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『来たるべき世界のために』

Derrida, Jacques ; Roudinesco, Elisabeth 2001 De quoi demain, Galilee
=20030128 藤本 一勇・金沢 忠信 訳,岩波書店,346p.


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■Derrida, Jacques ; Roudinesco, Elisabeth 2001 De quoi demain, Galilee=20030128 藤本 一勇・金沢 忠信 訳,『来たるべき世界のために』,岩波書店,346p. ISBN:4-00-022524-3 3800 [amazon][boople] ※ b

■岩波書店のHP
 http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/02/3/0225240.html

■紀伊国屋書店のHPより
 http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4000225243.html

二〇世紀後半を代表する哲学者デリダ―現実との格闘から紡ぎだされたその哲学は、明日の世界になにを語るのか。
フランスを代表する精神分析家ルディネスコを相手に、現在もっともアクチュアルな九つのテーマをめぐって繰り広げられるダイアローグ。
明日の世界のための、あるべき思考の可能性が鮮やかに浮かび上がる。

現実との格闘から紡ぎだされたデリダの哲学は,明日の世界に何を語るのか.自由や死刑という最もアクチュアルな9つのテーマをめぐって繰り広げられるダイアローグ.明日への,あるべき思考の可能性が鮮やかに浮かび上がる.

デリダ,ジャック[Derrida,Jacques]
1930年、アルジェリア生まれ。フランスの哲学・思想家
ルディネスコ,エリザベート[Roudinesco,Elisabeth]
1944年、パリ生まれ。83年、精神医学と精神分析史国際協会の設立メンバーとなり、現在は副会長を務める

藤本一勇[フジモトカズイサ]
1966年生まれ。早稲田大学第一文学部講師。フランス哲学専攻

金沢忠信[カナザワタダノブ]
1970年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻博士課程在学


■目次

1 みずからの遺産を選択すること
2 差異の政治
3 秩序化されない家族
4 予測不可能な自由
5 動物たちへの暴力
6 “革命”の精神
7 来たるべき反ユダヤ主義について
8 死刑
9 精神分析礼賛

■書評・紹介

◆中山 元 20050909 「書評:デリダ&ルディネスコ『来たるべき世界のために』」
 『書評空間 KINOKUNIYA BOOKLOG』
 http://booklog.kinokuniya.co.jp/nakayama/archives/2005/09/post.html

◆200611 『どうぶつのこころ』
 http://blog.goo.ne.jp/shax2081/m/200611

■引用・言及

5 動物たちへの暴力

 「ER 現代の科学主義の逸脱のなかでも、特に驚くべきものがひとつあります。それが私を驚かせるのは、功利主義や認知主義の見方と、法的理想と、いわゆるエコロジー的(あるいは「深層エコロジー」の)目標とが、そこではごちゃ混ぜになっているからです。念頭にあるのは、ピーター・シンガーとパオラ・カヴァリエリが考え出した「ダーウィン的」計画のことですが、その計画の骨子は、動物たちの権利を制定することで彼らを暴力から保護するのではなくて「人類ではない類人猿たち」に人間の権利を与えようというのです。その論法は私の目には常軌を逸したものと映るのですが、それが依拠している発想は、一方では、類人猿には人間と同じように言語習得を可能にする認知モデルが備わっているから、というものであり、また他方では、狂気や老化、あるいは人間から理性の使用を奪う器質性疾患などに侵された人間などよりも、よっぽど類人猿の方が「人間らしい」から、というものです。
 かくして、この計画の発起人たちは、人間と非人間とのあいたに疑わしい境界線を引き、精神障害を人間界にはもはや所属しない生物種へと仕立て上げ、類人猿を、人間に統合されるけれども、たとえばネコ科の動物よりも優等な、あるいは哺乳類であろうとなかろうとそれ以外の動物たちよりも優等な、もうひとつ別の生物種へと仕立て上げるのです。その結果、このふたりの発起人は、どのような新しい治療的ないし実験的取り組みも、動物実験をまず行なわなければならないとする、ニュルンベルク綱領の第三条を非難するのです。あなたはずいぶん以前から動物性の問いに関心<0091<をもたれていますので、こうした問題についてご意見を伺えればと思うのですが。」(pp.91-92)

