『ニッケル・アンド・ダイムド』
Ehrenreich, Barbara 2001 NICKEL AND DIMED, Metropolitan Books
=20060728 曽田 和子 訳 東洋経済新報社,295p.
■Ehrenreich, Barbara 2001 NICKEL AND DIMED, Metropolitan
Books=20060728 曽田 和子 訳 『ニッケル・アンド・ダイムド――アメリカ下流社会の現実』東洋経済新報社,295p.
¥1,890(税込) ISBN-10: 4492222731 ISBN-13: 978-4492222737 [amazon]/[kinokuniya]
※
■内容(「BOOK」データベースより)
貧困から這い上がれない低賃金労働者たちの実態を描く。
内容(「MARC」データベースより)
日本にも迫りくる「ワーキング・プア」という悲劇。必死に働いても貧困から這い上がれない、アメリカ低賃金労働者たちの実態を描く。ミリオンセラーを記録
した衝撃の潜入ルポ。
■著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
エーレンライク,バーバラ
アメリカ屈指のコラムニスト。1941年、モンタナ州生まれ。1991年から97年まで『タイム』誌のレギュラーコラムニスト。現在は『プログレッシブ』
誌へ定期的に寄稿。そのほか『ニューリパブリック』『ネイション』『ミセス』『アトランティック・マンスリー』『ハーパーズ・マガジン』各誌のコラムニス
トとしても広く活躍。1980年に全米雑誌賞(National Magazine
Award)、1982年にフォード基金賞を受賞。現在、フロリダ州キーウエスト近郊に在住
曽田 和子
翻訳家。中部大学非常勤講師。東京外国語大学英米科卒業。南山大学大学院文学研究科英文学修士課程修了(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されて
いたものです)
■目次
序章 中流との決別―私はこうして低賃金で働くことになった
第1章 フロリダ州でウェイトレスとして働く
第2章 メイン州で掃除婦として働く
第3章 ミネソタ州でスーパーの店員として働く
終章 自分への通知表―格差社会で働くということ
訳者あとがき
■引用
「低賃金労働者としての私の働きぶりはどうだったろう。まずは少しばかり自分を褒めてあげてやることを許してもらえるなら、仕事そのものはずいぶんとよく
やったし、かなりな成果をあげたと自負している。博士号を持ち、通常の仕事では二週間ごとにまったく新しいことに取り組まねばならない人間にとって、単純
労働など「楽勝」だと思われるかもしれない。だが、それは違っていた。まず最初に私が知ったのは、どんな仕事も、どれほど単純に見える仕事でも、ほんとう
に「単純」ではないということだった。」(p.256)
「連邦準備制度理事会のアラン・グリーンスパン議長は、その「賃金インフレ」のわずかな兆しも見逃さないように常々監視を怠らないが、二〇〇〇年七月には
議会に対し、概して問題はなさそうだと嬉々として報告している。低い失業率と賃金上昇を結びつける経済法則はもはや意味をなさないのかもしれないとまで、
示唆しているのだ。これはつまり、需要と供給の法則はもう死んだも同然というようなものではないだろうか。この一見矛盾するように思える現象は、実は一つ
の幻想から生まれたものだと論じるエコノミストもいる。つまり、ほんとうは「労働力不足」などではなく、ただ、現在提示されている賃金で働こうとする人が
不足しているだけなのだと。これは「レクサス不足」だと主張するようなものだ。車一台に四万ドルも払う気のない人間にとっては、ある意味で、レクサスは不
足しているのだろう。」(p.266-267)
「そんなわけで、もしも低賃金労働者が、経済学的にいって必ずしも合理的な行動をとらないとしても、つまり、必ずしも資本主義の民主社会における自由な人
間として振舞わなくても、それは、彼らの置かれている立場が自由でも、けっして民主的でもないからだ。低賃金労働の職につくときは、まず市民的自由だの基
本的人権だのはみずから抑制し、ここがアメリカだということも、アメリカが当然擁護すると思われていることも忘れ去り、勤務時間にはただ口にチャックをし
て過ごすことを覚えなければならない。こうして日々、降伏しつづけた結果は、単に賃金や貧困の問題にとどまらない。大多数の市民が、目覚めている時間の半
分を、はっきり言って独裁制にも等しい状態のなかで過ごすとすれば、いったいこの国が世界に冠たる民主主義国家だなどと胸を張って言うことができるだろう
か。」(p.277-278)