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『日本経済の構造調整と労働市場』

中村 二朗・中村 恵 編 19990730 日本評論社,229p. ASIN: 4535551022 4725


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■中村 二朗・中村 恵 編 19990730 『日本経済の構造調整と労働市場』,日本評論社,229p. ASIN: 4535551022 4725 [amazon][kinokuniya]  ※ e04 w01

中村 二朗 (著), 久本 憲夫 (著), 八代 尚宏 (著), 太田 聡一 (著), 阿部 正浩 (著), 脇田 成 (著), 大竹 文雄 (著), 中村 恵 (著), 玄田 有史 (著), 大橋 勇雄 (著)

内容(「BOOK」データベースより)
日本の労働市場はどうなるのか。高い失業水準は果たして短期的な景気循環の影響なのか、それとも長期的な構造変化がその背後にあるのか。「石油危機に次ぐ 戦後2番目の転換点」にさしかかったとされるわが国の労働市場を、鋭く分析する。

内容(「MARC」データベースより)
高い失業水準は果たして短期的な景気循環の影響なのか、それとも長期的な構造変化がその背景にあるのか。「石油危機に次ぐ戦後二番目の転換点」にさしか かったとされる日本の労働市場を、鋭く分析する。

目次
序章 本書のねらいと構成
第1章 景気循環と転職行動――1965〜94
第2章 雇用創出と雇用喪失
第3章 企業ガバナンス構造と雇用削減意思決定――企業財務データを利用した実証分析
第4章 製造業ブルーカラーの賃金構造の変化と技能形成――1970年代後半からの推移
第5章 景気変動と企業内労働市場における賃金決定
第6章 企業内工程間分業と熟練形成のモデル分析――アダム・スミスの分業の定理を巡って
第7章 「日本型労働システム」の確立と社員化
第8章 年功賃金・退職金・景気変動が欠勤行動に与える影響と労働組合
第9章 少子化とマクロ経済


 

八代 尚宏 19990730 「少子化とマクロ経済」,中村・中村編[1999:211-229]

 「1997年に公表された将来人口推計では、20歳代の結婚率の低下は、30歳代の回復によって相殺され、出生率は特段の対策をとらなくとも自律的に 1.6の水準まで回復するという想定になっている。しかし、上記のような連立モデルを用いた結果では、政策不変(構造改革なし、保育所の抑制政策の持続) ケースでは、2025年には出生率は1.19と、低位推計値(1.38)をも下回り、その結果、人口数は1億1200万人にまで減少する(表9−2、図9 −<0224<4)。もっともこの場合でも、出生率は2013年の1.18を底にして若干ながらも回復する。これは主として経済活動の低迷か ら女性就業の拡大に歯止めがかかる効果によるものである。<0225<
 国民貯蓄率は労働者の人口に占める比率の低下から最近時点の半分強の水準にまで低下する。また、労働力の減少から経済活動も制約され、2025年の実質 GDPの水準は2010年と比べ16%の減少となる。もっとも、同一期間中に就業者数もほぼ同率で減少することから、就業者1人当たりの所得ではほぼ横ば いとなり、国民1人当たりGDPは1.2%(年率)の減少となる。このように、出生率の持続的な低下が続く場合には、日本経済の長期停滞のシナリオになる ものといえる。」(八代[1999:226])



■引用

「高度成長期の環境変動条件としては、まず技術革新があった。さらに、企業サイドからみれば、春闘に代表される賃上げ闘争、資本自由化問題などあった。他 面、解雇が困難であるとの認識が労使の間に共有されていた。こうしたなか、企業は、「高能率高賃金」「少数精鋭主義」を標榜していた。異動のフレキシビリ ティや要員管理の厳格化、技術革新に対応するOJTシステムの転換を従業員に求めていた。他方、組合や従業員は雇用安定、賃上げを前提として、一面では労 使協議制の拡充、そしてとくに「社員化」を求めていた。こうした状況は労使妥協の結果としての相互信頼的労使関係の形成を生み出したといってよいであろ う。
 しかし、社員化は企業にとってはコストがかかるがゆえに、中核でない作業をほかの企業に任せる「会社別雇用管理」が大いに利用されることとなるのであ る。このようにみれば、戦後労使関係の変化は、一面では企業別労働組合の達成であるということができる。組合が弱かったからではなく、強かったからこそ現 在のシステムとなったのである。」(p.172-171)

「日本の欠勤率が低い理由としては、組合企業と非組合企業で異なる理由を考えるべきである。非組合企業においては、退職金制度や年功賃金制度、失業による 欠勤抑制の影響は大きい。一方、組合企業においては、解雇が困難であるため解雇を前提としたインセンティヴはつけにくい。有給休暇の取得を容易にすること を通じて、狭義欠勤日数の低下をもたらしている。代替策として、組合企業においては、労働者の査定制度の導入により賃金や退職金、昇進に格差をつけること で欠勤抑制を図ったり、解雇抑制の代償として生産と順応的な出勤率調整による雇用調整を導入していると考えられる。」(p.204)


UP:20070412 REV:0413 1122
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