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『場所をあけろ!――寄せ場/ホームレスの社会 学』
青木秀男(編著) 19990121 松籟社,p.291
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■青木秀男(編著)[19990121]『場所をあけろ!――寄せ場/ホームレスの社会学』松籟社,p.291,¥2,604(税込)ISBN-10: 4879841986 ISBN-13: 978-4879841988
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[kinokuniya]
■内容(「BOOK」データベースより)
今、ドヤの一室で、公園で、河原で、病院のベッドで、傷つき、病み、老いた日雇労働者が、野宿者が、ひとり、ひとり、「殺されて」いる。仕事にアブレ、 ドヤから叩き出され、路上から追い立てられ、すべての居場所を奪われ…。新宿・釜ヶ崎・山谷、寿町、笹島、神戸…寄せ場と野宿者世界の知の解体へ誘う。
内容(「MARC」データベースより)
ホームレスの人々と、彼らが集まる新宿、釜ケ崎、山谷などの「寄せ場」に社会学的アプローチを試みる論考9編を収録。差別の構造や、行政による排除の動 き、一般社会との隔離などの問題を取り上げる。
■目次
はじめに――知を剥ぐ 青木秀男
T「寄せ場/野宿者」を書くこと
1 寄せ場 青木秀男
――差別と意味の社会学
別離 寄せ場と差別 差別の変容 構造と意味 意味と類型 寄せ場の行方
2 寄せ場を基点とする社会学の射程 田巻松雄
――「中央」と「周辺」および「勤勉」と「怠け」をキーワードにして
はじめに 寄せ場研究の基本的視角――「中央」の論理と「周辺」からの思考 「怠け」の意義・重要性と「勤勉」の問題性
3 排除と抵抗の現代社会論 中根光敏
――寄せ場と「ホームレス」の社会学にむけて
はじめに 「浮浪者」から「ホームレス」へ 「新たな都市問題」というイデオロギー 「寄せ場の弱化」と「野宿者の増加」 野宿者の排除と可視化 排除と抵抗のポリティクス むすびにかえて
4 「寄せ場のエスノグラフィー」を書く 西澤晃彦
戦場としての都市 都市エスノグラフィー 寄せ場のエスノグラフィーへ むすびにかえて
U 寄せ場と野宿者の「いま、ここ」
5 保護/撤去/襲撃 狩谷あゆみ
――震災後・神戸の野宿者問題
はじめに 野宿者問題の告発 保護 撤去 襲撃 むすびにかえて
6 見えない街の可能性 山口恵子
――新宿で野宿する一人の「おじさん」の語りから
新宿駅西口にて Kさんの事例から 見えない街より
7 アンダークラスとしての寄せ場 中根光敏
――釜ヶ崎を中心として
はじめに アンダークラスというフレイム アンダークラスの一部としての寄せ場 寄せ場の変容 寄せ場・釜ヶ崎の変容 むすびにかえて
8 寄せ場と行政 田巻松雄
――笹島を主な事例として
はじめに 笹島の位置づけと本論の射程 労働行政の側面 民生行政の側面 おわりに
9 寄せ場は何処へ 青木秀男
問題の情景 都市横浜 働く寄せ場 住む寄せ場 都市下層・再考――変わる都市下層
コラム
「寄せ場・ドヤ街・駅手配」 「笹島」 「釜ヶ崎」 「山谷」 「野宿者襲撃」 「新宿駅西口」 「暴動」 「林訴訟」 「寿町」
あとがき――場所をあけろ! 中根光敏
■7 アンダークラスとしての寄せ場――釜ヶ崎を中心として
中根光敏
引用
「(…)本章の目的は、現在の寄せ場が抱えている問題を釜ヶ崎を中心として整理することである。そのために、本章では、一九七〇年代後半から欧米で議論さ れてきたアンダークラス論というフレイムと関連づけて、寄せ場・釜ヶ崎を捉えようと試みる。
このアンダークラス論というフレイムは、本書第三章で批判的に検討した東京都企画審議室の調査報告書の作成に携わった都市社会学者たちが依拠したものと 同様の理論的枠組である。(…)」(p.201-202)
「アンダークラスをめぐる議論は、米英を中心とした先進国において、移民と人種差別問題が、一九七〇年代以降の脱工業化=情報化への産業構造の転換によっ て中核都市の労働市場を変質させた結果として、新しい社会現象(都市問題)として顕在化していることをめぐるものである。その主要な論点は、以下の三点に 要約することができる。
