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『性同一性障害の基礎と臨床』

山内 俊雄 20010210 新興医学出版社,338p.


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■山内 俊雄 20010210 『性同一性障害の基礎と臨床』新興医学出版社,338p. ISBN-10:4880024732 ISBN-13:978-4880024738 \5040 [amazon] ※ t05

■内容

■目次
第T章 性同一性障害の概念の成立と歴史的背景 1
A.ジェンダーの概念の成立(澤田 新一郎)1
 1.異性装者の研究 1
 2.ジェンダーの概念の形成 2
 3.ジェンダーの構成要素と性同一性障害 3
 4.生物学的要因説と心理社会的要因説 5

B.我が国における"性転換医療"への道(山内 俊雄)9
 1.裁判事件としての「性転換手術」 10
 2.性転換手術の倫理性を問う申請と判断 13
 3.ジェンダークリニック創設と診断,推進 17
 4.その後の変化 19

第U章 性同一障害の臨床 21
A.基本的なことがら(山内 俊雄)
 1.性同一性障害の定義 21
 2.性同一性障害をどう理解するか 21
 3.性の同一性とその障害 23
 4.性同一性障害の人でみられる症状の理解 23

B.性同一性障害の臨床像(加澤 鉄士)
 1.性同一性障害の具体例 25
 2.精神科受信者の概要 31
 3.性同一性障害の分類 34
 4.精神症状の併有化 35
 5.小児期の性同一性障害 36

C.性同一性障害の診断(山内 俊雄)39
 1.性同一性障害の診断的位置づけ 39
 2.基本的症状 43
 3.診断について 43
 4.診断の困難性 46
 5.性同一性障害の診断に関係したことがら
 6.リアルライフ・エクスペリエンスについて 51

D.性同一性障害の治療(山内 俊雄)54
 1.治療の原則 54
 2.性同一性障害の精神療法(塚田 攻)62
 3.性同一性障害のホルモン療法(内島 豊)70
 4.性同一性障害の外科的治療(原科 孝雄)90

E.性同一性障害の周辺(阿部 輝夫)90
 1.性同一性障害関連の日本の現状 90
 2.性転換症 94
 3.考察 100

F.性同一性障害の心理的対応(都築 忠義)108
 1.心理診断と精神療法 108
 2.診断における心理的問題 109
 3.性同一性障害の発達的側面と心理的対応 112

G.性同一性障害の診断と治療に関わる組織(豊嶋 良一,山内 俊雄)116
 1.性同一性障害の診断と治療に関する組織 116
 2.国内における医療チームの組織 121
 3.今後の課題 123

第V章 心理・社会的側面 124
A.性同一性障害者の抱える法的問題(針間 克己)124
 1.名の変更 124
 2.性別表記の変更 127
 3.婚姻 134
 4.その他 135

B.性同一性障害者の抱える心理・社会的問題(東優子)141
 1.性同一性障害が精神疾患である「その他」の理由 142
 2.諸刃の剣となるサバイバル・スキル 146
 3.コミュニティの連帯を脅かす外的要因 147

C.性同一性障害者の社会支援(山内 俊雄)151
 1.どのような具体的問題を抱えるか 151
 2.トランスジェンダーの自助支援グループ 154
 3.医師の組織 156

第W章 性同一性障害の成因 158
A.性の分化からみた性同一性障害の成因(山内 俊雄)158
 1.成因を考えるに当たって 158
 2.生物学的性別の分化 159
 3.性同一性障害の成因 164

B.神経解剖学的に見た性同一性障害(深津 亮)170
 1.脳の形態学的性差 170
 2.性同一性障害と脳の形態 182

C.神経化学・分子生物学からみた性同一性障害(澤田 新一郎)188
 1.身体的性分化のメカニズム 188
 2.脳構造と性ホルモン 190
 3.脳における性ホルモンの作用機構 191
 4.性行動を規定する遺伝子 191
 5.脳の性分化と性同一性障害 193

