HOME > BOOK >

『ことばとジェンダー』

中村桃子 20010201 勁草書房,249p. ISBN: 4326652470


このHP経由で購入すると寄付されます

 この本の紹介の作成:吉田周平(立命館大学政策科学部3回生)

■中村桃子 20010201 『ことばとジェンダー』,勁草書房,249p. ISBN-10: 4326652470 ISBN-13: 978-4326652471 2730 [amazon][kinokuniya] ※ b s00

■内容(「BOOK」データベースより)
“ことばを使う行為”を通して、私たちはどのような女/男であろうとしているのか。“ことば…”はジェンダーの権力関係にどう左右されるのか/どう変革しているのか。ジェンダーに関するイメージ・規範・カテゴリーは“ことば…”によってどのように作り上げられ正当化され普及しているのか?研究史と最新の成果。

内容(「MARC」データベースより)
「ことばを使う行為」を通して、私たちはどのような女・男であろうとしているのか。「ことば」と「ジェンダー」に関するこれまでの研究の歴史的発展を跡付け、現在の理論を概説し、最新の研究を紹介する。

■目次

序章 フェミニズムから見た「言語とジェンダー研究」
1章 レイコフとスペンダーの残したもの
2章 社会言語学における「性差研究」とは
ディスコース分析     異性間と同性間の会話はどう違うのか
3章 「言語とジェンダー研究」の3つのモデル 
「支配モデル」 「文化差モデル」 「劣った言語モデル」
4章 ジェンダーの構築
5章 男性性の構築
6章 女性性・メディア・消費
7章 セクシュアリティ
8章 イデオロギーとしての日本語の「女言葉」

■紹介

1章 レイコフとスペンダーの残したもの

1.レイコフの「女の言語」という概念
女は説得力のない話し方をする
@ 女が社会的に地位に低い「非権力者」「部外者」だから
A 自己主張はよいものではない、レディとしてふさわしくない、女らしくない、と信
じ込むように社会化されているから
説得力のない話し方をする結果、女は社会的に一人前として認められないのであ
る(p17‐18)

2.レイコフが指摘した女の言語行動を取り巻く問題
(1) バイリンガル−女は普通の言語と女の言語の両方を習得しなければならないので、
その意味でバイリンガルになることを強いられる
(2) ダブルバインド−「女の言語」を習得すれば女らしいといわれるが、説得力がなく
自信がないと非難される。習得しなければ、女らしくないと非難される
(3) 「ステレオタイプ」と「言語規範」−「女はこのように話すものだ」というステレオタ
イプや「女はこのように話さなければならない」という規範が存在する(p18-19)

3.レイコフへの批判とその後の展開
女がよく使う付加疑問文は女の自信のなさをあらわしているのではなく、聞き手
との連携を確立し聞き手が会話に参加することを促す働きをしていると考えるこ
ともできる
(ホームズ)(p22)

4. スペンダー−女の「沈黙」と「疎外」
言語においては、男が人間の標準であり、女は「不可視、男でない存在、例外」とみな
される(p25)⇒女の沈黙 ex) 男の意味を持つmanが人間の意味にも使われる
男が男の視点から言語を作り出し、世界を名づけ、自分の経験を記号化する過程から
女を排除してきたために、言語を前にして女は沈黙するしかない⇒女の疎外

2章 社会言語学における「性差研究」とは

1. 社会言語学の「社会成層化」という枠組み
「社会成層化」とは、話し手の社会経済階級・どの程度改まった言葉づかいか・標準形
の使用頻度、の3つの要因の相関関係を示したもの(p32)

2. 女は男より多く標準形を用いることを示した研究
ほとんどの階級・改まり方の異なる言葉づかいにおいて、女のほうが男よりも標準形
を用いることが多い。女は発音を意識できるときは、標準的発音をしようとする傾向
が男よりも強い−トラットギル(p33-34)

3. なぜ女は男よりも標準形をもちいるのか−性差を説明する
女の話し手が標準形に結びついた社会的権威のイメージを自分を権威付けようとする
ために女は男よりも標準形を使う(p35)
男の話し手は、非標準形の持つ、隠れた権威を示すために非標準形を使う(p36-37)

