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『子育てママのSOS――育児をしなくとも「父」という「夫」にわかって欲しい』

大日向 雅美 20001220 法研,238p

last update:20100825

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大日向 雅美 『子育てママのSOS――育児をしなくとも「父」という「夫」にわかって欲しい』 20001220 法研,238p. 1300 ISBN-10:4879543586 [amazon][kinokuniya]

■内容 (←注3)

■目次

■引用

■書評・紹介

紹介:ST(立命館大学政策科学部3回生)
 掲載:20020806

はじめに 夫と妻の心のずれ−ルーツは子育て期に

  子どもが独立し、長い間連れ添った夫婦が再び夫婦2人の時間を過ごそうとする
とき、妻と夫との間には大きなギャップができてしまっていることが多い。著者は、
そのようなみぞができる大きな要因の一つが、子育て期の妻の夫に対する落胆と悲し
みからきていると指摘している。さらに、「なぜ子育て期に夫と妻の間に差に心のず
れがしょうじてしまうのか、その原因を掘り下げていくと、育児は女性が担うものと
いう母性観が、日本社会に根強く蔓延している状況に大半の責任を求められる。」
(p6)として、夫が妻の子育て期の思いを理解する重要性とともに、社会の責任を
問うている。


第一章  「子育てがつらい」という妻の愚痴を聞いた事がありますか?

  全国の母親6000余名を対象としたアンケート調査の結果、8〜9割が「子育てをつ
らく思い、子どもが可愛く思えない事がある」と答えている。しかし、多くの夫たち
は「母親にとって子育てが喜びのはず」という思い込みからこの結果を信じらず、子
育てに対する妻たちのSOSをキャッチできないでいる。1999年に東京の文京区で起き
た「女児殺害事件」も子育ての辛さを訴えるSOSを誰にもキャッチしてもらえなかっ
た母親の悲劇の一例である。この事件が報道されると、新聞社やテレビ局に「一つ間
違えたら、私も同じ過ちを犯しかねない」という手紙やFAX,電話が何百通を寄せら
れたという。

第二章 妻がどんな一日を過ごしているか知っていますか?

  赤ちゃんは、可愛い存在である。しかし同時に、世話和する相手の都合などお構
いなしに、自分中心のリズムで生き、欲求がかなえられるまで最大限主張し続ける。
そのような存在と毎日、24時間つきあわなければならないため、母親たちは疲労して
いる。いくつかの事例がある。例えば、トイレに入るとお母さんが消えてしまったと
思って赤ちゃんが泣きわめくので、一人でゆっくりトイレに入る事もできない。
(p34)また、抱いていないと泣き止まないため、一日中抱き続けなければなら
ず、腱鞘炎になって腕が上がらなくなった。それでも、育児は続けなければならな
い。(p35)
  また、母親は、子どもの将来が自分の子育てのしかた一つにかかっているという
プレッシャーを常に抱えている。子どもが起こした事件や問題の親、とりわけ母親の
しつけが悪いとして、全責任を押し付ける社会の風潮にも問題がある。1997年に起き
た神戸市須磨区の小学生連続殺人事件など、子どもの非行や犯罪関係の報道のたびに
母親は過剰な育児不安を募らせている。(p39)
  多くの母親が、24時間の育児の中で社会との接点を失い、孤独と疎外感にさいな
まされている。「接続詞を使って、ぶんせつのある長い日本語を何日も話していな
い」「日本語を話したい。できれば夫と話したい」という母親たちの声は切実であ
る。(p42,43)また、子育て中は、女性たちが子育て以外のことに携わる機会
を社会や周囲の人が奪っている。(44,45,49)さらに、母親になった途端、
「○○ちゃんのお母さん」としか呼ばれなくなり、母親も子どもとともに子ども扱い
を受けがちで、誰にも一人の大人の女性として見てもらえなくなる虚しさを感じてい
る。(44〜48)
  子育てが母親の唯一の仕事になってしまっているがゆえに、子どもの成長が母親
の唯一の自己実現の手段になってしまう。そのため、母親が子に対して過剰に期待を
かけたり、子どもをコントロールしようとしたりするということがおこる。例えば、
用事に化粧をしたり、お受験をさせたりと、子どもが母親の自尊心を満たすためのブ
ランド品となってしまっている事がある。(50〜61)

第三章 やはり夫はわかってくれない

  妻の訴えを夫がどう受け止めているかという観点から夫婦のずれを見る。すると
妻の育児ストレスに対する夫の無理解が、母子を窮地に追い詰めていることが分か
る。夫は、「子育てはいついかなる時でも、何があっても女性の喜びのはず」とう母
性愛信仰から、妻の訴えを重く取っていない。(70)また、妻とともに育児をし、
しつけを考えていこうという夫が少ない。さらに、妻の孤独や閉塞状況を理解できて
いない。そして、社会とつながりを持ち、仕事をしたいという妻の願いを理解できて
いない。(99〜108)

第4章 夫の言い分と妻の不満

  夫の立場を理解し、その上で夫婦が再考すべき事を考察する。育児を手伝う気の
ある夫でも、具体的に言われないと何をしていいか分からない事が多く、それがか
えって妻をイライラさせることがある。(117〜119)また、夫の母親が、息子
に育児を手伝わせている嫁を非難したり、ベビーカーを押して買い物をしたりしてい
ると近所の人が「奥さん、ご病気なの?」と聞いてくるなど、周囲の人や夫の手伝い
にくさの原因のひとつになっている。(128,129,152)
  夫が育児をしたくてもできない、もう一つの大きな原因が仕事である。育児をし
たくても出張や残業などの長時間労働で働かざるを得ない現状がある。さらに、男性
が周りに気兼ねなく育児休暇をとれる職場環境が整っているのはまれである。
(144〜149)同時にこれは、ほとんどの女性が直面している障害であり、女性
は育児休暇をとるため企業側が責任ある仕事を任せないという問題もある。男性が安
心して育児に参加できない職場環境は、女性が一人の職業人として評価してもらえな
い職場環境でもあるのだ。(149〜150)

第五章 子育てにまつわる「神話」から抜け出そう

  性差によって子育ての適正に違いがあり、父親よりも母親が子育てをする方が良
いという考え方について考察する。このような考え方の代表である「三歳児神話」を
発達心理学的観点から分析すると、赤ちゃんを育てるのは必ずしも母親である必要は
なく、愛情と責任感の有無が大事であることがわかる。(162〜164)子どもの
幼児期に母親が働いている事も、
母親が働く事を肯定的に受け止めていて、子どもに対して愛情を持って、配慮がなさ
れていれば、子どもに対する悪影響はなく、むしろ良い影響を与える。(166〜
178)

第六章 男が本当に子育てできる社会とは

  子どもを育てる日々の生活のずれが夫婦の心に亀裂をもたらす原因になってい
る。それは、子どもを育てるために妻が育児に専念し、妻子を養うために夫が外で働
いて生計を担うという性別役割分業に起因している。そのため、性別役割分業を問い
直さなくてはならない。
  少子化対策として、行政が子育て支援のために、新エンゼルプランという育児支
援サービスの計画を実施している。(204〜206)また、仕事と家庭の両立支援
をしていくために、働き方の多様性を認めていくべきである。オランダではパートタ
イム労働を促進する事で、子育てもできて経済も成長するという快挙をなしとげた。
このように、育児休暇をとったり、短時間労働従事者が差別されないような法整備が
必要であると同時に、企業もそれを認めていくべきである。(215〜217)

  *コメントはこの紹介の作成者の希望により略。

■言及



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