おわりに(山内 俊雄)196
再版の「おわり」にあたって(山内 俊雄)197

資料1 「性転換治療の臨床的研究」に関する審議過程と答申(埼玉大学倫理委員会)199
資料2 性的倒錯者に対して性転換術を行った医師につき優生保護法28条違反の罪の成立を認めた事例 222
資料3 Johns Hopkins Gender Clinic Guideline 224
資料4 Standards of Care: The Hormonal and Surgical sex Assignment of Gender Dysphoric Persons 225
資料5 性同一性障害に関する答申と提言(日本精神神経学会 性同一性障害に関する特別委員会)227
資料6 性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン(第2版)(日本精神神経学会 性同一性障害に関する第二特別委員会)241
資料7 性同一性障害の性別の取扱いの特別に関する法律 269

■引用
第T章
B.2.性転換手術の倫理性を問う申請と判断 13
1)医療の対象か
「性別を変えるという希望が,果たして医療の対象になりうるかどうかが問題となった。すなわち,もし,性転換を望むことが本人の嗜好や趣味の問題であれば,それに医療が手を貸すことの倫理性が問われることになからである。
 その点については,本人の意図に関わらず,自らの生物学的性別と性の自己意識の不一致からくる苦痛や悩みは強く、中には自殺を図る人もいるほどであること,社会との軋轢や心理的負担が強く,生活が疎外されることが少なくないこと,性同一性障害が生ずる背景に生物学的な原因が想定されていることなどから,「性同一性障害」という『疾患』が存在することを認識し,その苦痛を解消することに医療が手をさしのべる(治療する)ことができるのであれば,積極的に関与すべきである」という判断に至った。すなわち,医療の対象として認定したわけである。」(13)

5)手術療法の倫理的問題
A不可逆的な手術をすることは避けるべきではないか
「手術後に性別を転換したことを後悔するものが2%前後おり,自殺をするものが0.8〜2.1%あるという事実や,手術そのものの失敗,あるいは悲劇的結果が10〜15%あるという報告に基づき,現段階ではせめてホルモン療法までにとどめ,もう少し日本におけるデータの積み重ねをした上で,手術療法の段階にまでいくのが良いのではないかという議論があった。
 外国の論文を猟歩した結果,性別の転換をしたものが後悔したり,自殺したりするケースが多いのは,きちんとした診断と治療のステップを踏まなかった>16>りした場合に多く,特に診断基準や治療のガイドラインのない時代にそのような問題が多く発生し,ガイドライン作成時には問題の発生は減少していることが明らかになった。また,自殺例などは,手術後の心理社会的なフォローがきちんと行われていないことからくることもわかった。その結果,診断と治療のガイドライン作成とともに精神的援助の重要性を指摘したが,そのことが結果的には「学会答申」の中で,心理士やカウンセラーの関与の重要性を強調することに結びついた。」(15-16)

第U章 性同一性障害の臨床
C.性同一性障害の診断
4.診断の困難性
「(1)ジェンダー・アイデンティティが主観的認知・認識であることからくる困難
 性の自己意識は本人が自らの性別をどう意識し,認知するかということである。そのためにジェンダー・アイデンティティの決定に当たって,次のような問題を抱えることになる。
@本人の主観的供述によらざるを得ない
性の自己意識は,本人の表現をとおして知るほかなく,外からとらえられるのは服装や挙止,振る舞い,あるいは性別役割の取り方などをとおしてである。そのために,後に述べるように,少なくとも一年以上の精神療法期間あるいは望む性別での生活体験(real(true)life(experience))」を行って,本人ならびに治療者が共に性に対する自己意識を確認する作業が必要となる。」

■書評・紹介

■言及



*作成:高橋 慎一 
UP:20080826 REV:
トランスジェンダー/トランスセクシャル/性同一性障害/インターセックスBOOK
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