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『生命倫理の成立――人体実験・臓器移植・治療停止』

香川 知晶 20000905 勁草書房,242+20p.

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香川 知晶 20000905 『生命倫理の成立――人体実験・臓器移植・治療停止』,勁草書房,242+20p.,ISBN:l4326153482 2800 [amazon][kinokuniya] ※ b be

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内容説明[bk1]
1960年代から70年代末までの、米国における生命倫理の形成史を扱う。医療をとりまく人々の意識の変化に注目するだけでなく、外での変化に対応する形で医学や医療の内部で生じていた変動の一端をも明らかにする。

著者紹介[bk1]
1951年北海道生まれ。筑波大学大学院博士課程哲学・思想研究科単位取得退学。山梨医科大学医学部助教授。

■引用

◇人工透析に関わる部分(有吉) cf.人工透析
 「透析器自体はすでに第二次世界大戦中のドイツの占領下のオランダで開発されていた。・・対象は急性の腎臓病患者に限られていた。それをスクリブナーは慢性患者にまで対象を広げることを考えた。スクリブナーは透析器の改良後ただちに患者に対する実験を開始、余命1週間と診断された患者が選ばれ、次いで一月後に三名の患者や追加される。十三月後に実験は技術的理由からいったん中止になる。・・問題は費用の点で、患者一人当たり年一〜ニ万ドル。ハートフォード財団の資金援助を受けて、1962年シアトル人工腎臓センターを作る。費用以外の問題は、患者の選択である。 (香川[2000:104])
 二つの委員会をつくり、患者の選択をおこなう。→第一段階、医学諮問委員会(専門家の医師)・・・医学的観点から身体的・精神的に透析に適応のある患者を選択。第二段階として、「生と死委員会、いわゆる神様委員会」・・・委員は「高潔で善良な市民」で報酬なしの匿名のボランティア活動。弁護士・牧師・銀行家・主婦・公務員・労働者の代表・腎臓病専門外の外科医の7名。スクリブナーたちからは、医学的理由で子供と45歳以上の成人は対象からはずすようにとの提案あり。それ以外の選抜の方法として、患者の年齢、性別、既婚・未婚、扶養者の数、収入、純資産、情緒的安定度、教育水準、仕事の性質と過去の業績と将来性、そして、ワシントン州の住人に限定。 (香川[2000:105])
 →選抜の基準は、社会に対する貢献度と患者が亡くなった場合の社会に対する負担の少なさに求められた」(香川[2000:106])
 「設備が無制限でない限りは、誰かが選び出さなくてはいけないと思います。・・でも何と恐ろしい決定なんでしょう。それは神を演じようとするようなものです。はっきりいって驚くのは、お医者さんたちがこうした仕事を進んで引き受ける七人の人を選ぶことができたことです。」(香川[2000:107])
 →選抜方法への批判
 →「生命の尊厳」から「生命の質」への転換(ジョーゼフ・フレッチャーの指摘)(香川[2000:108])
 →資源配分問題
 ラムジー「どのように選択するかを選択する、患者と希少医療資源」
 ジェイムズ・チルドレス「全員が生きられないときに誰が生きるべきか」(香川[2000:110])
 →委員会を2つ作ったことが意味することは
 「社会全体がどの患者を治療し、どの患者を死なせるのかという選択の重荷を分け持つべきだという原則の採用を意味する」(香川[2000:112])

■紹介・言及

◆立岩 真也・有馬 斉 2012/10/** 『生死の語り行い・1――尊厳死法案・抵抗・生命倫理学』,生活書院

◆立岩 真也 2001/01/25 「米国における生命倫理の登場」(医療と社会ブックガイド・1),『看護教育』42-1(2001-1):102-103
◆立岩 真也 2008/10/25 「香川知晶『死ぬ権利』・1」(医療と社会ブックガイド・86),『看護教育』48-(2008-10):-(医学書院),
◆立岩 真也 2009 『唯の生』,筑摩書房 文献表


UP:20070512 REV:20071226, 20080829, 20120921, 20140615
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