『記憶と忘却の政治学――同化政策・戦争責任・集合的記憶』
石田 雄 20000625 明石書店,313p.
last update:20110108
■石田 雄 20000625 『記憶と忘却の政治学――同化政策・戦争責任・集合的記憶』,明石書店,313p. ISBN-10:4750313025 ISBN-13:978-4750313023 \3675 [amazon]/[kinokuniya] pp mw※
■内容
内容(「BOOK」データベースより)
この本に収めた三つの部分は、敗戦から50年を契機に、著者が社会科学の方法的反省を試みた『社会科学再考―敗戦から半世紀の同時代史』を基礎として、当面緊急な課題と感じられる具体的な問題に即して三つの主題にとりくんだものである。発展主義と国民国家の思考枠組という日本の社会科学における宿弊を克服する試みを、現実分析の中で企図した。
内容(「MARC」データベースより)
「同化」政策、戦争責任論、従属的ナショナリズムと集合的記憶という、日本の侵略戦争に関わる3つのテーマを、「記憶」と「忘却」をキーワードに検討する。
■目次
はじめに
過去と未来を結ぶ選択的行為としての記憶
権力状況の中における集合的記憶
T 「同化」政策と創られた観念としての「日本」
一 主題の設定―「同化」政策をどう見るか
1 「同化」すなわち「日本化」とは
2 「同化」政策という概念
3 「同化」政策の二側面
4 「同化」への社会的誘因
二 発端としての明治国家形成―分裂の克服と「中央」の確定
1 東と西の対立
2 「中央」への吸収と反対派の「周辺化」
三 「文明」の名による「同化」――原型としてのアイヌの場合
1 「皇国之北門」への軍事的考慮
2 「開花」を目的とする「同化」教育
3 「勇敢なる旧土人」
4 「同化」の帰結と矛盾
四 「琉球処分」以後――忠誠の一元化
1 「内地ノ文明ニ同化」
2 「駆け足」型忠誠競争とその矛盾
3 社会的移動の多様性
4 「琉球は長男、台湾は次男」
五 「新領土」台湾――新しい忠誠の創出
1 「内地延長主義」による統治
2 「同文同種本質ニ於テ同化ノ可能性ヲ有ス」
3 「外地民族ヲ兵力トシテ活用」
六 「日韓併合」以後――包摂と動員
1 「国防本位の統治主義」
2 「懐柔同化」
3 「内鮮一如、朝満相依」
七 「日本」の拡大と価値内容の変化
1 オリエンタリズムの利用とそれに対する反発
2 「日本」という範囲の弾力性と状況性
3 「日本」の拡大に伴う「寛容」の強調
4 周辺の「同化」政策が中央におよぼした影響
八 敗戦後の惰性とその克服
1 「自然的」過程としての「日本」の収縮
2 惰性克服への道
[追記]その後の研究と方法的課題
U 戦争責任論50年の変遷と今日的課題
はじめに
1 世代の問題と「記憶の共同体」
2 本性の課題と戦争責任論検討の基準
一 戦争責任意識の混迷から東京裁判へ――敗戦から講和「独立」まで
1 混迷期における急速な変化
2 東京裁判における戦争責任論の枠付け
二 「独立」後における戦争責任の再検討――1950年代後半から60年代なかばまで
1 「逆コース」と東京裁判的責任論への反動
2 戦争責任意識の自力創出にむけて
3 竹内の対アジア責任論と丸山の政治責任論
三 ヴェトナム反戦と加害の意識化――1960年代なかばから70年代前半まで
1 「難死」体験から「被害者=加害者」意識へ
2 公害反対と発展主義批判
四 大国意識と対外摩擦の中の戦争責任論――1970年代後半から80年代まで
1 国民的自負心の回復と東京裁判評価の変化
2 83年映画「東京裁判」当時の戦争責任論
3 天皇の外国訪問と死のひきおこした戦争責任論
五 「冷戦終結」後の戦争責任論と戦後補償――1990年代
1 脱冷戦期における戦争責任論の再活性化
2 「戦後補償」要求における人権の視点
3 国際的連帯の役割増大
おわりに
1 戦争責任意識変化の特徴
2 戦争責任の意識化を妨げているもの
3 戦争責任意識化の阻止要因を克服する道
[追記]その後の研究状況と政治状況
V 従属的ナショナリズムと集合的記憶
はじめに―この主題をとりあげた二契機
1 「周辺事態法」と「国旗国歌法」
2 戦争責任の意識化を妨げる「記憶の共同体」再建への動き
3 言葉の定義―「記憶の共同体」「集合的記憶」など
4 二つの接近方法
一 集合的記憶との関連でみた従属的ナショナリズムの歴史的展開
1 「おくれてきた国民」の当面した課題
2 「外発的開花」と「国粋保存」
3 「旭輝く日本と入り日を知らぬ英国と」
4 「新体制」「新秩序」から「撃ちてし止まむ」へ
5 敗戦による「記憶の共同体」の崩壊―断絶と連続
6 冷戦下「記憶の共同体」再建の企図と冷戦後の変化
二 集合的記憶の一般的性格と日本での現われ方
1 忘却の重要性
2 記憶における選別と序列化
3 集合的記憶の作られた性格
4 集合的記憶の可塑性と連続性
5 集合的記憶と儀礼化
6 敗戦後日本の集合的記憶
7 現代世界の文脈の中で
むすび
あとがき
■引用
■書評・紹介
■言及
*作成:竹川 慎吾 更新:樋口 也寸志