@その問題が人種差別問題であるのか階級問題であるのかという点。
Aその原因が産業構造の変換によって生み出された貧困であるのか、政府の福祉政策への適応・依存によってもたらされた結果であるのかという点。
Bその問題を象徴する社会現象が「貧困(継続的な失業/不安定就労/低収入など)」であるのか、「逸脱行動(ドラッグ/非行/暴力犯罪/私生児/未婚の 母など)」であるのかという点。」(p.204)
「特に、日本の野宿者問題をアンダークラス論と関連づけて論じるためには、日本の野宿者のほとんどが、何故、これまで単身の高齢者の男性によって構成され てきたのかという問題を抜きにしては、議論は成立しないだろう。また、逆にみれば、アメリカほどにはホームレス問題を顕在化させてこなかった要因が何で あったのかを捉える必要があるということである。
後者の問題に関しては、ここでは課題の提示以上のことはできないけれども、おそらく、オイルショック以降の一九七〇年代後半より増加していった不安定就 業層に関わる問題である。主婦を中心としたパート労働、学生などを含めた若年層を中心としたアルバイト、派遣社員や臨時社員などの不安定就労は、かつて工 業化社会で問題となった都市下層(下層労働者)と比較して、その労働の社会的特徴として見ると全く同じ性格を持っている。この不安定労働市場は、高度経済 成長期に寄せ場が担ってきた「雇用調整のためのクッション」の役割を次第に引き継いでいくことによって、現在までアンダークラス=「新しい都市下層」と問 題として顕在化させないように作用してきたのではないかと考えられる。」(p.205-206)
「マルクス主義的労働経済学では、従来の「下層労働者」概念が社会的にリアリティを失ったとして、一九七〇年代後半頃からそれをより拡張したカテゴリーで ある「不安定就労」概念へと変更している。時代背景からすれば、「不安定就労」概念の出現とアンダークラス論は整合するけれども、これら二つのカテゴリー には決定的な違いがある。「不安定就労」という概念は、「者」を抜いてカテゴリーを拡張することによって、広く一般社会の世帯に潜在化した問題を分析の射 程に入れた一方で、社会的にセグリゲートされたスラムや寄せ場あるいは野宿者といった問題を取り扱い難くしてしまったということである(実際に時を同じく して、労働経済学の視点からの寄せ場研究は消えていった)。(…)」(p.207,★4)
「(…)けれども、仮に日本社会にアンダークラス問題が生じていると仮定するならば、それは寄せ場の問題を抜きにしては議論できないのも事実である。そし て、重要なことは、近年の日本の大都市で生じている野宿者の急増は、バブル経済のツケであるだけではなく、高度経済成長のツケでもあるということである。 (…)」(p.208)
「仮に、野宿者(所謂ホームレス)問題を日本のアンダークラス問題を象徴する社会現象であるとするならば、それは以下の三つの要因に規定されている。
@雇用関係からの乖離・排除
A家族・親族関係からの乖離・排除
B社会保障からの乖離・排除
上記の要因は、野宿者だけではなく、寄せ場の日雇労働者にもあてはまるものである。たとえ、ある人が勤めている会社を突然に馘首されたとしても、その人 がダイレクトに野宿生活を強いられるわけではない。上記の三つの要因が重層的に絡まることによって、路上へと押し出される人々が社会的に析出されてくる。 そうした意味では、これまで寄せ場は、日雇労働市場としての役割だけなく、一般社会に問題を顕在化させないために、そうした人々を直接に路上へ押し出すこ とを迂回させる一種のクッションのような働きも担ってきたのである。ゆえに、現在の日本社会において、野宿者が増加し所謂「ホームレス問題」として顕在化 してきている主要な原因は、既にみてきたように、安価な日雇労働力を供給する労働市場としての寄せ場が弱化してきたからである。日本の野宿者のほとんど が、高齢で単身の男性、しかも現役の日雇労働者か元日雇労働者によって構成されている事実は、そのことを端的に示している。新宿ダンボールハウスで四割程 度の「新しさ」を強調された人々の多くも、寄せ場が日雇労働市場として健在であれば、そこに包摂されていたはずである。」(p.219-220)
UP:200707016
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