第三章

山田 和代 20010301 「戦後日本の労働組合における家族賃金の形成と展開」
 竹中編[20010301:77-101]

1.敗戦直後の賃金体系に描かれた「労働者」
2.高度成長期の労働組合の賃金政策
3.日本の賃金制度とジェンダー
はじめに
戦後日本の賃金制度について「家族賃金」という概念をもちいて、賃金制度に内在する性差別性格を歴史的に
検討する。(p77)

1.敗戦直後の賃金体系に描かれた「労働者」
戦後日本の賃金制度の「原型」といわれる電産賃金体系を事例として、賃金体系の作成過程で「労働者」とそ
の「家族」がどのように描かれたかをみることで家族賃金の性格を示す。

2.高度成長期の労働組合の賃金政策
・女性労働者の組織化と賃金要求
・男女同一賃金の「実現」へ
・いわゆる「世帯賃金」の大衆化

おわりに
家族賃金の克服の一つの鍵は、戦後の労働組合のなかで労働者によって抱かれてきたこれまでのジェンダー役割から脱却し、「自分の妻も労働者ある」という認識に基づいた賃金制度への大転換にある。(p101)

■第四章

1.「労働力の女性化」の進展と雇用の性差別化
第二次大戦後の日本を対象に、女性の労働市場への参入のあり方と労働市場政策の関係を、日本経済の発展とと
もに変容を遂げた労働市場政策の史的展開をふまえて明らかにする。(p103)

2.「積極的労働市場政策」の展開と女性労働
@高度経済成長と「積極的労働市場政策」(p113)
・高度経済成長と労働市場政策の展開
・経済政策にみられる女性労働力の活用
・女性労働者の二面性と勤労婦人福祉法
A低成長期の女性パートタイム労働者の拡大と企業中心社会の形成(p118)
・低成長経済への移行と女性労働
・企業中心社会の形成、能力主義の導入と日本型福祉社会の展開
B家族責任をめぐる男女平等と雇用の流動化の進展(p122)
・国際的な男女平等の潮流と男女雇用機会均等法
・雇用の流動化(労働者派遣法の成立、パートタイム労働の認知)
・女子保護規定の見直し

第五章 経済のサービス化と労使関係

ビルメンテナンス業の他の職種にも多かれ少なかれ見られる賃金と労働条件などの問題。これらの問題をめぐる国の政策や業界の取り組み、労働組合の運動などに言及しながら、ビルメンテナンス業のジェンダー構造を考察する。具体的な仕事内容、従事者の性別、年齢を労働時間、賃金などを考慮の上。

第六章 大競争時代の日本の女性パート労働

1.労働力のパートタイマー化の深化
統計から見た日本のパート労働の姿
・週労働時間が通常より少し短いreduce hours work
・週労働時間およそ15〜29時間のhalf-time jobs
・週労働時間10時間とか15時間未満のように短いmarginal work(p169)

2.情報ネットワーク化の進行とパート労働
情報化・モバイル・コンピュータリングは仕事の内容を簡単化させたり、業務遂行に必要な労働量を減少させた仕事を生み出している。(p179)

3.大競争時代と日本の女性パートタイマー
@変化するパートの人事管理制度
90年代に以降、女性パートに依存している産業において人事管理システムがどのように変化しているか。
A大競争の帰結
女性パートの人事制度の動向が、企業活動の情報ネットワーク化が進行するなかで、パートの待遇にいかに結実
しているかを探る。(p184)

第七章 「ワークシェアリング」とジェンダー〜ドイツにおける1970年代終わりの議論を中心に〜

はじめに
ワークシェアリングとは広く「仕事の分かち合い」をすることだと理解されている。が、定義はさまざまである。オイルショック後の景気後退期の高失業率対策として、ヨーロッパを中心として議論されていた「ワークシェアリング」とは、限られた総雇用量をより多くの労働者で分かち合うことを進める考え方であり、何らかの形で総雇用量を再分配していこうとするものである。(p193)

1.ドイツにおける雇用の再編期の労働時間をめぐる労使間対立
1970年代半ばから1980年代はじめのドイツにおける労働時間をめぐる労使の対立状況を振り返る。
@使用者の「新しい労働時間政策」―労働時間の「フレキシブル化」
A労働組合の労働時間政策の転換―雇用対策としての「ワークシェアリング」
B「ワークシェアリング」対「フレキシブル化」

2.ドイツにおける「ワークシェアリング」とジェンダー
@誰と、どのように「仕事を分かち合う」のか
Aドイツのワークシェアリング批判
おわりに
日本の「ワークシェアリング」論の考察。ジェンダー構造の強化に加担しないように、改めて労働時間の配分を
とらえ直し、フルタイムとパートタイムの階層化を伴わない「ワークシェアリング」を、さらに「総労働時間」
の配分という観点から有償労働と無償労働の男女間の「ワークシェアリング」を提唱していくことが重要。(p216)

第八章 農村労働市場と農家女性労働力

はじめに
日本における農家女性労働力の歴史変化と、家族形態の歴史的特質の双方を視野に入れた、現段階における農村労働市場の変化とその農家女性への影響(p219)

1.農村労働市場の展開過程
@農業生産構造の再編と地域産業構造の転換
A農業生産力の展開と農家就業構造の変化

2.直系家族制農業と女性
@直系家族制とは何か
A農家女性のM字型就労出現とその含意

3.現段階における農村社会の変容と農家女性労働
「いえ」の労働から自分の労働へ―家族員個々の主体性の変化

第九章 ケア・ワークとボランタリー・セクター

1.福祉の供給主体
今日の福祉国家においては、国家のみが福祉の供給者ではなくさまざまな部門からの多元的な福祉供給によって支えられて成り立つ。(p245)

2.世帯経済単位とジェンダー分業
@世帯経済労働の労働過程の変化
Aケア・ワークと家事労働の主婦への集中
B生活水準―アメニティと共同性
C生活手段の「所有」と主婦のジェンダー役割

3.ケア・ワークとジェンダー分業
@制度化するジェンダー分業
A主婦の労働力化とケア・ワーク

4.ボランタリー・セクターとインフォーマルのケア供給
@インフォーマル・セクターの基盤
Aボランタリーという認識と動因
Bボランタリー・セクターの労働と福祉政策

5.女性のアンペイド・ワークとボランタリー組織
福祉すなわちケア・ワークの供給は、インフォーマル領域のアンペイド・ワークをよりフォーマルに利用することによって福祉国家が実現していく方向にある。(p278)


……以上。コメントは作成者の希望により略、以下はHP制作者による……

■引用

■書評・紹介

■言及



*作成:田中 好美(立命館大学3回生) 更新:焦 岩
UP: 20020731 REV: 20161018
フェミニズム (feminism)/家族/性…  ◇女性の労働・家事労働・性別分業  ◇2002年度講義受講者へのメイル  ◇身体×世界:関連書籍  ◇BOOK
TOP HOME (http://www.arsvi.com)