4. 社会成層化の問題点
社会成層化のアプローチは、話し手の属性と言語使用の相関関係を明らかにするだけ
で、それ以上何も説明しない−カメロン
男と女を対立させて説明しようとする試みの過程で、「男=規範」「女=逸脱」という性
差別的な2重基準が繰り返されたという事実を覚えておかなければならない(p39)

5. 性差研究の根本的問題−本質主義
本質主義とは、ジェンダーなど人を規定している要素はその人に内在している特質の
1つと捉える(p39-p40)。しかし一概に言えないことがその後の研究によって明
らかになる⇒非標準形を頻繁に使うノースキャロライナの例
全ての女に共通する言語行動を想定することは無意味であるばかりか、有意義な研究
を妨げる(p42-p46)

3章 ディスコース分析 異性間と同性間の会話はどう違うのか

1.ディスコースとは
ディスコース=言葉を使う行為
ディスコースは単に社会を映し出しているだけではなく、われわれの知識・人間
関係・アイデンティティーを「構築する」とみなす(p52-p53)

2.異性間の会話−会話における支配
女が話題を提供し会話を促しているのに比較して、男は女の話に割り込み、話を
促す努力をせずに、女が提供した話題を放棄する傾向にある(p53)
重なり・割り込みが多い⇒社会制度の支配と同様に、会話という制度も男が支配
している−ツィマーマン・ウェスト(p54-55)社会に性別役割分業があるのと同
じように会話にも有り、女は会話においても報われない努力を強いられる「会話の
下働きである」−フィッシュマン(p56)

3.同性間の会話−協調的会話と競争的会話
男と女では会話を行う目的や方法が異なる。女は、参加者同士の連帯やつながり
を重視し、そのために会話の情緒的機能を活用した方法をとる。男は、会話に地
位の確認や誰がより上であるかを示す働きを求め、情緒的機能よりも指示的機能
を重視する(p67)

4章 言語とジェンダー研究の3つのモデル

「支配モデル」 「文化差モデル」 「劣った言語モデル」
劣った言語モデルとは、女の話し方は説得力に欠ける、劣った話し方であり、女は言
葉の使い手として劣っているという考え方(p71)

1.支配モデルとはなにか
男支配は会話レベルにも当てはまり、男と会話するときの女は社会的弱者という
立場を背負って強者である男と関わり合い、男支配は個々の言語行動の中にパタ
ーン化して繰り返し再生産される(p72)

2.支配モデルの対する批判

3.文化差モデルとはなにか
ジェンダーによる言語行動の違いを文化差と捉える考え方
男と女に異なった下位文化が存在するために、会話に目的・方法が異なる(p75)

4.文化差モデルに対する批判
6. 3つのモデルに共通した問題点
@ 社会構造と言語行動の関係が明確でない
A 本質主義のジェンダー観に基づいている

5章 ジェンダーの構築

1. ディスコースと社会構造はどのような関係にあるか
社会の中の知識や個人のアイデンティティーは厳然として存在しているのではな
く歴史的・社会的に作り上げられ、その過程に言語が大きく関わっている⇒構築
主義(p90)
ディスコースにより、まず真理と思われるものがカテゴリーとして形づくられ、
それ以外を異常なものとしてしまう

2. ディスコースとアイデンティティーはどのような関係にあるのか
特定の人間だから特定のアイデンティティーを持つのではなく、特定のアイ
デンティティーを持つから特定の人間である。特定のディスコースを行うか
らこそ特定のアイデンティティーが生まれる(p102-110)

3. ジェンダーアイデンティティーとジェンダーイデオロギー
ジェンダーイデオロギーとは、ディスコースのなかで作られた様々なジェン
ダーアイデンティティーが、特定の権力関係の中で歴史的に構造付けられた
イデオロギー
その時代背景に応じて、イデオロギー・アイデンティティーは操作される
(p111-120)

4. 構築主義に対する批判
構築主義から考えると、ジェンダーは多様であると考えられるが、実際社会
には、2項対立のジェンダー観が信じられていて、その事実がディスコースに
大きな影響を与えている(p123-124)

5. これからの言語とジェンダー研究
研究の対象が、性差ではなくジェンダーアイデンティティーの構築に移行す
るのではないだろうか(p125-130)

6章 男性性の構築

1. 多様な「男性性」と「主導的男性性」
多様な男性性の中にはその文化で理想とみなされる「主導的男性性」がある
それ以外のものは従属的男性性(p132-140)

