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『「社会調査」のウソ――リサーチ・リテラシーのすすめ』

谷岡 一郎 20000620 文藝春秋,222p.


Last Update:20140610
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■谷岡 一郎 20000620 『「社会調査」のウソ――リサーチ・リテラシーのすすめ』,文藝春秋,222p. ISBN-10: 4166601105 ISBN-13: 978-4166601103 \725 [amazon][kinokuniya]

■内容

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数字は、それだけでもっともらしいイメージをかもし出す。「働く女性の6割、職場で性的被害」「自衛隊『必要』84%」「ヤクルトが優勝すると経済成長率低迷?過去4回の平均2%」…。へー、そうなの?しかし、なんだかなあ。
「社会調査の過半数はゴミだ」と、社会調査論を専門とする著者は言いきる。誰が、何のために、ゴミを作るのか。その手口を見抜き、ゴミを減らすにはどうしたらいいのか。この本は、豊富な例をさまざまな角度から検証することによって、社会調査を解読する能力(リサーチ・リテラシー)を基礎から鍛えてくれる。解説されるリサーチ上の過ちは20種以上。読み終えたあなたは、もはや素直ないい人ではなくなっているだろう。新聞を開くたびにツッコミを山ほど入れずにはいられない体質になるのだ。
でたらめな社会調査をまき散らす学者、政府・官公庁、社会運動グループ、マスコミをグサグサとやっつける少々過激な記述も笑えて痛快だ。その実これは志の高い、社会科学の入門書、正しい啓蒙書だ。批判にとどまらず具体的な提案もある。社会調査という穴をコツコツ掘っていたら、この国の抱えるシステムの問題があらわになってしまったのである。 それにしても、なぜこんなことを見過ごしていたのだろう。私を含めて「方法」というものに無自覚で無知な大人たちが構成している社会って何?と、目まいを覚える。(津山 吟)

出版社/著者からの内容紹介
政府・官公庁・社会運動団体・マスコミが発表する社会調査の大半はゴミである。我々はいかにしたらデタラメ社会から脱却できるか

内容(「BOOK」データベースより)
世の中に蔓延している「社会調査」の過半数はゴミである。始末の悪いことに、このゴミは参考にされたり引用されることで、新たなゴミを生み出している。では、なぜこのようなゴミが作られるのか。それは、この国では社会調査についてのきちんとした方法論が認識されていないからだ。いい加減なデータが大手を振ってまかり通る日本―デタラメ社会を脱却するために、我々は今こそゴミを見分ける目を養い、ゴミを作らないための方法論を学ぶ必要がある。

■目次

序章 豊かさ指標はなぜ失敗したか
 「ゴミ」は「ゴミ」を呼ぶ
 「豊かさ指標」はなぜ失敗したか
第1章 「社会調査」はゴミがいっぱい
 学者が生み出すゴミ
 政府・官公庁が生み出すゴミ
 社会運動グループが生み出すゴミ
 マスコミが生み出すゴミ
第2章 調査とマスコミ――ずさんなデータが記事になる理由
 垂れ流されるゴミ
 記事のための調査
 印象操作のテクニック
 チェック機関の必要性
第3章 研究者と調査
 華麗なる学者の世界
 ノーデータ、ノーペーパー
 データを公開できぬわけ
 学者の論文を格付けしよう
第4章 さまざまな「バイアス(偏向)」
 人は忘れる、ウソをつく
 「モデル構築」はバイアスの巣
 見せかけの相関
 リサーチ・デザインとは何か
 視聴率の落とし穴
 あくどい誘導的な質問
 サンプリングにおけるバイアス
第5章 リサーチ・リテラシーのすすめ
 リサーチ・リテラシー教育の必要性
 社会調査を減らすには
 あなたのリサーチ・リテラシーをテストする
あとがき
主要参考文献

■引用

◆社会科学の分野では、抽象的な概念(例えば「失業率」「明るい性格」「保守的」「社会的地位」など)を数字で表わす必要性が生ずる。その場合、伝統的、統一的に使われていた方法があるなら、特に問題がない限り、それを採用することが多い。ところが、例えば「失業率」などは客観的で決まりきっているように思えるが、実は国によって算出方法が違うため、国際間の比較は難しい。また時代の変化とともに、これまでの算出方法が役に立たなくなるケースも数多くある。[2000:14-15]