 JD「もっとも権威づけられた哲学や文化がこれこそ「人間の固有性」と信じた特徴のいかなるものも、厳密には、私たち人間が人間と呼ぶところのものの占有物などではないということが証明されうるでしょう[…]」(p.98)

 JD「私がしばしば引用するのを好むジェレミー・ベンサムのある言葉があります。それは大体次のように言っています。すなわち、「問題は彼らが語りうるかではなく、苦しみうるかである」。そうです。私たちはそのことを承知していますし、誰もそれを疑うことなどできません。動物は苦しむのであり、その苦しみを表明するのです。動物を実験室の実験に用いたり、さらにはサーカスでの調教に従わせたりするときに、動物が苦しんでいないなどと想像することはできません。ホルモン剤で飼育され、直接牛小屋から屠畜場へ送られる数えられないほど多くの子牛たちが通り過ぎる場面に出くわしたとき、子牛たちが苦しんでないとどうしても想像できましょう? 動物の苦しみがどのようなものであるか私たちは知っており、感じ取っているのです。さらに言えば、産業による屠畜行為のせいで、以前よりはるかに多くの動物たちが苦しんでいるのです。」(p.103)

◆Cavalieri, Paola ; Singer, Peter eds. 1993 The Great Ape Project: Equality beyond Humanity, St. Martin's Press=20010420 山内 友三郎・西田 利貞 監訳,『大型類人猿の権利宣言』,昭和堂,308p. ISBN-10: 4812201098 ISBN-13: 978-4812201091 2520 [amazon][boople] ※ b
◆立岩 真也 2007/07/25 「死の決定について・7:シンガー(続)」(医療と社会ブックガイド・73)
 『看護教育』48-07(2007-07):-(医学書院)
×立岩 真也 2007/08/25 「○△学×2」(医療と社会ブックガイド・74)
 『看護教育』48-8(2007-8):-(医学書院)

◆立岩 真也 20090325 『唯の生』,筑摩書房,424p.

 第1章註07:「★07 となるとこのことについてデリダが何か言っているらしく、それも読まねばならないのだろうか、ということになる。  デリダとの対談(あるいはデリダへのインタビュー)で、ルディネスコが次のように語り、問う。
 「ピーター・シンガーとパオラ・カヴァリエリが考え出した「ダーウィン的」計画[…]の骨子は、動物たちの権利を制定することで彼らを暴力から保護するのではなくて「人類ではない類人猿たち」に人間の権利を与えようというのです。その論法は私の目には常軌を逸したものと映るのですが、それが依拠している発想は、一方では、類人猿に△061 は人間と同じように言語習得を可能にする認知モデルが備わっているから、というものであり、また他方では、狂気や老化、あるいは人間から理性の使用を奪う器質性疾患などに侵された人間などよりも、よっぽど類人猿の方が「人間らしい」から、というものです。
 かくして、この計画の発起人たちは、人間と非人間とのあいだに疑わしい境界線を引き、精神障害を人間界にはもはや所属しない生物種へと仕立て上げ、類人猿を、人間に統合されるけれども、たとえばネコ科の動物よりも優等な、あるいは哺乳類であろうとなかろうとそれ以外の動物たちよりも優等な、もうひとつ別の生物種へと仕立て上げるのです。その結果、このふたりの発起人は、どのような新しい治療的ないし実験的取り組みも、動物実験をまず行なわなければならないとする、ニュルンベルク綱領の第三条を非難するのです。あなたはずいぶん以前から動物性の問いに関心をもたれていますので、こうした問題についてご意見を伺えればと思うのですが。」(Derrida & Roudinesco[2001=2003 : 91-92])
 デリダはそれに対して、動物の苦しみなどについて語るのだが、なお問いは残るように思われる。」(立岩[2009:61-62]

◆立岩 真也 2022/**/** 『人命の特別を言わず*言う』,筑摩書房


UP:20070623 REV:20211230
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