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『看護のための精神医学』

中井 久夫・山口 直彦 20010315 医学書院,320p.

last update:20101104

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中井 久夫・山口 直彦 20010315 『看護のための精神医学』,医学書院,320p. ISBN4-260-33116-7 2940 [amazon][kinokuniya]

■内容


内容(「MARC」データベースより)
看護できない患者はいない-。「病む人」の苦しみと回復の経過を描き、精神保健にかかわるあらゆる人々を静かに支えつづける力となる一冊。読んでおもしろい教科書であり、医療行為の言語表現における一つの到達点でもある。

■目次


第2版刊行にあたって

1 はじめに考えておくこと
 この本をつらぬくもの
 精神科の病い
 精神科看護に求められること

2 精神医療とはなんだろうか  「こころ」と「からだ」
 「病気」と「原因」

3 症状をどうみるか−特異症状と一般症状(非特異症状)
 非特異症状の意味
 各種の非特異症状
 感情のあり方

4 睡眠と覚醒
 睡眠のリズムと夢作業
 睡眠障害
 睡眠の質
 睡眠を看護に生かす

5 精神療法
 各療法の説明をする前に
 精神分析
 精神分析の限界と新しい精神療法
 治療の間隔について
 わが国独自の精神療法
 看護における転移

6 薬物療法その他
 精神科と薬物療法
 抗精神病薬
 抗不安薬
 睡眠導入薬
 電気ショック療法

7 統合失調症圏の病気
 統合失調症という病名について
 統合失調症とはなにか
 統合失調症のおもな症状
 患者が訴えたい症状
 幻覚・妄想について
 患者の疲労感について
 統合失調症患者の自己感覚を推しはかる
 統合失調症患者にはおこらないこと
 統合失調症の分類

8 統合失調症の経過・I
 統合失調症の予防と家族
 子ども時代の危機要因
 学齢期から思春期の危機要因
 成人以降

9 統合失調症の経過・U
 統合失調症の経過をどうみるか
 発症前の状態
 発病(急性精神病状態)
 急性状態の後期
 回復期前期
 回復期後期
 慢性統合失調症

10 躁うつ病圏の病気
 「躁状態」と「うつ状態」
 病前性格と発病状況
 躁うつ病の治療と看護

11 神経症圏の病気
  神経症とはなにか
 a 発達神経症
  小児神経症の代表としてのチックとジル症候群
  単純恐怖症
  強迫症
  対人恐怖症とひきこもり
  離人神経症
  妄想症(パラノイア、偏執症)
  発達神経症とは
 b 退行神経症
  退行神経症とは
  不安神経症とは
  ヒステリー
  心気症
  心身症
  神経症性うつ病
  境界例(境界性人格障害)
  解離性障害
  多重人格(解離性同一障害)
  現実神経症
  外傷神経症

12 人格障害
 人格障害とはなにか
 人格障害の人への接し方

13 外因性精神病
  外因性精神病とはなにか
  意識の変化
  痴呆と器質性人格障害
  記憶の障害
 a てんかん
  てんかんの発作
  てんかん者の性格変化
  診断のための観察ポイント
  てんかんの治療と看護
 b 老人性変化による精神障害(アルツハイマー病)
 c 精神遅滞
 d 症状精神病
  内分泌精神症候群
 e 薬物(物質)使用による精神障害
  アルコールによる精神障害
  覚醒剤による精神障害
  有機溶剤による精神障害

14 精神科と他科との境界にある問題
 コンサルテーション―リエゾン精神医学
 心身症
 摂食障害

15 現代精神医学を位置づける
 〈科学〉と〈技術〉からみた医学・看護学
 〈歴史〉からみた医学・看護学
 精神医学小史

付録
1 精神科病院についての覚え書
2 症例検討に提出するノートの書き方について
3 仕事のみならず、一般に生活再開にあたっての助言
4 ストレスとつきあうには

索引
あとがき

■引用

■書評・紹介

○編集者白石正明による紹介

書名:  看護のための精神医学
著者:  中井久夫+山口直彦
      (中井氏は神戸大学名誉教授・甲南大学教授、山口氏は兵庫県立光風病院院長)
仕様:  B5版、並製、320ページ
定価:  2800円+税
発行日:2001年3月15日  ISBN4-260-33116-7 C3047 Y2800E [kinokuniya]

 「私は決して教科書あるいは概説、総説、解説の書けない人間であることを自覚している(看護教科書という例外があるが、これは意気に感じての例外である)」。
 『治療文化論』(岩波同時代ライブラリー)のあとがきで、中井久夫氏はこう記しています。その「例外」である看護教科書とはどんなものなのか一度見てみたいと思っていましたが、2年前ひょんなきっかけから、それが20年近く前の小社看護教科書「系統看護学講座」の数章分であること、しかしその本は既に絶版になって久しいことを知りました。地下の倉庫には、資料用に1冊だけ残っていました。
 さらに中井氏によれば、当時書いたにもかかわらず紙幅の関係で削った分が半分以上あるとのこと。探しまわったあげく、その残りの原稿はけっきょく共著者の山口直彦氏が院長をつとめる兵庫県立光風病院の倉庫の奥深く、ビニール袋に包まれて眠っていました。
 元の教科書に掲載されていた部分が3分の1、ビニール袋に眠っていた部分が3分の1、PTSDや多重人格等をふくめて神経症を中心に、今回のために中井氏がまったく新しく書き下ろした部分が3分の1、これらが組み合わさって本書が出来上がりました。



 中井氏は『最終講義――分裂病私見』(みすず書房)で、こころ病める人の苦悩と回復の経過を描き、多くの読者の感動を呼びました。本書ではさらにそれを、より詳細かつ立体的な姿にして、私たちの前に差し出してくれたように思います。
 精神分裂病患者には世界がどのように見えているのか、うつ病患者にとっての「空気」はどのくらい重いのか、アルコール依存症者はなぜ周囲から酒を「やめさせてもらえない」のか、「信なき理解」にさらされてきた境界性人格障害といわれる人たちは他者に何を求めているのか――
 本書のどこを開いても、その記述の《切実感》に胸が苦しくなってきます。それはおそらく、本書が診断・治療をおこなう医者に向けて書かれたものではなく、病気の種類がなんであれ、その人のそばに寄り添うことを職業とする「看護者」に向けて書かれたためなのです。
 本書のあとがきで中井氏は「蒸留水のような教科書が人をアヘンよりも無気力にすることは、学生・生徒であった経験のある人はだれでも知っている」と述べ、「行間をも書く」決意をされたといいます。まさに「読んでおもしろい教科書」の誕生です。また、医療という相互行為の言語表現における一つの到達点でもあるでしょう。専門家以外の方々にもぜひ味わっていただきたい一冊です。
[編集担当]医学書院看護出版部:白石正明
TEL 03-3817-5785 FAX 03-5804-0485  m-shiraishi@igaku-shoin.co.jp
[購入問合せ]医学書院販売部:TEL 03-3817-5657

■言及



*更新:樋口 也寸志
UP:2001 REV:20071219(ファイル移動),20101104
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