◆…調査(指標作りも調査の一部といえる)とは真実が何であるかを知るために行われるべきで、特定の目的や偏向した思い込みを持ってすべきではない。[2000:21]

◆誰がどんな調査を行おうと、通常はマスコミに取り上げられなければ、広く一般的に知られることはない。…ところがマスコミには、自分たちが行う調査を含め、その内容や方法論をきちんとチェックしている様子が見られない。[2000:57]

◆マスコミの皆さんにお願いがある。他人の調査を引用する時は、最低、次の三点だけはチェックし、それを記事の中に入れるか、読者からの請求があれば答えられるようにしてほしい。
◎何を目的とする調査か(主催者は誰か。仮説は何か)。
◎サンプル総数と有効回答数は何人か。どう抽出したか。
◎導き出された推論は妥当なものか。[2000:65-66]

◆このような調査の恐ろしいところは、他の媒体に引用されたりすることで、さらに広がってゆくことである。[2000:67]

◆同じ内容の記事であっても、「4割が反対」と書けば「反対」が強調されるし、逆に「6割が賛成」と書けば「賛成」が強調される。こうした操作は、ある特定の新聞社の特定の思想(社論)を補強するために行われる。[2000:80]

◆視覚による印象操作には、いくつかの種類がある。…写真の利用、グラフの工夫…、地図をうまく利用する方法、イラストの応用、およびそれらの組み合わせなどである。[2000:81]

◆どこの新聞社にも、すでに調査部やリサーチ係が存在していることは承知している。しかし、それ以外に…次のような仕事をこなす部門が必要だと考える。
◎「調査方法の確認・認証」

◎「調査目的・仮説・結論のチェック」
導かれた結論が正当なものであるか否かを判断する。そのためにはデータを独自に分析できる機能も必要である。
◎「外部への対応」
自分のところで行った調査に対する質問や批判には、きちんと答える。[2000:86-87]

◆@公開に関するルール
まず、自分の組織で行った調査結果は基本的に公開を原則とする。ただし、(a)調査の公開を求める者全員に開示すべき事項と、(b)より高次のレヴェルのものとに分けることはあってもよい。
(a)全員に開示すべき情報
・「調査実施に関する情報」日時、主催者、対象、調査目的(仮説)、データ収集方法など。
・「サンプリング」母集団、サンプル数、有効回答数、有効回答率、属性別分布、抽出方法など。
・「質問票、およびコーティング方法(「わからない」や「無回答」を含むすべての回答肢の処理方法)」
・各質問の回答分析(および性別、年齢層、地域別などの「基本属性別クロス集計」)
・「分析の方法」数量化の方法、「指数(index)」の作り方、分析手法(式)など
(b)一定の基準を満たせば開示すべき情報
・「raw data(生データ)」、ただし本人を特定できる変数は省く。[2000:87-88]

◆サンプリングにおけるバイアスは、主として次の四つ、もしくはその組み合わせによって起こることが多い。
(1)数が少ない。
(2)母集団がわからない。
(3)比較できないサンプルを使う。
(4)代表的な意見を反映していない。[2000:180]

◆…どのようなサンプリングであれば、理想的もしくは検証に耐えうるものとされるのであろうか。それは、次の四つの条件を満たしたものである。
★十分な数がある(「十分」であるための数は、検証内容などで変化する)。
★母集団が(一般的に)定義されている。
★回収率が高い(一〇〇パーセントを理想とする。六〇パーセント以下になると、かなりのバイアスが存在すると考えた方がよい)。
★確率標本(probability sampling)である。[2000:186-187]

◆情報機器やシステムの進んだ現代では、他人より、より多くの情報を集めることを競っても意味がない。情報など、集めようと思えばいくらでも集められるからである。むしろ今後、必要となるのは、あふれるデータの中から真に必要なものをかぎ分ける能力、いわゆる「セレンディピティ(serendipity)」と呼ばれる能力であろう。このセレンディピティを訓練するにあたっては、まずゴミを仕分けることが効果的である。つまりデータをどう「捨てる」かである。[2000:193]

■書評・紹介

■言及




*作成:竹川 慎吾 更新:樋口也寸志片岡稔
UP: 20100528 REV:20100930 20130528 20140610
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