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『グローバル・ポリティクス――世界の再構造化と新しい政治学』

小林 誠・遠藤 誠治 編 20001015 有信堂高文社,238p. ISBN:4-8420-5541-3 3360


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■小林 誠・遠藤 誠治 編 20001015 『グローバル・ポリティクス――世界の再構造化と新しい政治学』,有信堂高文社,238p. ISBN:4-8420-5541-3 3360 [amazon][bk1] ※ m01

□内容説明
支配的な理論的潮流の国家中心主義の存在論と狭隘な実証主義的科学観を根本的に批判する一方で、それらに対する批判的理論の問題点も念頭に置きつつ、世界政治における変容を理解しようとする理論的試み。〈ソフトカバー〉
□著者紹介[bk1]
〈小林〉1960年名古屋市生まれ。立命館大学国際関係学部助教授。
□著者紹介[bk1]
〈遠藤〉1962年大津市生まれ。成蹊大学法学部助教授。

グローバル・ポリティクス 小林 誠著 遠藤 誠治著 3-26
ポスト・ウェストファリアの世界秩序へのアプローチ 遠藤 誠治著 27-48
グローバル・ナショナルの問題構成 小林 誠著 49-72
変容する地球政治のパラダイムに向けて スティーヴン・ギル著 遠藤 誠治訳 73-89
新世界知的秩序 ヨハン・ガルトゥング著 佐々木 寛訳 90-118
政治経済のグローバリゼーションと小国の戦略 グレン・D・フック著 村島 雄一郎訳 119-136
東アジア安全保障のオルタナティヴ メル・ガートフ著 東郷 育子訳 137-159
日本のナショナル・アイデンティティ 玉本 偉著 小林 誠訳 160-178
第三領域としての市民社会と途上国研究 佐藤 誠著 179-196
多文化主義・多言語主義 西川 長夫著 197-217
世界政治をジェンダー化する 竹中 千春著 218-236


◇9章「多文化主義・多言語主義」
 西川 長夫 197-217
   →多文化主義・多言語主義
 1 歴史的徴候としての多文化主義・多言語主義
 2 アメリカ・カナダの場合
 3 オーストラリアの場合
 4 ヨーロッパ的統合と共和国モデル
 5 多文化主義とアジア

 「多文化主義(multiculturalism)ということばは、1970年代の初めにカナダとオーストラリアで新たな国民統合の形態を示す国是として採用されて以来、急速に普及した。もちろん新語であって、英語の辞書(Randam Houseの新版)によれば65年、フランス語の辞書(Le Petit Robertの新版)によれば71年の日付が記されている。この英語とフランスの日付のずれは、多文化主義が英語圏からヨーロッパに広がっていったことを想像させると同時に、地域による多文化主義の差異を予想させる。英語やフランス語の多文化主義は一般的には、ある集団や共同体のなかで複数の文化が共存している状態を指すと同時に、そのような多文化の共存を好ましいと考え積極的にその推進をはかろうとする政策や思想的立場を意味する。
 多言語主義(multilingualism)も新語であり、現在では多文化主義にともなってあらわれ、多文化主義ほどに定着していない印象を与えるが、実際は(197)多文化主義より古い用語である。[…]文化には言語が含まれる。したがって、多文化主義政策は論理的には多言語主義をともなうはずである。だが、多文化主義は現実には、カナダは二言語多文化主義であり、オーストラリアは一言語多言語主義であることからも分かるように、必ずしも多言語主義を含まない。一見明らかなこの論理矛盾をどう考えればよいのだろうか。そこには文化と言語の一様ではない複雑な関係が示されていると同時に、多文化主義のある種の詐術が隠されている。」(pp.197-198)

 「先住民から奪った土地に居座り続けることは、いかなる論理によって正当化され、奪った者たちの現存と現在の諸制度はいかなる理由によって正当化されるのであろうか。かつて「文明化の使命」と「無主の地」の教義が果たした役割を今ではグローバリゼーションの理論と多文化主義・多言語主義が果たそうとしている、という側面を見落してはならないと思う。他方、アジアの可能性がアジアの豊かな多様性にかかわるものであるとすれば、われわれは多文化主義・多言語主義を単に欺瞞として退けるのではなく、その可能性を異なった角度から追求する必要があるだろう。それは、大航海時代以来の歴史の大転換がもたらす歴史のアイロニカルな課題の一つである。」(p.216)


UP:20041101 REV:1103 20050112
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