『日本の人事査定』
遠藤 公嗣 199905 ミネルヴァ書房,354p.
■遠藤 公嗣 199905 『日本の人事査定』,ミネルヴァ書房,354p. ISBN-10: 462303075X ISBN-13: 978-4623030750 \3990 [amazon]/[kinokuniya] p0206
■内容
ブックレビュー社
日本企業の変革期を迎え査定制度の重要性は増大し,新しい理論枠組みの構想が待たれている
人事査定制度は,日本の大企業における人事管理制度の中核の1つであるが,本書は人事管理制度の日本的な特徴を明らかにし,日本の制度のモデルになったアメリカの人事査定制度との比較を通じて,国際的な視点からもその実態を解明しようと試みている。特に,従来の研究史を詳細に跡づけることで,日本の人事査定制度に関するこれまでの"常識"が正しいものであったか否かを見極めようというユニークな試みを行っている。
こうした著者の姿勢から当然本書はきわめて論争的な姿勢を帯びている。その点は特に著者が日本のみならずおよそ工業国の人事査定制度の起源はアメリカにあるとみているため,日米制度の比較において異説に対する攻撃がはなはだ厳しくなる。小池和男氏著「アメリカのホワイトカラー」に対しては50ページを割いて真っ向から批判を行っているが,読者がどちらの説にくみするにせよ,これだけ正面切った批判論争は一読の価値があろう。
著者は,本家のアメリカでは人事査定制度が民主的に改善されたのに,日本では査定制度が能力主義の管理に役立つように変えられ,雇用差別の道具として使えるように改悪されたとしており,「雇用における正義」が回復されなければならないという立場をとっている。こうした立場に立って著者は「小池氏がアメリカの労働実態の誤った認識に基づいて,日本企業のサービス残業を非難する人々をやゆするのは許せない」とし,さらに「小池氏や青木昌彦,奥野正寛氏らが査定制度を道具とした日本の雇用差別事件の存在に目をふさぎ,日本の査定制度の公正さを実証もなく主張していることは理解に苦しむ」と,口をきわめて批判している。
今後の研究課題としては,(1)査定制度の規制についての国際比較,(2)雇用における正義に基づいた理論枠組みの構想,(3)現代日本の査定制度についてのさらなる実証研究の積み重ね,という3つの課題を掲げている。 (評論家 和田 正光)
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内容(「BOOK」データベースより)
人事査定制度は、日本大企業の中核的人事管理制度の一つである。本書は、人事査定制度の日本的特徴について、日米比較を通して実証的に解明する。とくに、従来の研究史を詳細に跡づけることによって、査定制度に関する日本の「常識」を検証しなおす、きわめてユニークでポレミークな研究書。
内容(「MARC」データベースより)
人事査定制度の日本的特徴について、日米比較を通して実証的に解明する。とくに、従来の研究史を詳細に跡づけることによって、査定制度に関する日本の「常識」を検証しなおすユニークでポレミークな研究書。
■目次
序 章 問題の予備的考察
第1章 制度の実際
――大企業ZOFD社の事例
第2章 制度の日米比較
――質問紙調査からみた9つの違い
第3章 制度の「日本化」
――日米で異なった発展の歴史
補論1 小池和男著『アメリカのホワイトカラー』批判・
――アメリカ大卒のホワイトカラーに残業手当
はつかないのか
補論2 小池和男著『アメリカのホワイトカラー』批判・
――米国における大卒のNon-exemptの被用者
第4章 労働者の受容
――電産賃金体系における能力給と人事査定
第5章 雇用差別の道具
――査定制度による性と信条の差別
終 章 今後の課題
あとがき
参考文献
人名・事項索引
■紹介・言及
橋口 昌治 200908 「格差・貧困に関する本の紹介」, 立岩 真也編『税を直す――付:税率変更歳入試算+格差貧困文献解説』,青土社