2. 主導的男性性と従属的男性性
従属的男性性は、主導的男性性によって攻撃され、それによって主導的男性性は
より強固のものとなる(p141-144)

3. ジェンダー関係の変化に対する抵抗
インターネットという新しいツールの登場により、女性の発言が増えているが、
やはりその中においても、男性が会話の主導権を握る、もしくは握ろうとする
(p145-149)

7章 女性性・メディア・消費

1. 消費者としての女性性
「女らしい」を作り上げるための消費行動

2. メディアのディスコース
女は生まれながらに女だというジェンダー観があるがゆえに、文化的に達成され
る女性性があることと矛盾が生じる⇒雑誌などで「なりたい女になる」という標語
がごく普通に使われる 雑誌のディスコースが提示するのは文化的に達成される
女性性(p158-163)

3. 読者を構築する
雑誌のディスコースはその読者のディスコースに影響を与える(p164-166)

4. ジェンダーステレオタイプを作りつづけるメディアディスコース
社会のジェンダー関係の変化をいち早く取り入れていると考えられているメディ
アディスコースも、従来のジェンダーステレオタイプを再生産している
(p167-170)

5. メディアディスコースにおける創造的なアイデンティティー構築
女も消費構造やジェンダー関係の制約を受けながら、創造的にアイデンティティ
ーを構築しているという、メディアと女の多元的関係を模索する必要がある
(p171-178)

8章 セクシュアリティ

1. 性的志向・嗜好
異性愛者は職業や性役割から定義づけられるのに対し、同性愛者はセクシュアリ
ティから定義づけられる⇒同性愛者の他の属性が周辺化される(p180-190)

2. 性的欲望の構築
「能動的・攻撃的な男の欲望」と「受動的な女の欲望」が対比される
男の欲望⇒自然と爆発し、制御できないもの
女の欲望⇒セクシュアリティと結び付けられる(191-200)

9章 イデオロギーとしての日本語の「女ことば」

1. ジェンダー・イデオロギーとしての「女ことば」
女のディスコースは多様であり、女ことばが使われていないことも多い
⇒女ことばとは、女が実際に使っている言葉遣いではなく、抽象的な規範だと考
えることができる(201-204)

2. 女ことばの歴史的成立−「女ことば」概念の堅持
女の言語使用に関して、かなり早い時期から特定の言葉遣いを戒め、別の言葉遣
いを奨励する規範化がおこなわれていた⇒性別ジェンダーの確立
近代化に伴う国家による国民支配と性別イデオロギーの強化が言語面から実行さ
れる必要性が認識されていた(p204-210)

3.「女ことば」規範を正当化するディスコースの変化
女のディスコース実践が先に存在するのではなく、「女ことば」概念を堅持したい
という政治的動機があり、その結果この概念が女のディスコ−スを批判し、また
批判することを正当化してきた(210-216)

4. 「女ことば」の政治的機能
「女ことば」概念は、女のディスコースを規範となり、実際の女の相互行為を縛る
政治的役割を担う(217-220)

5. 女のディスコース実践とことば
「女ことば」概念とディスコース実践との関係は、「女ことば」規範に従うディスコ
ース実践を行い、男支配を再生産する一方、「女ことば」概念を資源として利用す
ることでアイデンティティーを作り上げ、男支配を転覆する関係がある
(p221-222)


……以上……
ことばとジェンダー
http://shopping.yahoo.co.jp/shop?d=jb&id=30793330
著者:中村桃子/著
出版社:勁草書房
ISBN:4-326-65247-0
発行日:2001年2月、価格:2,600円

ことばとフェミニズム
著者:中村桃子/著
出版社:勁草書房
ISBN:4-326-65184-9
発行日:1995年12月、価格:2,600円

婚姻改姓・夫婦同姓のおとし穴
著者:中村桃子/著
出版社:勁草書房
ISBN:4-326-65143-1
発行日:1992年11月、価格:2,000円

フェミニズムと言語理論
著者:D・カメロン/著 中村桃子/訳
出版社:勁草書房
ISBN:4-326-65116-4
発行日:1990年7月、価格:3,100円


UP:20020731 REV:
(gender/sex)  ◇フェミニズム2002年度講義関連  ◇BOOK
TOP HOME(http://www.arsvi.com)