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『知っていますか? 死刑と人権 一問一答』

アムネスティ・インターナショナル日本支部 19991210 解放出版社,99p.


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■アムネスティ・インターナショナル日本支部 19991210 『知っていますか? 死刑と人権 一問一答』,解放出版社,99p. ISBN-10:4759282262 ISBN-13:978-4759282269 \1050 [amazon][kinokuniya] c0132, c0134

■内容(「BOOK」データベースより)
本書では、アムネスティ・インターナショナルがこれまでに受けた死刑に関する多くの疑問や質問のなかからいくつかを選んで、それに答えるという形で、なぜ死刑に反対しているかを述べています。

■内容(「MARC」データベースより)
死刑を人権の問題だと考えるアムネスティ・インターナショナルが、これまでに受けた死刑に関する質問に答える形で、死刑に反対する理由をまとめる。死刑問題を考える参考となる一冊。〈ソフトカバー〉

■目次
はじめに
問1 人を殺したのだから、死刑になっても仕方ないのではないでしょうか?
問2 死刑制度は私たちの社会を守るために、やはり必要なのではないでしょうか?
問3 日本には死刑廃止に賛成する人がどれくらいいるのですか?
問4 死刑がなくなると、凶悪犯罪が増えるのではないでしょうか?
問5 被害者遺族の気持ちを考えると、死刑は絶対に必要なのではないでしょうか?
問6 死刑は「残虐な刑罰」なのでしょうか?
問7 誤った死刑判決で無実の人が処刑されたことはあるのでしょうか?
問8 日本では、毎年どれくらいの人が死刑の判決を受け、そして執行されているのですか?
問9 同じ殺人罪でも、死刑になったり無期刑になったりします。その境界を定める基準はあるのでしょうか?
問10 死刑囚は外部の人たちと自由に連絡はとれるのでしょうか?
問11 死刑囚の日常はどのようなものですか?
問12 死刑囚が再審で無罪になったり、恩赦で減刑されることはあるのでしょうか?
問13 裁判所で死刑が確定したあと、すぐに死刑が執行されるのですか?
問14 実際に死刑を執行する人たちは、どう思っているのでしょうか?
問15 海外の国では、死刑はどのように適用されているのでしょうか?
問16 日本では見成年者は死刑になりません。ほかの死刑存置国でもそうでしょうか?
問17 死刑が政治的な弾圧の手段として使われる心配はないのでしょうか?
問18 アメリカでは死刑執行の模様が公開されていますが、日本でも処刑場を見ることができるのでしょうか?
問19 死刑を廃止した国は、どんなきっかけで廃止したのですか?
問20 死刑に関する国際的な基準には、どのようなものがありますか?
問21 国際的な基準に照らしたとき、日本の死刑制度にはどんな問題点がありますか?
問22 アムネスティは、なぜ死刑廃止を求めているのですか?
コラム1 終身刑と無期刑
コラム2 死刑制度の見直しを提案した大野判事
コラム3 無実を訴えた死刑囚たち
コラム4 「部分冤罪」の問題
コラム5 日本で死刑が科せられる罪は?
コラム6 ストックホルム宣言
私たちも死刑に反対しています 田辺聖子 天野祐吉 山田洋次 瀬戸内寂聴
もっとくわしく知りたい人のために

■引用

「問14 実際に死刑を執行する人たちは、どう思っているのでしょうか?
 私たちは、死刑が確定したというニュースを聞くと、それで問題はすべて解決したと思いがちです。しかし死刑が執行されるということは、実際に誰かが「死刑囚を殺さねばならない」ということを意味します。「人間を殺さねばならない」、そういう職業が現在の日本には存在しているのです。
 実際に死刑を執行するのは刑場付設の拘置所あるいは刑務所に勤務している刑務官です。
 執行には多くの人がかかわります。執行の言い渡しをする拘置所長、刑場へ導く刑務官、目隠しをしたり手錠をかけたりする刑務官、処刑に立ち会う検察官・>56>所長・部長・課長・医官・教誨師などです。さらに死刑囚の首に縄をかける、両足の膝を縛る、死刑台の踏み板をはずす、死体を清めたあと納棺する、といった役目にもすべて刑務官がかかわります。死刑制度が存在するかぎり、職業としてこれらの仕事を行う人が絶対に必要なのです。
 死刑囚への執行言い渡しは執行当日に行われます。刑務官にも執行当日の朝になってから立ち会いが命じられます。
 実際に「人を殺す」という行為にかかわることによって、刑務官は精神的に傷つき、ノイローゼになる人もいます。仕事とはいえ、「人を殺した」という事実に人間としての誇りを失ったと感じ、罪の意識に一生つきまとわれるのです。
 私たちはマスコミを通じた死刑囚の姿しか知りません。しかし刑務官は拘置所で毎日死刑囚と共に過ごしています。生身の人間としての死刑囚と日々交流をもち親しんでいるにもかかわらず、ある朝突然、殺す側に回らねばならないのです。
 ある元刑務官は、「いっそのこと死刑囚と一緒になって、執行は嫌だ、やめてくれとわめくことができたら、とさんざん思ったものです」と述べています。
 刑務官は公務員なので、業務内容についての守秘義務を負わされています。こ>57>れは仕事を辞めた後も守らねばなりません。したがって公に死刑執行について語ることは許されていません。さらに、「人を殺す」という内容の職業ゆえに、あえて語りたくない、思い出すだけでつらい、という気持ちの人が多いのです。
 ある元刑務官の家族は、「死刑があるために傷つく人は多いのです。死刑になる死刑囚の家族、執行するものの家族も、暗いみじめな人生になってしまうのです。執行官が同じ人の子であることを忘れないでもらいたい、そう思っています」(大塚公子『死刑執行人の苦悩』)と語っています。
 「死刑の執行に立ち会うのが嫌なら仕事を変わればいいではないか。職業選択の自由はあるのだから」という意見があります。確かに執行が嫌で仕事を変わるという人もいます。しかし、変わりたくても経済的な理由などから変われない状況の人もいるのです。
 死刑制度が存在するかぎり、私たちは必ず誰かに「殺人という仕事」をやらせているのだ、ということをきちんと認識しておく必要があるでしょう」(pp56-58)

■書評・紹介

■言及



*作成:櫻井 悟史 
UP:20080908 REV:
死刑  ◇「死刑執行人」  ◇身体×世界:関連書籍 1990'  ◇BOOK
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